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第十二章:認められし者
188.イデアベルク魔導戦闘戦 1
しおりを挟む強い反応が出た時は、大抵フィーサが先に気付く。
しかし今回はおれのスキャンスキルも反応を示し、魔法文字が浮かび上がった。
【ベルク・イスティ 魔導兵Lv.???】
【エルメル・イスティ 魔導兵Lv.???】
【シーニャ ワータイガー 近接戦闘スキル上昇 敏捷性上昇 Lv.--】
【ルティシア・テクス ドワーフ族 称号:ドラゴンキラー Lv.--】
「……む」
「イスティさま、どうかしたなの?」
「外にいる強者に見知った名前があったな、と」
「何が来ても、イスティさまなら負けないなの! 早くやっつけるなの~!」
「ああ」
シーニャとルティの名前が見えたが、敵としてではなく強さに変化があったからだろう。
特にルティが気になるが、一体どれだけのドラゴンを倒したのか。
気になるのは魔導兵の識別情報だ。名前が出たのは、これが初めてになる。
それもよりにもよって、両親の名前が使われているとは。
◇◇
建物を全て崩すことなく外へ向かうと、そこで見えたのは息絶えた大量の魔物だ。
魔物の後方には魔導兵が数体ほどいて、こっちへ向かって来るのが見える。
機動性のある魔導兵だが、魔物の屍骸が道を塞いでいるとそう簡単には近付いて来られないようだ。
「イスティさま、これって……一体どういうことなの。こんな光景はおかしいなの」
「はははっ! 魔物相手なら何も問題は無いと思っていたが、ここまで力をつけていたとは」
「そ、それって――あっ! イスティさま、避けてなのっ!!」
フィーサが気付くよりも先に、おれに突進して来る二つの気配を感じていた。
今までなら不意打ちのように受け止めて気を失うくらいになっていたが、さすがに学習済み。
ズドーンとやや鈍い衝撃音が、自分の胴体から感じられる。
ダメージは無く、そこに見えるのは虎耳と赤毛だった。
「ウニャウ~……会いたかったのだ~!! シーニャ、アックの為に倒しまくったのだ! ウニャ」
「アック様、アック様~うぐずっ……。私、すごく頑張りました~あうぅぅ!」
「よくやったな、ふたりとも! よしよし……」
「フニャウゥ~」
「え、えへへへ……」
こういう時に甘やかすのもどうかと思ったが、称号に出るくらい倒して来た彼女たちには、後で褒美を与えねば。
とりあえず今は、撫でるだけで我慢してもらおう。
「イスティさま、そんなのは後ででいいなの!! 今は向かって来る敵を殲滅させるのが先なの!」
「分かってる。そういうわけだから、ふたりへの褒美は――って、こらっ! 勝手に突っ込むな」
『邪魔をするななのだ!!』
『せっかくのご褒美をををを!! このぉぉぉぉぉ!』
――という間に、向かって来る魔導兵に突っ込んで行ってしまった。
近接戦闘タイプの魔導兵なら問題は無さそうだが、もし魔法タイプなら……。
突進型のルティと、身軽さを活かして連撃するシーニャに苦手意識は無いだろう。
しかし魔法相手では分が悪い。
一塊になって向かって来る魔導兵がどういう攻撃をするのか、様子を見るしか無さそうだ。
『このぉぉぉぉぉ!!』
先に仕掛けたのはルティだ。
ドラゴンを全滅させたかは不明だが、竜殺しの拳ならば装甲の強度に関係無く破壊出来る。
しかし、
『警告……警告! 近接物理攻撃を無効化……バインドを発動、致命打を回避』
『――えっ……!? ふぎゃっ!!』
『炎属性耐性確認……氷結魔法にシフト……完了』
『うぎぎぎぎぎ……う、動けな……さ、寒くて凍え――』
ちいっ、途中から戦闘タイプを変えることが出来る魔導兵か。
『ルティ!!』
『……アックさ……ま』
『くそっ! 待ってろ今すぐ――シーニャも止まれ!!』
シーニャは、ルティとは反対側の魔導兵に襲い掛かっていた。
拘束魔法はまだ発動されていないようだが、何か弱体魔法を受けているように見える。
『ウウニャッ!! な、何なのだ、暗くて何も見えないのだ!?』
『ターゲット、視界不能を確認……爆発魔法までカウントスタート……』
『どこなのだ、どこにいるのだ……!!』
『4……3――』
まずい、シーニャには耐火スキルが無い。
魔導兵までの距離は数百メートル……このままではまずい。
「イスティさま、わらわをシーニャの所に投げるなの!!」
「フィーサをか?」
「は、早くするなのっ!!」
「……よし、頼むぞ!」
「い、行くなの~!」
瞬間的に移動速度を早くすることは出来ないが、フィーサを投げることなら出来る。
それならと、彼女の言う通りにしてシーニャのいる所にぶん投げた。
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