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第十一章:滅亡公国

168.不意打ちの連戦練兵場 後編

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 フィーサを使用していいと言われたので、鞘から取り出そうとした。
 すると後ろで立っていたルーヴから、途端に声がかかる。

「……待て、その剣はプラチナか?」
「そうだ」
「お前ごときが大層な剣を所持しているということは、その両手剣、何かあるな?」
「おれの剣だ。どんな剣を使おうと勝手だろう? それともここの騎士は、プラチナが出て来ただけで弱気になるのか?」

 先鋒で挑もうとするベニウスが、ルーヴと何かを話し合いだした。
 フィーサの輝きは騎士が持つ剣を確かに凌いでいるが、それ以外にも何か感じ取られたか。

「アック・イスティ! お前の剣は我が預かる。お前は騎士見習いが持つ剣で戦え!」
「プラチナに臆したのか?」
「違うな。だがあえて言えば、その剣から何か強い魔力を感じた。それだけのことだ、その剣を寄越せ!」
「……ハンデにもならないが、言う通りにしてやる」

 ルーヴにフィーサブロスを渡し、おれは騎士見習い用の両手剣を受け取った。
 何の変哲も無いアイアンソードのようだ。

 そうして剣を手に構えようとしたが、ベニウスからの剣先が眉間に突き付けられていた。
 
「手にした途端、不意打ちか」
「そういうことだ。ルーヴ団長の命令どおり、貴様にはここで重傷か死んでもらう!」

 ベニウスからの不意打ち攻撃を剣で防いでいると、別の騎士も側面から剣を振り下ろす。
 現状では、二対一。

 互いの両手剣がぶつかっているだけだが、二人同時に動作を取られてしまうと、どこかに傷が出来る恐れがありそうだ。
 不意打ちで二人同時とは、恐れが過ぎる。

「卑怯な騎士団もいいところだな。これがお前が作った騎士団か? ルーヴ」
「目に見える攻撃だ。この程度の攻撃を卑怯と言うなら、やはりお前の強さはその程度だ」

 確かにその通りで、おれの甘さが相手を調子づかせた。
 おれに剣を向けている二人の騎士は、強い力だけで押して来ている。

 しかしこの二人は弱すぎた。
 次の瞬間、おれは手にしたアイアンで目にも止まらない高速斬撃を、近接した二人の間合いに飛び込んで見舞うことに成功する。

 二人の騎士はすぐに体勢を崩し、その場に膝をついた。

「な……んて、速さだ」
「ま、まぐれな奴め……」

 フィーサが無くても、ソードスキルを習得済みということもあって、何も問題は無かった。
 ここの騎士の強さの程度は、そんなものだろう。

「――不意打ちはまだ続けるつもりか? 背後から近づこうとしているのは気付いているが?」
「黙れっ! 生意気な頭をカチ割ってやる!!」

 二人を同時に崩したが、なおも背後から別の騎士が剣を振り下ろしに来た。
 だが大振りすぎる。

 攻撃におけるセンスも工夫もまるで見当たらず、大振りの剣を見事にかわすことが出来た。
 不意打ち攻撃にも関わらず大振り攻撃をした騎士は、息を切らせて座り込んでしまった。

 小屋に残る騎士はルーヴを入れて、残り三人。
 連戦となったとしても、これほどまで弱い騎士だと張り合いも無さそうだ。

「イスティ……。お前がアック・イスティになってから、誰かの下についたか?」
「特に誰にも教わってないな。こんな不意打ち攻撃なら、何人来ても結果は同じだな」
「……なるほど。ベニウス程度ではやはり勝てないわけか」

 かませ犬に不意打ち攻撃をさせて実力を見たらしいが、全てにおいてがっかりしそうだ。

「まだやるのか? 何ならルーヴ自らかかって来ても構わないぞ?」

 全く、この男は一体何がしたいのか。
 おれを故郷に入れさせない為だとはいえ、あまりにも弱すぎる。

「……いいだろう。我自ら、かつての弟を殺して終わらせてやる! 何としてもお前を、あの国に向かわせるわけには行かないのだからな!!」
「何度やっても同じだと思うけどな」
「お前の両手剣の輝きは、普通の輝きじゃない……。お前が手にしているアイアンとは比べようのない強さを秘めている。だがその剣も、今は我の元にある」
「それはそうだな。それがどうかしたか?」
「つまりだ……お前の強さを持ってしても、我からの攻撃には防ぎようがないのだ――!!」

 フィーサブロスを手にしたルーブから、重い一撃が繰り出された。
 この不意打ち攻撃には、さすがにアイアン程度ではすぐに破壊されてしまう。

 そのままおれに、直接的なダメージを負わせて来るはずだ。
 そう思っていた直後のことだ。

「ぬ、う……!?」
「――!」

 派手な火花が飛び散り、おれも奴も目を覆うような強い閃光が走っていた。
 フィーサの攻撃がおれに当たってそうなったのか、それとも――。
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