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第九章:神族国家ヘリアディオス

138.光神リアディオの印と光属性

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「……どうだろうな。確かに闇ダメージは吸収をしたが、それで全て終わったとは考えにくい」
「と、とにかく、小娘を何とかしないと!」
「フィーサ、重力を付与させるぞ。準備してくれ」
「は、はいなの!」

 闇神クラティアを退けても、ルティを覆うスライムの塊は解けていない。
 そこでおれは、重力貫通を試みることにした。

 スライムの弱点は炎だが、本体に効かなかったことを踏まえ、最も有効な手段を取る。
 盲点を突いたうえでスライム自体に不意をつき、貫通によるダメージを与えるしかない。

「ウニャゥ~?」
「シーニャ、そこを動かないで待っててくれ」
「分かったのだ」

 稲妻による音と光で呆然となっていたシーニャは、すでに回復。
 ――とはいえ、今はルティの救出劇を黙って見守ってもらうしかない。

「やるぞ、フィーサ」
「はいなの!」

 両手剣フィーサを手にし、スライムの塊に向けて全神経を集中させる。
 重力魔法を剣に付与させたが、与える一撃は強振によるもの。

 実際にはスライムの盲点をつき、歪みを生じさせるほどの打属性を与えるだけ。
 スライムには本来打属性が有効では無く、弾き返されるのがオチだ。

 だが両手剣に重力を付与した上での攻撃であれば、貫通させられるはず。
 加えて、ルティは格闘属性のドワーフ。

 スライムにダメージを通らせるが、ルティにも多少なりの殴打によるダメージで目を覚まさせるという、博打的な手段になる。

『貫けろ! ブラインドサイド!!』

 おれは裂帛れっぱくの気合と共に、両手剣による攻撃でスライムに突き刺した。
 一瞬の煌めきに似た光が辺りを包む。

 あまりの眩しさに、おれは目を覆った。

 ◇◇

 そこから数分くらい経っただろうか。

 見ると、シーニャも両手で目を隠しながらしゃがみ込んでいて、静寂な空間が出来ていた。
 そしてそこに見えるのは見上げる程のスライムの塊の姿ではなく、水に濡れたルティの姿だった。

「大丈夫……。小娘は問題無いなの」
「……そうだな」

 簡単にくたばるような娘ではないと信じていたが、ぐったりした姿で倒れている。
 姿を見る限りでは分からないが、多少なりとも打属性ダメージも蓄積された可能性がありそうだ。

「ウニャッ! 回復するのだ!!」

 視界の遮断から回復したシーニャは、すぐに治癒魔法をかけ始めた。
 こういう時、回復魔法の無いおれはもどかしい気持ちになる。

 その様子を見ていると、

『あぅぅ、悪いことしてごめんね。お詫びに、光神リアディオを連れて来てあげるから待ってて~』

 水路のどこからか、クラティアの声が聞こえて来た。
 闇が抜けて悪戯わるさをする心が抜けたのだろうか。

「光神? それって、フィーサの……?」
「そ、そうなの。ここに来るなんてこと、あり得ないことなの」
「人前には出ないってことで?」
「わらわも、お姿はぼんやりにしか見えてないなの。まさかまさかなの」

 闇神スライムの反省なのか、それとも気まぐれか。
 いずれにしてもシーニャの治癒魔法だけでは、目を覚ますには至っていない。

 そう思いながらしばらくすると、何か右手が熱を帯びたような感じを受け始める。
 魔石を手にしていないのに、魔法文字が浮かんで来るような感覚だ。

「あつぅっ!?」
「ど、どうかしたなの?」
「……フィーサ。おれの右手はどうなってる?」
「え、右手? ……こ、光神さまと闇神さまの印が見えているなの!!」
「――つまり?」
「し、印が宿っているなの! お姿は無かったけど、光神さまのお力が使えるかもしれないなの」
「光属性……か?」

 何やら大興奮のフィーサだが、属性の神にでも認められたのか。
 光が使えるからといって、回復魔法が使えるかというとそれはどうだろう。

 物は試しだ。
 シーニャの治癒魔法に加わって、光魔法を与えてみるか。

「ウニャニャ!? ま、眩しいのだ……! でも何だか温かいのだ~」

 回復魔法を知らないが、光魔法をとにかくかざしてみた。
 そして、

「うう~ん……あれれ? 光しか見えませんけど、ここは天国ですか?」
「おれだ。ルティシア! おれが見えるか?」
「アック様……天国のアック様!?」

 力ない返事をしていたルティだったが、おれに気付いた途端に飛び起きた。
 
「死んでないぞ? 落ち着け、ルティ」
「はふぅぅ~アック様。アック様? アック様ですか?」
「まぁな」
「何だか夢の中でアック様と格闘していた気がして……」
「気のせいだ」

 打属性を与えたせいだろうな。
 現実だと分かったルティは、予想していた通りおれに抱きついて来た。

「アック様ぁぁぁぁぁぁああ~!!」
「ぐわっ!?」
「離れません~離さないでくださいいい~!!」
「……」
「ウニャッ!! ドワーフ、アックから離れるのだ!!」
「小娘、いい加減にするなの!!」

 一時はどうなることかと思ったが、何とかなった。
 これでようやく神の国から脱出出来そうだな……。
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