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第八章:因果の国

109.獣狩りパーティの縄張り

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 獣化した状態でガチャをすることになるとは。
 これでレアなものが出まくってくれれば、言うことは無いのだが。

 しかし獣化したことで、手の平の面積が狭くなっている。
 そのうえ身に着けていた腰袋や装備品やらが、全て外れてしまった状態だ。

 基本的に魔石を入れてある腰袋は、今まで誰にも触れさせたことは無かった。
 もちろん彼女たちが魔石に触れたところで、どうにかなるわけではない。

 気になるのはフィーサと同様の、彼女たち専用魔石の存在についてだ。
 フィーサが変調をきたしているのは、魔石による成長によるもの。

 うっかり魔石に触れさせて、不調を起こして欲しくない。
 ――とはいえ、腰袋を手に魔石を渡してくれそうな娘はどう考えても……。

『シーニャ! おれの腰袋を持って来てくれ!!』
『ウニャ? そういえばアックのモノが置きっぱなしになっているのだ。持って来ればいいのだ?』
『あぁ、頼む! シーニャだけが頼りだ』
『ウニャッ! 任せるのだ!!』

 言葉が通じるのはシーニャだけ。
 さらに言うと、ルティが魔石に触れた場合の方が不安を抱えそうだ。

『ありがとう、シーニャ。ついでにその袋から魔石を取り出して、おれに渡してくれ』
『分かったのだ!』

 聞き分けのいいシーニャは、耳を垂らしながら素直に言うことを聞いている。
 ルティの方をちらりと見ると、暴れるフィーサと格闘しているようだ。

 大人しくしてくれれば、それでいいと思うことにする。
 さて、

『シーニャ、おれの手の上に……』
『アック。シーニャの名前が魔石にあったのだ。これは何なのだ?』
『……うっ? その魔石に触れた?』
『触れたのだ。でも何ともないのだ』
『そ、それなら何も気にしなくていい』

 シーニャが触れても、魔石に変化は無かったようだ。
 単に触れただけなら問題は無いということか。

 専用魔石を除けば、魔石の数が大幅に増えたわけじゃない。
 ここはシーニャの魔石も交ぜて引いてみるか。

 【Sレア フェンリルの爪:獣化専用 Lv.0】
 【Uレア 従魔の肉体を硬化。あらゆる攻撃を無効化、行動不能にする 潜在:従魔】
 【Uレア 従魔の能力を使用出来る 条件:従魔の行動不能時】
 【Uレア 獣化スキルを解放 人間に戻る 条件:一定数の人間を倒す】
 
 むぅ、これは……。
 やはりというべきか、シーニャにも関わりがあるな。

 シーニャのスキルを使えるとしても、彼女を行動不能にするとか厳しすぎる。
 武器の獣化専用はいいが、レベルを上げるには獣化でいる必要があるのか。
 元の姿に戻るには人間を倒すことのようだ。それと同時にスキルも得られるようだが……。

 フェンリルの爪とあるが、まさか今のおれはフェンリルのようなものなのか。

『何かいいのが出たのだ?』
『ああ、うん。シーニャに聞くけど、おれの姿は狼か?』
『そうなのだ。少し目つきが悪いだけの狼なのだ。それがどうかしたのだ?』
『……何でもないぞ、うん』

 単なる武器なだけか。
 確かにおれは獣化して狼になった。
 たとえそれがフェンリルの力だとしても、それがどれくらいか分からないからな。
 
『アック様、アック様~!! た、大変です、大変です~!!』
ウガッ?どうした?
『こ、言葉は分かりませんけど、伝えるだけ伝えます~! か、囲まれていますけど、どうしましょう!?』
ウウガッ!?何っ!?

 ガチャを引いてて気づけなかったが、シーニャの言っていた人間の気配か。
 魔石はすぐに袋に戻したからいいとして、この姿で戦うことになるな。

「ドワーフ、アックの荷物を守れ! なのだ」
「ええっ!? 荷物っていうと、錆びた剣とか身に着けていた装備のことですよね?」
「それしかないのだ」
「――ということは、アック様は今……裸ですか!?」
「そんなのは知らないのだ。それよりも早くするのだ! シーニャ、アックと一緒に戦うのだ。ドワーフとフィーサは下がってろ! なのだ」

 ルティの思っている通り、恐らく獣化が解けたら裸を晒すことになるな。
 それについては今は置いとくとして、

『シーニャ、強い気配の数は分かるか?』
『ウニャ。3くらいなのだ』
『そうか』

 ルティとフィーサは防御力も高いから心配ないとして、おれが問題だ。
 強い気配ということは、冒険者パーティーだろうな。

 この辺はまだラクルにほど近いエリアだ。
 ダンジョンに潜らないパーティがいないわけでもない。

 外で狩りを専門にしている、獣狩りパーティという連中がいると聞いたことがある。
 もしやこの辺りが縄張りか。

 獣狩りパーティという厄介な連中は、外で狩りを楽しんでいる。
 あまりいい話を聞かないが……。
 まさに今のおれたちが、そういう連中にとっての狩られ役だろう。

『魔法攻撃が来たら、シーニャは避けるんだ。そいつらはおれがやる』
『ウニャ! シーニャ、武器を持つ人間を倒すのだ!!』
『頼むぞ』
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