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第八章:因果の国
106.宝剣とガチャの新たなる導き
しおりを挟む「――なるほど」
「だからお願いがあるなの! わらわの魔石を使って、もう一度ガチャをして欲しいなの!」
「もちろんそれは構わないことだよ。でも、解決するかどうかは分からない。それでもいいかい?」
「イスティさまには文句を言うはずがないなの!」
「分かったよ、フィーサ」
◇
ルティから全身マッサージを施され、睡眠効果も得られた。
結果、おれは力がみなぎって仕方がない状態にまで回復。
その後、料理に取り掛かるというので、おれはルティの部屋を後にする。
そして今は悩みまくるフィーサの部屋の中。
彼女は今まで何の意識もせずに、人化することが出来ていた。
剣のまま長い時間経っても何ら不思議も無く、不調すらも感じなかった。
しかし今彼女が感じているのは、人化出来ないことの不安。
さらには、妙に落ち着かないことらしい。
彼女が頼んで来たのが、専用魔石でガチャをして欲しいということだった。
それが解決になるのかは不明だが、成長が関わっているとすればやってみるしかない。
「それじゃあ、フィーサの魔石を交ぜて――」
【Uレア 原初の光 潜在スキル:フィーサブロス】
あれっ? これだけなのか。
「イスティさま? 何が出たなの?」
「いや、それが……」
装備やアイテムなら目に見えて示せるが、スキルはおれにしか見えない。
何て言えばいいのか、そのまま伝えるしか無かった。
「……原初の!? わらわが条件ということは……あそこしかないなの」
「んん?」
「イスティさま、わらわを手にして南に向かって出発して欲しいなの!」
「南に? あぁ、それはもちろんそうするけど……何か分かったことが?」
「虎娘も小娘もすぐに呼ぶなの! 早く早くなの!!」
フィーサの慌てようはただ事じゃない。
幸いにしておれの体力は万全だ。恐らくルティも問題無いだろう。
「何か必要な物はあるかな?」
「そんなのは、イスティさまのガチャで何とかすればいいなの! あそこに行くまで馬車も必要なの!」
「遠い所ってことか。まぁガチャに限らず、途中の町や村でも何とかなるだろうけど……」
「わらわは、虎娘を起こして来るなの! イスティさま、外に出て待ってて欲しいなの」
「わ、分かった」
何百年ぶりの成長による不具合なのか、それとも彼女自身の問題か。
いずれにしても、長い旅になりそうだ。
シーフェル王女となった彼女の行方や、砦で出会った共和国の動向も気にはなるが……。
ラクルに戻って来た時点でそこは一度、間を置くしかないな。
「――というわけだから、ルティも準備を整えて外に行くぞ!」
「丁度いいタイミングですっ! 試食も含めた料理がたくさん出来上がりまして~」
「頼むぞ!」
「お任せくだ――」
『ギニャァァァァ!?』
「ええっ!? な、何ですか、今の悲鳴は……」
「……いや、問題ない。気にするな」
眠っていたシーニャを起こしに行ったのはフィーサだ。
多分、シーニャの尻尾かどこかを噛みついて起こしたんだろう。
◇
「アック様、どこかに歩いて行くんですか?」
「途中まではそうだな。馬車を手に入れないとキツいからな」
「おぉ~! それは楽しみです!」
ラクルからは、船に乗って西のレザンスに行くことも出来る。
しかし行き先が南のどこかになるとすれば、陸地をかなり進まなければならない。
ラクルは東端に位置する、小さな倉庫町。
おれがワイバーンに襲われた石窟や点在するダンジョンも、同じエリアにある。
Sランクの連中に限らず、冒険者好みの土地であることは間違いない。
そこから南は行ったことが無いだけに、あらゆる面が不明だ。
『ウニャァァッ!! アック、シーニャの耳を撫でて欲しいのだ!』
尻尾ではなく、耳の方だったか。
噛んだとされるフィーサは、何食わぬ顔でおれの手元に戻って来た。
ルティとはまるで合わずにケンカばかりするシーニャだが、フィーサのしたことにはあまり気にしていないようにも見える。
長く一緒にいたことで、何か分かり合ったのかもしれないな。
「アック様、アック様! わたしの耳もぜひぜひ~」
「うるさいのだ、ドワーフ! お前は黙れなのだ!」
「ムキ~!!」
ふたりの強さはその辺の冒険者とは、比べようもない。
ケンカしながらでも、何とかしてもらわなければ。
「それで、フィーサ。どこに行こうとしているんだ?」
「南端の神族国家……ヘリアディオス……」
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