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第八章:因果の国

92.素直な再会と甘やかし

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「やはりシーニャか! おぉ、よしよし……」
 
 おれの胸元に飛び込んで来たのは、シーニャと彼女の耳。
 いつもなら過剰なスキンシップはしないが、ついつい可愛がってしまう。
 
「フニャン~」
 どうやら堂々とした触りなら、怒りは込みあがらないようだ。

「い、一体これはどういう……。獣人のシーニャがそんなに懐いているなんて。もしかして彼女たちが会いたがっていた君が、アック・イスティ?」
「ん? シーニャとフィーサをここまで連れて来たのがあんた……いや、デミリスだな?」
「あぁ、デミリス・ルダンだ」
「そうか、あんただったか。こっちもあんたを探していたところだ」
「え? オレを……?」

 なるほど、お互いに目的を持って動いていたようだ。
 おれはデミリスを、デミリスはシーニャたちの主人であるおれを……といったところか。

 フィーサに割って入られてしまったが、デミリスの剣士としての実力は恐らくSランク。
 だが剣を使いこなしていないどころか、剣の強さに頼りすぎだ。

 魔法に耐える剣なんて、そんなスキルがついていたならもっと自信を持っているはず。
 Sランクパーティーがどれくらいいるかは不明だが、騙されたようだな。

『あ~~!? ズルいですよ~!! シーニャばかり可愛がって! わたしも可愛がって下さい~!』

 ルティたちも来たか。
 それはともかく、シーニャの甘えようはいつになく激しい。

「ウニャ! ドワーフなんかに、渡さないのだ!」

 そういえばふたりは相性が悪かったな。
 再会しても、素直に喜んでいるようには見えない。
  
「イスティさま! わらわも~!」
「フィーサもか。まぁとにかくだ、再会して嬉しいぞ!」
「ウニャッ!」
「嬉しすぎるなの~!!」
「アック様に会えて、わたしも嬉しいですよ~!」

 お前おれとずっと一緒にいただろ、ルティ……。
 それはともかく、

「デミリス……! 良かった、無事だったのね!」
「アクセリナ!? ど、どうしてここに? 兄きは?」
「彼は町であなたを待っている。帰るために来たんでしょう?」
「……う、うん。でもオレは盗賊になんかならない……」
「あの人なら、それならそれでも構わないって言うと思う。でも故郷なのは変わらないでしょ?」
「そ、そうだね」

 どうやらあちらも再会を果たしたようだ。
 砦で再会するとは、何かの因果でもあるのか。

「あれ? イスティさま、その腰衣はガチャで出したなの?」
「まぁ、そうかな。途中の湖でこれを”再生”したカエルをテイムしたんだが、どこかに行ってしまったんだよ」
「そ、それってもしかして、ラーナじゃなかったなの?」
「――! 知っているのか、フィーサ」
「いなくなるはずないなの! きっとイスティさまの魔石にいるはずなの」
「魔石に?」

 そういや、魔石に何かを刻んでいたような。
 ちょっと見てみよう。

 フィーサが知っているということは、フィーサと似た存在なのか。
 そういえば、アクアトラウザーもEXレアだな。

「あっ……!」
「ほらほら、やっぱりなの~」

 魔石自体は驚く変化を遂げていない。
 しかし手の平から見えた魔法文字には、しっかりと”ラーナ”の文字がある。

 【EXレア アクアトラウザー 潜在:ラーナ】

「テイムした彼女が突然消えたと思っていたけど、身に着けているトラウザーに宿っている?」
「妾も元々は忘れ去られた宝剣。でもでも、イスティさまのガチャですぐに出会うことが出来たなの。だから、他の子たちとは違うなの~!」
「なるほど」

 よく分からないが、宝剣フィーサだけは確定な存在だったようだ。
 テイムと装備再生の関係ということか。

 揃えれば、おれのツギハギ装備もしっかりとしたものになればいいが。
 そうなると、この錆びた片手剣は一体……。

 悩むおれに近づいて来たのは、

「アックさん、おかげさまで弟と再会することが出来ました。本当にありがとうございました」
「すみません、兄きの依頼でオレを探しに来てくれたのに危うく――」
「問題ないですよ。おれもあんたのおかげで、シーニャたちに会えた。それに、フィーサが止めてくれなければ、デミリスさん。あんたを消すところだった」
「――えっ……? ま、まさか、剣士のスキルも……?」

 いくら慣れていない片手剣でもソードスキルを得ている以上、負けることは無い。
 たとえSランク剣士だろうと、何の問題も無かった。

「決まったジョブはありませんが……まぁ」
「はぁぁぁ~……、よ、良かった~」

 隠していた実力に気付いたのか、デミリスは腰を抜かしてへたり込んだ。
 デミリスの片手剣にも興味はあるが、今は砦をどうするべきか。

「ゼーハーゼーハー……ア、アック様、砦に突入したいです~」
「ウ、ウニャ……シーニャ、負けたくないのだ」

 何を競っているのやら。
 ルティとシーニャは、相変わらずケンカしていたらしい。

 沈めるつもりの砦だったが、内部を探ってみるか。
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