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第七章:見えない戦い
88.冒険者砦の攻防戦 2
しおりを挟む「……この辺りから、随分と冒険者を見かけるようになったなの。近くにお城でもあるなの?」
「そんなはずないんだけど……いや、でも共和国が近いのか」
「シーニャ、人間嫌い。許す人間、少ないのだ。デミリスは弱いけど弱くないから、許すのだ! キョウワコクから、人間来ているのか?」
「許してもらえてるんだね、ありがとう。えっと、シーニャの言う通りなんだけど、オレたちと同じ道を進む人間たちは冒険者のはずだよ。だけど、この人数は明らかに……」
宝剣フィーサと仲直りをしたシーニャは、元剣士デミリスにも心を許す。
デミリスは迷いを断ち切り、剣を振るうことを決めた。
やる気を見せるデミリスが先頭を歩き、シーニャがそれに続く。
フィーサは剣の姿に戻り、シーニャの手に収まっている。
そんな彼女たちが歩き進む道には、見慣れぬ人間たちの姿が目立つ。
デミリス曰く、人間たちの多くは冒険者であるという。
冒険者が多く見える背景には、レイウルム半島と繋がっている山道の先。
その先にあるザーム共和国から来ているということらしい。
デミリスは自分の故郷である、地下都市レイウルムを目指している。
自分たちはともかく、冒険者たちが向かう先が地下都市なのではないかと、不安を覚えた。
「デミリス、顔が青いのだ。怖いのか?」
「あ、いや……多分そうじゃないと思うんだ。だから大丈夫」
「何が大丈夫なのだ?」
「な、何でもないんだよ」
シーニャはデミリスに心を許した。
しかし弱さを見せるデミリスに、シーニャは首を傾げるばかりだ。
「何か戦いの気配を感じるなの! シーニャ、妾を存分に使っていいなの!」
「ウニャ!」
「ちょ、ちょっと……!? 戦いって、どこで?」
「人間が沢山集まっている所で起こっているなの! あなたも剣を振るうなの」
「……地下都市まではまだ距離がある。だとすれば、戦っているのは――」
「何をぶつくさ言っているのだ? 砂塵の先に何かがあるのだ!」
シーニャの言うように、前方には激しい砂塵が吹き荒れている。
そんな光景の中おぼろげに見えて来るのは、城のようにも見える不確かな影だ。
「――こんな道半ばで、城……いや、砦を造ったのか?」
「シーニャもそこに向かうのだ! アックに会う前に、人間をやっつけてやるのだ」
「様子が分からないし、とにかくオレについて来て。砦に行って話を聞いて、それからだよ」
「ウニャ……人間との話は、お前に任せるのだ」
「うん。それまでは戦ったら駄目だよ?」
「ウウゥ」
デミリスとシーニャ、フィーサは、砂塵の先に見えている砦に向かうことにした。
不安を感じながらも、剣士としてデミリスは先頭を進む。
◇
「どうした、戦士の男どもはまだ見つからないのか?」
「は。奴らは冒険者の中でも最弱。先行の弓術師が戻るのを待ちきれずに、森に進んだのではないかと思われますが……どうされますか?」
「役立たずどもめ。まぁいい……もうすぐいくらでも派遣されて来る。夜になる前に、配置に就かせろ! キニエス。貴様は地下を掘り進めろ」
「了解しました、イルジナさま!」
「フフ……、キニエス・ベッツ。勇者の関わりがある男もろとも、地下都市で全て殺してあげるわ。ザームの為にもね……」
◇
砂塵で思うように進めなかったデミリスたち。
砦に近づいた頃には、辺りはすっかりと薄暗くなっていた。
夜になると魔物が活発になる。
このことを知るデミリスは、シーニャたちを大人しくさせて砦に入った。
「ここは何なのだ?」
「良くない気配が沢山いるなの……」
「砦だと思うんだけど、確かにここは何か危ない気がするね」
「人間が沢山集まっているのだ」
「……戦っていた気配はこの中だったのか、それとも……?」
「シーニャ、外に出たいのだ!」
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