Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます！

第七章：見えない戦い

73.地下都市レイウルム

　どこまでも続く地下への階段も、ようやく終わり平坦な通路になった。
　かなり深い所に来たようだ。

　地下深いわりに、灯あかりが備わっていて歩きやすい。
　自然の地下を改造したというよりは、後から加えたような感じに見える。

　それにしても、人も魔物もいない中での盗賊団。
　何の意味も無いはずなのに、何故彼らは盗もうとしているのか。

　それにルティが持って来た杖と鎧。
　それらもどこからか盗み、たまたま草地に放置していたのだろうか。

　ジョブとしての盗賊を覚えるにしても、知っておかなければ。

「――おい、聞こえてんのか？　荷物持ち！」
「あっ……おれですか？」
「お前のツレのドワーフ女は、磨きの小屋に連れて行く。お前はこのままついて来い」
「小屋……？」

　連中の背中しか見えていないが、ルティには別の仕事をさせるようだ。
　おれに従っている以上、暴れるようなことはしないはずだが、その辺は不安になる。

　狭い通路から、広い空間に出た。
　空間というよりは、一つの大きな町が眼前に広がっている。

　地下にありながら地上への穴が開いていて、空の明るさを利用しているようだ。
　まるで隠れ家のように思えるが、町になっているのは驚きだ。

「地下に町が広がっていて驚いたか？」
「ただのアジトじゃなく、町……ですか？」
「ここは盗賊とその家族が生活している町、レイウルムだ！　元々は廃墟だったところを直しただけなんだがな。それと俺らは夜以外は、外に出ている。いつもいるのは家族と女だけだ」
「廃墟だった場所……え、じゃあシアは……」
「変なことはしねえよ。安心しな！　盗賊の女には別の仕事をしてもらう」
「……どういう」
「盗んだ武器とか防具なんかを磨く仕事だ。綺麗にしねえと、王国の騎士どもには売れねえからな！」

　なるほど、そういうことか。
　盗んだままの道具は、汚れが目立つことが多い。
　
　それを磨いて、どこかに売りつけているわけか。
　昼間は盗みに出かけて、帰って来たら磨いてもらい、その繰り返しで生計を立てているようだ。

　王国の騎士と聞こえたな。
　おれたちが行こうとしていた王国のことだろうか。

「……王国？　それってシーフェル王国ですか？」
「お？　知ってんのか？　確かにシーフェルだな。だがもう一つお得意さんがあって、そこはザーム共和国って所だ。どっちかと言えば、ザームの方が買ってくれる感じか」
「え、何故？」
「王国の方は後継ぎで揉めてるし、共和国の方は賢者が消えて大騒ぎってやつだ」
「だから武器が売れると？」
「あの辺は魔物が強いし、ドラゴンなんかもいるからな。稼げる場所ってもんだ！」

　ザーム共和国……賢者テミド・ザームの国か。
　勇者の国はどこにあるかは分からないが、賢者と聖女の国は近い関係にあったみたいだ。

　もちろんすでに奴らとは何の関係も無い。
　そして存在も無いが、国名になるほどの人間だったことは驚いた。

　魔物が強い所に国があるということは、強くもなるか。
　王国の揉め事も気になるが、今はここで何かを掴まなくては動きようがない。

　視線を町に戻すと、いくつか並んでいる小屋がある。
　その1つに、ルティが入って行くのが見えた。

「あの小屋は磨くだけの場所ですか？」
「小屋は職人ギルドだった場所だ。丁度いいからってんで、ギルドの真似事をさせてる」
「それを女たちがやっていると……」
「手先が器用な女が多いからな！　盗んだ物以外でも、金になるもんは売りに出してる」

　それを聞くと、ルティは確かに適任だ。
　ドワーフというだけで連れていかれたのも、納得出来る。

　◇

「はい、この小屋に入って！」
「えぇ？　わ、わたしだけですか？　あの、わたしのご主人様はどこに……」
「……ご主人様ぁ！？　へぇ……？　あの弱そうな荷物持ちの男がねぇ。あんたの方が強そうなのに、分からないものだね」
「アック様は弱くありません！！」
「だんなの名はアックか……なるほど。それで、あなたは？」
「だ、だんな様！？　アック様がわたしの……はふぅぅ」
「想像しているってことは、そうじゃないんだね。理解。あなたの名前は？」
「え～と、わたしはル……じゃなくて、シアです。シアとお呼びください」
「それなら、シア。早速だけど、そこに置いてある武器を布で磨いてくれる？」
「は、はいっ」

　おれとルティは、別行動になってしまった。
　大人しく言うことを聞いて、大人しくしてくれるだろうか。

　おれよりも手が早く、拳で解決する娘だ。
　盗賊連中や、面倒な相手が絡んで挑発に乗らないことを祈るしか無い。