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第五章:魔石の導き

58.海底ダンジョンへ

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「――そういうわけで、僕も一緒について行っていいでしょうか?」

 見習い騎士から直接依頼を受けた。
 行き先が海底神殿であるというのも丁度良かったので、ルティたちに紹介させた。

 正直言って護衛が面倒だ。
 しかし魔物の強さは大したことが無いので、護衛をルティに頼んでみた。

「ふむふむ、なるほど! わたしはアック様が決められたことであれば、何も文句のつけようがありません。護衛はわたしにお任せ下さいっ!」
「よ、よろしくお願いします。えっと、ルティシアさん」
「お任せされました!」

 責任を持たせれば、ルティはやれば出来る娘だと認識している。
 今回はルティに全て任せてもいいかも。

「あの、アックさん。護衛をありがとうございます。ですが、やはりマントだけでは不安です……道具屋で盾か何かを買って来ようと思います」

 それもそうか。
 見習い騎士で恐らく武器を持たせてもらえなかったのだろうが、何も無いのは危険だな。

「それならおれが――」
「イスティさま、駄目なの」
「……ん? フィーサ?」
「イスティさまはガチャで出そうとしているなの?」
「あぁ、そのつもりしてたけど何かまずいかな?」
「ついて来るだけの人間、それも見せかけだけの騎士に貴重な武器、盾を与えるのは良くないことなの! イスティさまのガチャは、妾たちだけでいいのなの!」
「……う、そうか」

 レベルが低く、何かをしでかしそうにない見習い騎士。
 だからといって、そんな相手にガチャで出すのは危険か。

 ついつい忘れてしまいがちだったが、おれのガチャスキルはあまり多用すべきじゃない。
 Sランクの連中が、おれのスキルを利用しようとしていたのを思い出した。

 ”特別”なものが備わっていると知れば、どこかに伝える危険性がありそうだ。
 ここはルティにも釘を刺しておくか。

「ルティ、ちょっとこっちに……あれ? ルティはどこ行った?」
「小娘なら、張りきって道具屋に案内していたなの」
「あぁ、そうか。早速護衛をしているのか」

 ルティのお手製で特製のドリンク各種をリエンスに配ったら、大変なことになる。
 そう言おうと思っていたが、杞憂だったか。

『ウゥゥ……ウニャ? ここはどこなのだ? シーニャ、眠っていたのだ?』
 ルティとリエンスがいなくなってすぐ、シーニャが目を覚ます。

 どうやら初めて乗った船に酔ったことで、彼女自身が自己治癒をしていたらしい。
 そう考えると、彼女たちそれぞれで苦手なものがあるということが分かる。

「シーニャ、大丈夫か?」
「ウニャ。アック、ずっと傍にいたのだ。シーニャ、回復出来た!」
「ん? おれが傍にいただけで回復?」
「アックはシーニャのあるじ。万全なあるじのいいところ、シーニャ吸収する!」
「ふむ、そうか……」

 おれはテイムの仕組みがよく分からない。
 だが、元々おれから従わせたわけじゃないし、シーニャの覚醒は普通とは異なるかも。

『アック様~! 戻りました~!!』
 そうこうしていると、ルティの甲高い声が向こうから聞こえて来る。

 どうやら道具屋を案内し、リエンスに色々買い与えていたようだ。
 しかし、

「……は、ははは。僕は斧とか鎌とか使えないんですが、いいんですかね? こんなに買って頂いて……」
「ルティ……それを全部彼に?」
「はいっっ! 武器をお持ちでないということでしたので、わたし、奮発しちゃいまして~」
「お金はどうしたんだ?」
「アック様のお金では無くてわたしのお小遣いからですので、心配無用ですっ!」
「はぁ……ルティ」
「はいっ、アック様!」

 積極的に買い与えたのを怒ろうとしたが、むしろ褒められる姿勢で待っているしやめといた。
 お小遣いをどこで稼いだのかは後で聞くとして、早いとこ出発しておくか。

「いや、ルティには後でたっぷり話をする」
「ほ、本当ですかっ!? た、楽しみにしていますっっ!」

 ルティに悪気などあるはずもないので、気にせずラクルを出た。

 ◇

『グッウゥゥ……あたしを乗っ取って何をされるつもりが――!!』
『決まっている。もうすぐここに来る、荷物持ちのアックに攻撃をしてもらうだけ。裏切り者には容赦のない彼のこと、今まで仲間であろうとなかろうと、徹底的に痛めつけてくれるでしょうね!』
『あの方はそう簡単では無いわ。人間ごときあなたに、どうこう出来るはずがない……せいぜい痛い目に遭うことを待ち望んでいるといいですわ、エドラ・シーフェル……』
『フフ、彼の遺志はわたくしが継いで見せる……荷物持ちアック、必ず――』

 ◇◇

 ラクルからほど近い海底洞門。
 行き方は変わらず、崖の断層から入り口となっている隙間を目指す。

「フィーサは今回は人化したままなんだな」
「妾だってたまにはそうしたいの。それに、この先から嫌な力を感じるのなの……」
「うん?」
「イスティさまといえども、気を付けるなの!」
「そうだな、そうするよ」

 フィーサは長いこと生きていると言えば怒りそうだが、良くない気配を感じることが出来るらしい。
 剣に戻らず、おれの傍から離れないのもその為だろう。

 道を知るおれが先頭に立ち、その後ろをシーニャ、そして張り切るルティと続いている。
 きっとスキュラがいるはずだ。

 そして異変の彼女に何かが起きているとすれば、何かが起きても不思議じゃない。

「アック、水が襲って来るのだ……どうすればいいのだ」
「シーニャも、おれから離れないようにな」
「フニャ」
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