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第四章:謎追いの旅へ
51.ロキュンテ、再び!?
しおりを挟む「ウフフ……あなただけでは、この女をどうにも出来ない……そうでしょう?」
「マスターなら出来るもん!!」
「……マスター? あぁ、荷物持ちの……それは楽しみなことね――」
◇
『フィーサ! ルティたちの準備次第で出るよ! スキュラは大丈夫か?』
「……う、うん」
フィーサが何とも言えない表情を浮かべているが、スキュラとも相性が良くないのか。
そんな中、ルティたちが支度を済ませ、部屋に入って来る。
『お待たせしましたっ! お着替え完了です!』
着替えたように見えないが、ルティは同じ服を何着も持っているのか?
おれの衣服もせっせと編んでくれたし、手先も器用のようだ。
「いよいよですね、アック様! 母さまが言っていたことをやる時が来たのですね」
「ルタットの町をあっさり離れることになるが、ここで転送が上手く行けば、すぐにまたここに戻って来られるはずだ」
「きっと上手く行きますよ! アック様!!」
「ウニャ? 何をするのだ? シーニャ、怖いのは嫌だぞ」
「怖くは……無いとも言えないが、シーニャはおれが守るから心配いらないぞ!」
「フニャゥ……」
果たして一度に全員を移動させられるのかは不明だ。
しかし知らない場所じゃない限り、行くだけなら失敗は無いだろう。
バヴァルをルティに背負わせ、おれたちは宿を出て町の広場に集まる。
そこでは首を傾げる男たちの姿があった。
恐らくバヴァルの姿を見てのことだと思われるが、近付いても来ないので気にしないことにする。
「……で、どうやれば移動出来るんだ?」
「えぇぇっ!? 母さまから聞いてませんか?」
「詳しくは聞いてないな……」
「う~んう~ん……そ、それならっ! 外に出て、ロキュンテをここに呼ぶのはどうですか?」
「この町の外にか?」
「山が近いので多分大丈夫かなぁと思うです!」
肝心なやり方を聞かなかったおれのミスだ。
しかし聞かないことには移動しようも無いし、ここに呼ぶしかないのか。
みんなを町に残し外に出たおれは、魔石を取り出す。
そのままガチャを引くと、
【Uレア 火山渓谷ロキュンテ 残1】
【Uレア スキル:メモリア 習得】
なるほど、ロキュンテを呼び出せるのも残り一回か。
何気にスキルも覚えているな。
メモリアってことは、おれ自身の記憶で転送が出来るとか?
そんなことを思っていると、火山渓谷も含めた町が目の前に来ていた。
それと同時に、気付いたことがある。
後ろに見えていたルタットへの入り口が結界に似た魔法で閉ざされていることだ。
ルティたちを町の中に残して来たが、それが原因か?
それとも町移動は、他には干渉させない制限スキルなのかも。
この辺も含めて聞いてみるか。
眼前に広がる景色は、確かにロキュンテらしい。
今回は高くそびえる山が土台にあったからか、違和感なく移動して来たようだ。
ロキュンテの町から出て来る人の姿は無い……そう思っていると、
『アックさん、駄目じゃないですかっ!! 都合よく町を移動させては魔力消耗が――あれ?』
ルティに似た母親ルシナさんが、俺の元に駆け付けて来た。
これも予言していたのか、そこまで怒り狂っているわけでは無さそうだ。
「す、すみません、ルシナさん」
「いいえ。転送のことを言っておきながら、詳しく教えていなかった私が悪いのですから。それにしても、短期間で随分と魔力が増えていますね」
「ルティの特製ミルクが効いたんじゃないですかね~」
「あの子ったら、またそういう……。ところで、あの子はどこへ?」
「ご存じないんですか? おれの後ろに見えている結界の先に町がありまして、そこで待ってますよ」
「不干渉転移……ですか。なるほど」
ルシナさんは難しい顔をしながら、何か考えている。
どうやらおれが使える町移動スキルは、そういうことらしい。
「あの……?」
「アックさん、今回は意図的にあの子を町に残されましたか?」
「え? いえ、そんなわけでは……」
「それとも何か不都合なことが起きている……何にしても、アックさん! 魔力消耗はともかく、町転移はむやみやたらに使っては駄目ですよ!」
「ご、ごめんなさい」
ルティと同じ顔をした大人な女性に怒られると、何も言えなくなるな。
ルシナさんが心配しなくても、ロキュンテの転移は残り一回だけだ。
さすがに易々と呼ぶことも無いだろう。
「……アックさん。転送のやり方ですがその前に、以前訪れた時にいらっしゃった女性は戻られましたか?」
「バヴァルのことですか?」
「あの時、時戻しのローブを身に着けていたはずです。あれ自体、呪われた装備だったのですが……」
「若返って、魔石を奪い行方知れずでしたが、今は……」
「あの女性だけを、私の所に連れて来られませんか? 共に連れて行くと、とても良くない予感がします」
「え、でも不干渉の」
「私とご一緒であれば、行けるはずです。とにかく急ぎましょう」
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