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第四章:謎追いの旅へ
47.町を守る娘との戦い スキュラ編
しおりを挟む出て来ないと思っていたスキュラが出て来たか。
しかもルティを助けるなんて、2人で行動させたのは良かったようだ。
「あう~、スキュラさん~」
「らしくありませんわね。後ろを取られて攻撃されるだなんて、あなたの強さを見誤っていたのかしら?」
「変なんですよ~! わたしの動きを最初から分かっていたような感じで~……」
「……見たところ悪魔の騎士といった感じですけれど、剣を持たずにあなたと拳勝負をするなんて、随分と律儀な悪魔ですのね」
動きが分かって当然なんだが……。
スキュラが出て来たとなると、魔法を仕掛けて来るな。
それも得意の蝕み魔法で。
こういう機会は滅多に無いし、スキュラと魔法勝負というのも面白い。
「そこのあなた! あたくしの言葉が通じるかは存じませんけれど、こんな小さな町を単独で襲うことに何の意味がありますの? ここで引かないようなら、今度はあたくしがお相手しますわ!」
「おぉぉ~! スキュラさん格好いいですね~」
「う、うるさいですわ。さぁ、何とか言ったらいかが?」
レアガチャで仲間になったわけでもない彼女が、ここまで言うとは。
ルティといることで悪い部分が消えたか。
声を出すとスキュラの場合、すぐ気付きそうだ。
ここは先制攻撃を仕掛けて本気を出してもらうことにする。
詠唱も魔法名だけにしとかないとな。
『……アイスストーム』
最近は拳と剣だけで戦って来た。
それだけに、魔法が発動するかも怪しかったが……、
手の平に出すつもりで何となくのイメージを浮かべたら、あっさり発動。
スキュラのいる方に向かって、広範囲の冷気が襲い出した。
「フン、無粋な悪魔ですこと。言葉が分からないのか、それとも……? あたくしに氷属性なんて気に入りませんわね」
「ひゃー!? スキュラさんっ、地面もお家も凍っていますよ~!!」
「あなたは少し下がっていて! ルティ」
「はい~」
ルティがいるだけで戦いの緊張感が全く感じられないな。
――が、スキュラからは冷気に負けない殺気を感じる。
「フフ……、あたくしもお返しをして差し上げますわ!!」
「――!」
詠唱を必要としないスキュラから、魔法が発動。
おれが放った冷気を地面に集め、そこに大量の水を流し込んで来た。
水はすぐに氷と化し、おれの足下にまで影響が及んだ。
足下の動きを封じ、スキュラは間髪入れずに違う魔法を放ち始めている。
両足には氷の固まりがこびりつき、身動きが取れない。
これは素直に攻撃を受け止めるしか無さそうだ。
「フフフッ! 魔法を返された上に、動きを封じられる気分はどうです? 言葉が通じなくても、痛みは感じられるはずですわ」
「……」
なるほど。
水属性もしくは氷属性の攻撃を受けたとしても、利用してカウンターが可能らしい。
何かの蝕み魔法と氷の塊が、おれに命中したようだ。
しかしレアガチャで出したデーモン装備は、優秀すぎる。
ルティの一撃も吸収して逃がしたし、スキュラの弱体含みの魔法もまるで効かない。
こうなると、デーモンをテイム出来たのは良かった。
物理も魔法も効かないんじゃ、間違いなく苦戦するはずだ。
油断か余裕か、スキュラはおれのすぐ目の前に立っている。
それなら炎魔法、
『……バーニングウェーブ!』
「――っ!? ぎあ、あぁぁ……な、なん――」
「ああっ! スキュラさんっっ!? だ、大丈夫ですか!!」
「く、ぐぐぐ……炎魔法をこのあたしに、グゥゥ……!」
これは結構効いたか。
足下の氷はとっくに溶かして動けるが、油断を上手く誘えたようだな。
『……ミストラルウィンド』
真空の風が霧となり、覆われたスキュラもろとも全身を切り刻む。
「グィァァァァ……!! あ、悪魔の分際でっっ……!!」
「スキュラさん、落ち着いて~! 交代ですっ!!」
「……な、何てこと……! 何故どうして、こんなっっ」
むぅ、大した魔法は出していないし、スキュラならば対応出来るはずなんだが。
感情的になっているのが気になる所だ。
『悪魔さんっ!! 今度こそは容赦しませんからね!』
戦いたそうなルティが交代したか。
それならば、
『エクスプロジオン……』
爆発魔法だが、ルティに通じるかどうか。
突っ込んで来るルティに発動。
周囲を巻き込み、スキュラを含む半径方向に爆炎を展開した。
『ひぃえぇぇぇ!? ウワチャチャチャチャチャチャ!!』
……熱がっているが、やはり火口渓谷出身だから効いてないか。
『降参しろ……貴様らに勝ち目は生まれぬ』
ここまでやれば、さすがに言葉を発した方が言うことを聞きそうだ。
「あれぇ~? その声どこかで?」
「――ッフフ、あたくしの攻撃が全く通じないどころか、いやらしいやり方……やはりそうでしたのね」
いやらしいって……もしかしてスキュラは気付いていたのか。
「それにこの熱さを感じる魔法は、以前にもどこかで体験しているんですよね~。え~と、え~と……」
「ハァ……あたくしたちに、隠したお顔をお見せ頂けませんか?」
ルティはまだおれの名前が出て来ないようだ。
漆黒のヘルムを外せば顔は出せるのだがさて、どうする。
そう思っていたが、正面のルティが驚き出した。
「あわわわわ!? たくさん降りて来ましたよ、スキュラさんっ!!」
「――あら、この期に及んであなた様が使役した悪魔なのです?」
黒焦げながら全く無傷なルティが驚いている。
残りのデーモン族が到着したようだ。
『ウーウウウウー!! 許さないのだ……!』
……ん?
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