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第三章:スキルの覚醒

39.力の示しと魔石の変化

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 見た目年齢だけでいうなら、おれは今、小さな女の子たちに逆らえずに歩いている状況にある。
 しかしフィーサは宝剣で、年齢900歳に相当。

 そして獣人シーニャは、

「シーニャはこう見えて、17だぞ。アックは?」
「……19」
「人間の数字に優位性なんてないのだぞ。シーニャは、弱いアックを守る。それだけだぞ!」
「何とも言えないが……」

 少し前までは魔石を持つおれを魔物と呼び、危険な奴だと恐れていた。
 しかし今では立場が逆転して、何故か弱い人間として守られている。

 確かに基本的な力は獣人より劣るかもしれない。
 だがシーニャの強さは、一体どれほどのものなのか。

 そんな獣人ともソリが合わないのが、人化したフィーサだ。

「妾のイスティさまが、獣ごときに負けるはずがないもん!!」
「ミスリルの剣から人化したお前が、何を言っているのだ? シーニャの人化と比べられては困るぞ!」
「洞窟で足を引っ張ったら、妾がお前を斬るの! イスティさまの邪魔をしないで欲しいの!!」
「何を言うのだ? たかが剣ごときに、シーニャが負けるはずがないのだ」

 この辺りに人の気配がない。
 もしいたら、恥ずかしくなりそうだ。

「アック、ここ入り口! ここから……んんん?」
「ほらほらやっぱり! イスティさま、獣の言うことは信じたら駄目なの! 洞窟なんてない~」
「ミスリルもどきが何を言うのだ!! 確かにここが入り口なのだ!」

 シーニャの案内どおり、山のふもとまで来た。
 そして彼女が指すところを見たのだが……、

「ここに洞穴が……? しかしこれは……」
「本当なのだ!! どういうわけか、岩で塞がれているけど、本当なのだぞ!」

 洞窟ダンジョンの入り口と思しき場所には、中から塞がれたような大きな岩が、すっぽりと挟まっている。

 外からではなく、中からという時点で何者かが意図的にやったと思われるが……。

「ただの岩に付き合う暇なんて、イスティさまには無いの! イスティさま、他を探しに――」
「な、何をするのだ?」
「こういう時、一番簡単な解決方法がある。ふたりとも、そこから離れて!」
「ムムッ!?」
「イスティさま!?」

 シーニャの鼻で来られた場所だ。
 さすがに岩1つで、すごすごと帰るわけにもいかないだろう。

 おれは拳に力を込めて、岩に思いきり拳を当ててみた。
 
「……フニャッ? 何も起こらない……ぞっ!? ウ、ウウウ――!?」
「こ、これは、あの小娘の力と同じですの~!?」

 入り口を塞いでいた岩は、初めのうちは何も起きなかった。
 だがそう思っていた直後、岩の中心部に亀裂が生じる。

 そこから破片が飛び散る心配もなく、あっという間に岩は粉々に砕けてしまう。
 この力には正直驚いた。

 ルティの特製ドリンクが効いているということらしい。
 何となく、自分が相当強くなったのを実感出来た気がする。
 
 しかしルティとの実力差が不明なので、魔石を見て確かめておく。
 
 岩を粉砕したおれの力に驚いているのか、シーニャとフィーサは近付いて来ない。
 今が絶好の時だ。

 腰袋に入れていた複数の魔石に触れると、1つだけ微かに熱を感じる。
 もしや、レア確定のチャンスが訪れているのか。

 熱を帯びた魔石は、思った通り覚醒時の魔石だ。
 これを咄嗟に握りしめて、地面に投げた。

 投げたのは良かったが、いつもと様子が違う。
 素直にアイテムが現れてくれない。

 変だな……確かに熱を帯びているのに、ガチャが出来ていないなんて。
 首をかしげながら、フィーサたちの方を見ると何やら騒いでいる。

『マスター!! 魔物、大きな魔物~!!』
『ウーウウウー!! アック、でかい、でかい魔物!! シーニャでもムリ、ムリなのだ~!』

 ……ん? 魔物がどうしたんだ。
 フィーサとシーニャがギャアギャアと騒ぎながら、必死になって手招きをしている。
 
 彼女たちから視線を逸らして、魔石がある地面の方に向き直す。
 するとそこにいたのは、

『グルルルルゥゥ……!!!』

 へっ……?

 おおよそ人間では聞かない歯軋り。
 さらには、地面にポタポタと垂れるよだれのような音。

 ワータイガーであるはずのシーニャの怯えようが、尋常じゃない。
 魔石があるはずの場所にいたのは、見上げるほど大きなトカゲだ。

 本来ガチャをした直後に見える魔法文字からは、別の名前が示されている。
 タ……ルボサウルス? 

 何でこんなもんが……!?
 どうやら魔石そのものなのか、恐竜はおれをめがけて向かって来る。

 通じるか分からないが、拳で何とかするしか無さそうだ。
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