Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます！

第三章：スキルの覚醒

38.魔物姉さんとドワーフ娘

「あぁ、もうっ！　いい加減泣き止まないと、置いていきますわよ！！」
「アック様ぁぁぁ～あうぅぅ～」
「お元気で～などと気丈に振る舞っていたかと思えば、どれだけ小娘すぎるんだか……」
「だってお傍にいないんですよぉぉぉ～……スキュラさんだって、お傍にいて欲しいはずなのにぃぃ」
「あたしは、あの人から全て任されているって分かっているだけで納得していますわ。あなたのように泣くなど、あり得ないことですわ！　泣き止まないと、進むに進めないっていうのに」
「はぁぁうぅぅ……」

　アックと別れたルティ、スキュラのふたりは、森では無く道なりに進んでいる。
　顔を騎士国に知られているルティではあったが、スキュラの機転で格好を変えて難を逃れていた。
　
　行先はアックに言ったとおり、小さな町ルタット。
　森に向かわせたアックよりも、スキュラたちの方がかなり早く着くはずだったのだが……。

「全く、魔石の力で仲間となったからといって、そこまで好きになるものかしらね？」
「す、好きっっ！？　だ、誰がアック様のことをですか～！？」
「だから、小娘……ルティシア、あなたのことですけれど？」
「あ、わたしのことはルティでいいですよ、スキュラさん」
「スキュラ……でいいですわ。そうじゃなく、ルティがお好きなのでしょう？　あの人のことを」
「は、はい！？　い、いやぁ～、わたしなんてまだまだでしてぇ～」
「はぁ……まぁいいですわ。泣き止んでくれただけでも――！　ここまで離れても、人間は面倒な生き物ですわね。ルティ、あなたのお好きな拳を存分にお使いなさい！」

　アグエスタの門から離れ、数時間ほどが経つ。
　
　スキュラとルティは道なりに進んでいた。
　しかし、ルティが泣き止むまでにかなり時間を要してしまう。

　ようやくルティが泣き止むと同時に、彼女たちの後方にはしつこく追手が迫っていた。

「い、いいんですか～？」
「彼がいなくても、あたしに聞かなくても本能で動けばいいのではなくて？」
「分かりましたっっ！！　行きますよぉぉ！」

　追手は馬に乗った数人の騎士で、剣を抜いた状態でルティに襲い掛かる。
　だが、深々と被っていた外套を脱ぎ、

『させませんよぉ～！！』

　見た目がメイド服エプロンなルティが、分かりやすく声を張り上げる。
　そのまま騎士たちの頭上から、勢いよく拳を振り下ろしていた。

『――な、バカな……！？　剣が折れた！？』
『盾もだと！？　たかがドワーフごとき女が何故これほど』

　複数の騎士の剣が、ルティの拳で真っ二つに折れている。
　それと同時に、スキュラの蝕むしばみ魔法が発動。

　馬上から次々と、見えない何かによって振り落とされていく騎士。
　剣と盾を破壊された騎士たちが呆けていると、

『駄目ですよ？　いい加減、追いかけて来ても駄目なものは駄目なんです！！　ですから、お馬さんを逃がしたくなければ、パッパッと帰っちゃってください～！』

　ルティの説教？　を素直に聞き入れた騎士たちは、方向を見失いかけた馬に乗ってその場を離れた。
　
「……あんな程度で良かったのかしらね？」
「アック様なら、もっと優しくされたかなあと思ったんですけど、わたしは厳しくしちゃいました！」
「十分、手ぬるいと思いますわ……まぁ、いいですけれど」
「そんなわけなので、スキュラさん！　アック様が待つ町へ進みましょう～！！」
「フフ、あれだけ泣いていた小娘がどこに行ってしまったのかしらね」
「ではでは、行きますよ～！」