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第三章:スキルの覚醒

36.迷いの森のワータイガー

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 【Sレア アイアンプレート Lv.323】
 【Sレア アイアンブレード Lv.240】
 【Sレア アイアンクロスボウ Lv.501】
 【Uレア エンチャンター習得の書】

「……イスティさま」
「び、微妙だな。レアには違いないし、レベルは高いけど鉄って……。エンチャンターってことは、魔法付与出来るようになるのか。これはいいとしても……」
「妾に属性魔法を付けるの?」
「ああ、それが出来るかな。しかし……」

 レア確定ではあるが、何とも言えないラインナップ。
 変わったものを望みすぎなのかもしれないが、今はそれじゃない感が強い。

 ガチャをした魔石からは、大した熱さを感じられずにいる。
 そうなると、レア度に応じて魔石にも変化が見られることになるのだろうか。

 思わず魔石を手に、まじまじと眺めてしまう。
 おれの覚醒に関係なく、魔石ガチャの成長にも何かの条件があるのか。

 首をかしげながら思っていると、魔石に何かが当たる音が聞こえた。
 そして、

『魔石を持つ魔物め!! 災いをもたらそうとする前に、やっつけてやる!』

 ん……魔物?
 気付いた時にはすでに遅く、木々に紛れた複数の何かに囲まれていた。

「マスター! 妾を引き抜くの!!」
「ええ?」
「早くするのっ!」

 言われた通りフィーサを鞘から引き抜こうとしたが、

『動くなっ! 動けばその手を矢で撃ち抜くぞ!!』

 声を聞く限り女性のようだが、こちらの動きに相当警戒をしている。
 それほど大きくない魔石に矢を当てている時点で、実力はありそうだ。

「うー! 妾から動く~!!」
「待った。ガチャで出した物を使って応戦してみる。せっかく手元にあることだし」
「好きにすればいいの!!」

 フィーサを使えば事態は急転しそうだが、レアガチャで出た物を使うことにする。
 エンチャンターはすでに習得済みだが、これはひとまず使わないとして。

 アイアンブレードとプレートで、あちらからの矢を防ぐことが出来そうだ。
 クロスボウは矢が無いと使えそうにない。

 とにかくなりふり構わずに、アイアン装備一式を手にしてみた。
 普通の鉄よりは軽く、レベルも高いからか戦えそうな気がする。

『誰かは知らないが、見えない矢でもこのアイアンプレートには通じない!』
 これはおれなりのハッタリだ。

 木の矢程度であれば、確かにアイアンの敵にはならないだろうが。

『む~~!! 魔物のくせに生意気だぞ~!』

 声がすると同時に、火矢が左右から飛んで来た。
 しかしアイアンには通じず、跳ね返った火矢はそのまま地面に落ちる。

 よほどの高温でもない限りは、心配ない。
 相手の攻撃が矢だけだということは、狩猟族か。

『おれは魔物じゃない。そして攻撃する気も無い! だがこれ以上、火矢を射るつもりなら魔法で応戦するぞ!!』

 声を聞くに大人の集団では無さそうなので、脅し文句を放った。
 森を抜けるのが迷って、さらに進めなくなるのはまずいからだ。

『ほ、本当だな? い、行くぞ? 行くから魔石と鉄を捨てろ!!』
『捨てられないが、攻撃するつもりは無い!』

 森を守る者か、あるいは狩猟に来ていたところに出くわしたか。
 何にしても迷い森には違いない。

 フィーサはすっかりふてくされて沈黙。
 そんな中、おれの周りを囲むようにしながら、小さな獣の子供が近付いて来た。

 見たところ、虎人こじん族のようだ。
 声の主は女の子だったが、なかなか姿を見せない。

「おいっ! どこを見ている? こっちだ、こっち!」
「……ん?」
「お前の足下!!」

 おれの目線で周囲を確かめていたせいか、足下の気配に気づかなかった。
 足下といっても、そこまで小さくはない子が目の前に立っている。

「……きみが?」
「シーニャだぞ! 参ったか!」
「いや……」
「魔物のくせに口答えするな!! 魔石と鉄を今すぐ渡せ!」
「渡せないよ。そしておれは人間。魔物じゃない」
「うーうー!!」

 火矢の命中精度は高いものがあった。
 しかし思った以上に小さな女の子が目の前にいて、何かまくし立てている。

 獣の耳がせわしなく揺れていて、触れてみたい。
 が、今はそれどころじゃない。

 周りを囲む虎人族を見ると、幼い男の子ばかりだ。
 近くに村があるのか。

「おれはこの森に迷い込んでしまった人間。アックだ。君たちは虎人族か?」
「シーニャは、ワータイガーだ! こいつらとは違うぞ!」
「ああ、獣人か。それで、この森では何をしていたんだ?」
「村を探して……迷い込んで」
「迷った? それじゃあ、きみたちも迷い込んでしまったのか」
「……そこに魔物のお前が来た。魔物が持つ魔石を持てば、ここを出られるはずで……だから、さっさとよこせ~!」

 間違った知識を持っているようだが、魔石でガチャが出来る以上間違いでもないか。
 言葉を話すシーニャと名乗る女の子が、おれをずっと睨み続けている。

 虎人族を束ねているのかはさておいて、もう一度魔石ガチャで何とかするしかないのか。
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