36 / 577
第三章:スキルの覚醒
36.迷いの森のワータイガー
しおりを挟む【Sレア アイアンプレート Lv.323】
【Sレア アイアンブレード Lv.240】
【Sレア アイアンクロスボウ Lv.501】
【Uレア エンチャンター習得の書】
「……イスティさま」
「び、微妙だな。レアには違いないし、レベルは高いけど鉄って……。エンチャンターってことは、魔法付与出来るようになるのか。これはいいとしても……」
「妾に属性魔法を付けるの?」
「ああ、それが出来るかな。しかし……」
レア確定ではあるが、何とも言えないラインナップ。
変わったものを望みすぎなのかもしれないが、今はそれじゃない感が強い。
ガチャをした魔石からは、大した熱さを感じられずにいる。
そうなると、レア度に応じて魔石にも変化が見られることになるのだろうか。
思わず魔石を手に、まじまじと眺めてしまう。
おれの覚醒に関係なく、魔石ガチャの成長にも何かの条件があるのか。
首をかしげながら思っていると、魔石に何かが当たる音が聞こえた。
そして、
『魔石を持つ魔物め!! 災いをもたらそうとする前に、やっつけてやる!』
ん……魔物?
気付いた時にはすでに遅く、木々に紛れた複数の何かに囲まれていた。
「マスター! 妾を引き抜くの!!」
「ええ?」
「早くするのっ!」
言われた通りフィーサを鞘から引き抜こうとしたが、
『動くなっ! 動けばその手を矢で撃ち抜くぞ!!』
声を聞く限り女性のようだが、こちらの動きに相当警戒をしている。
それほど大きくない魔石に矢を当てている時点で、実力はありそうだ。
「うー! 妾から動く~!!」
「待った。ガチャで出した物を使って応戦してみる。せっかく手元にあることだし」
「好きにすればいいの!!」
フィーサを使えば事態は急転しそうだが、レアガチャで出た物を使うことにする。
エンチャンターはすでに習得済みだが、これはひとまず使わないとして。
アイアンブレードとプレートで、あちらからの矢を防ぐことが出来そうだ。
クロスボウは矢が無いと使えそうにない。
とにかくなりふり構わずに、アイアン装備一式を手にしてみた。
普通の鉄よりは軽く、レベルも高いからか戦えそうな気がする。
『誰かは知らないが、見えない矢でもこのアイアンプレートには通じない!』
これはおれなりのハッタリだ。
木の矢程度であれば、確かにアイアンの敵にはならないだろうが。
『む~~!! 魔物のくせに生意気だぞ~!』
声がすると同時に、火矢が左右から飛んで来た。
しかしアイアンには通じず、跳ね返った火矢はそのまま地面に落ちる。
よほどの高温でもない限りは、心配ない。
相手の攻撃が矢だけだということは、狩猟族か。
『おれは魔物じゃない。そして攻撃する気も無い! だがこれ以上、火矢を射るつもりなら魔法で応戦するぞ!!』
声を聞くに大人の集団では無さそうなので、脅し文句を放った。
森を抜けるのが迷って、さらに進めなくなるのはまずいからだ。
『ほ、本当だな? い、行くぞ? 行くから魔石と鉄を捨てろ!!』
『捨てられないが、攻撃するつもりは無い!』
森を守る者か、あるいは狩猟に来ていたところに出くわしたか。
何にしても迷い森には違いない。
フィーサはすっかりふてくされて沈黙。
そんな中、おれの周りを囲むようにしながら、小さな獣の子供が近付いて来た。
見たところ、虎人族のようだ。
声の主は女の子だったが、なかなか姿を見せない。
「おいっ! どこを見ている? こっちだ、こっち!」
「……ん?」
「お前の足下!!」
おれの目線で周囲を確かめていたせいか、足下の気配に気づかなかった。
足下といっても、そこまで小さくはない子が目の前に立っている。
「……きみが?」
「シーニャだぞ! 参ったか!」
「いや……」
「魔物のくせに口答えするな!! 魔石と鉄を今すぐ渡せ!」
「渡せないよ。そしておれは人間。魔物じゃない」
「うーうー!!」
火矢の命中精度は高いものがあった。
しかし思った以上に小さな女の子が目の前にいて、何かまくし立てている。
獣の耳がせわしなく揺れていて、触れてみたい。
が、今はそれどころじゃない。
周りを囲む虎人族を見ると、幼い男の子ばかりだ。
近くに村があるのか。
「おれはこの森に迷い込んでしまった人間。アックだ。君たちは虎人族か?」
「シーニャは、ワータイガーだ! こいつらとは違うぞ!」
「ああ、獣人か。それで、この森では何をしていたんだ?」
「村を探して……迷い込んで」
「迷った? それじゃあ、きみたちも迷い込んでしまったのか」
「……そこに魔物のお前が来た。魔物が持つ魔石を持てば、ここを出られるはずで……だから、さっさとよこせ~!」
間違った知識を持っているようだが、魔石でガチャが出来る以上間違いでもないか。
言葉を話すシーニャと名乗る女の子が、おれをずっと睨み続けている。
虎人族を束ねているのかはさておいて、もう一度魔石ガチャで何とかするしかないのか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
554
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる