18 / 577
第二章:魔石の秘密
18.ロキュンテの町、移動する。
しおりを挟む「――だから、一緒に来てもらいたい」
「あの人間たちを浄化なんて……。魔石に封じ込めたのか、魔石と化したのかなんてどっちでもいいですわ。水棲のあたしが、何故熱い所に行ってまで……という点が納得行きませんわね」
「おれも今すぐ魔石をたたき割りたいところだ。だけど加熱して消えるなら、それはそれでと思っている」
「……わ、分かりましたわ」
スキュラは一度魔石に魅了されていた。
それがあるからこそ、危険な物として恐れを抱くようになったのだろう。
「マスター、ロキュンテはいつ行くの?」
「フィーサは行ったことがあるかな?」
「うん! 500年くらい前にあるの。あそこの火口からの眺めは最高なんだよっ!」
「ごひゃ……そ、そうか」
フィーサのレベルは900だったが、900年は生きているってことだ。
それか今まで手にしていた奴が、使いまくったかのどちらかだろう。
ルティの故郷ロキュンテか。
詳しい場所はルティが分かるだろうが、計り知れない距離のような気もする。
手がかりはルティだけだ。
まずは彼女に聞いてみるしかない。
「アック様」
「ん、ヴァル? どうした?」
「あの魔石を、わたくしにお預け下さいませんか? アック様は魔石を腰袋にお入れになっていると思いますが、他の魔石と混ぜることには警戒を持つのです」
「何か悪さをするとでも?」
「……いいえ。魔石そのものには、自我を持つことはありません。ですが気になると止まらない性格でございまして、わたくしにお任せ頂ければと……」
魔法の師匠をしてもらっているバヴァルを、どこまで信じていいのか。
しかし知識量が上なのは明らかだ。
おれ自身も元勇者たちが封じられた魔石を傍に置くのは、気分的に嫌ではある。
ロキュンテに着くまでの辛抱にしとくか。
「そういうことなら、あなたに任せる」
「お言葉に甘えさせて頂きます」
そういうと、バヴァルは魔石を懐にある袋に入れていた。
彼女は本来、老齢の魔法士。
だがガチャで引いた時戻しの白いローブを身に着けたことで、妙齢の魔女となった。
ローブを着ている限りはお姉さんなわけだが……。
それはともかく、ルティに聞いてみなければ。
『ルティ!』
彼女は手持ち無沙汰になると、おれから離れている。
さらに言えば、いつでもどこでも何かを作ろうとしている。
案外、誰よりも強くあろうとしているのかもしれないが。
「はいっ! お呼びですか~?」
「火山渓谷の……キミの故郷であるロキュンテは、どれくらいかかる?」
「すぐですよ、すぐすぐ!」
「いや、ルティの感覚ではそうかもしれないが、火山渓谷は世界の裏側だ。決してすぐ行けるわけでは……」
「それなら簡単じゃないですか~! アックさんは、魔石ガチャでわたしを呼びましたよね?」
「呼んだというか、引いていたというか……」
ワイバーンと崩落の岩から隠れていたら、レア確定ガチャで彼女がそこにいた……が、正しい。
自分が気付くよりも前に、彼女がいたのだが。
「そこで! 移動魔法を使ってはどうでしょうか?」
「……移動魔法というと、高スキル魔法士が使える場所の転移魔法のことか?」
「ですですよっ! それなら、すぐに行けちゃいますよ~」
今のおれは、恐らくSランクよりも上の魔法スキルが備わっている。
しかし確か転移魔法には、面倒な条件があったはずだ。
「何の話をされているのです?」
「ヴァルは転移魔法は?」
「いいえ。わたくしはレザンス以外の町や国には、しばらく訪れておりませんので……」
やはりそうだ。
一度訪れでもしないと、そこに行くことなど不可能だ。
「スキルだけあっても……いえ、もしかすれば……」
「ん?」
「確かアック様がガチャで引いたのは、ルティシアさんと宝剣フィーサでしたか?」
「ああ、うん」
「それでしたら、やってみる価値はあるかもしれませんね」
「うん……?」
「いずれにしましても、ここから外に出ましょう。そして外の山……出来れば広大な場所で……」
話がまるで見えない。
だがバヴァルは何かの可能性を見つけたようだ。
おれたちは森のダンジョン捜索を諦め、外に出ることにした。
グルートオークが暴れたことで、先への道が塞がれたというのもある。
ルティは殴って進みましょうと言っていたが……。
外の森に出てすぐに、なるべく障害とならない広い場所を探す。
そこでルティを魔石に触れさせ、おれと手を繋いだ。
「な、何だかドキドキですよ~!」
そしてガチャを引いたのだが……。
【Uレア ルティの記憶】
【Uレア 剛力のルティ Lv.23】
【Uレア 火山渓谷ロキュンテ 残2】
『アックさん~! ロキュンテがここに来ましたよ~! わたしの故郷の方から来てくれました』
『……何だこれ』
ルティのレベルが上がっていたのも見えたが、問題は……。
ロキュンテの町ごとガチャで引いてしまったことだ。
転移魔法どころの話じゃないぞ、これは。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
554
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる