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第二章:魔石の秘密
17.火山渓谷を目指そう!
しおりを挟む「その魔石があの人間たちなのですか!?」
「あぁ、そうみたいだ。一応聞くけど、ダメージは無いよな? ルティ」
「痛みって何でしたっけ?」
「いや……だよな」
「はい~! アックさんもお元気そうで何よりですっ!」
前々から感じていたが、ルティの身体能力とか性格は、単なるおバ……。
最初のレアガチャで出た彼女には愛嬌も可愛げもあるし、まぁいいか。
ひとまずおれは、元Sランクパーティーの魔石を地面に置いた。
バヴァルいわく、おれの手に乗せたままでは魔力を吸いかねないのだとか。
「フンッ、それにしてもいい気味ですわね。あたしは元々人間が好きでは無かったですわ! しかも愛するアックさまをひどい目に遭わせていた連中なんて、魔石でも手ぬるいと思いますけど?」
「スキュラ的には納得がいかないか?」
「いきませんわね。アックさまは別として、途中で加わった魔女も気に入らないですし、ドワーフ娘は……どうでもいいですけれど」
水棲怪物スキュラの場合は、神殿の番人のようなことをしていたらしいし無理も無い。
魔石にはなったが、賢者テミドという人間の嫌な部分を垣間見たことが、関係しているのだろう。
バヴァルは魔石をジッと見つめていて、どういう考えなのか何となく聞きずらい。
「あ~あ……妾の出番が無かった~……せっかく起きたのに」
「フィーサには、あんな奴らを斬って欲しくなかった」
「そ、それだけ妾のことを大事に……!」
「もちろん、そうだよ」
「あぁぁっ! マスターイスティさま……ずっとずっと一緒にいたいの!」
「おれもそう思う。頼むよ、フィーサ」
「はぅぅ……」
ルティはさっぱりしていて嬉しそうにしている。
スキュラには人間に対する元々の嫌悪感があって抜け切れていないが、慣れていくしかない。
フィーサは、もっと大物相手にきっと役に立つはずなので、よしとする。
そして、ずっと考え事をしていたバヴァルが、ようやく口を開く。
「アック様。魔石をどうされますか?」
「ん~……元が勇者たちだから、あまりいい気分はしない。しかし魔石ということは、ガチャで使えるのは確かかな?」
「その通りです。ですけれど、今のままではたとえレア確定といえでも、何が出るかは……」
「邪気が残っていると?」
「アック様が引いた魔獣変化スキルですが、悪しき心を持っていれば怪物と化していたのは、否定出来ません」
何か特殊なスキルだとは思っていた。
しかし使いどころは分からなく、結局奪われてあんなことに。
限定召喚の竜たちも気にはなるが、まずは魔石の行方先を決めるのが先か。
ここはバヴァルの考えに従うか、もしくは……。
「その魔石を使われるおつもりでしたら、竜の息に近い熱さで浄化をするべきかと」
「竜の息?」
「アック様が吐き出された炎のブレスのことですわ」
「あ、そうか」
おれの口から炎を吐き出したんだった。
それに近い熱さの所に沈めるのか。
そんな所なんてどこにあるんだ。
「何かお困りですか? アックさん」
「ん? そうじゃないが、どこかに竜の炎に近い熱さの場所は無いかなと」
「そっ、それでしたら、ありますよ!!」
「心あたりでも?」
「フフッフフフ!! わたしの故郷ですよっ! お忘れですか?」
あぁ、そういえばそうか。
とんでもなく世界の裏側から、ガチャで引いてしまったんだったな。
「ロキュンテ! 是非ぜひぜひに! アックさんに来てもらいたいですっっ!」
「そ、そうだな」
すでに行く気なのか、ルティは手放しで大喜びを体現している。
おれが行くと言えば付いて来るだろうが、スキュラは行けるのか。
「……アック様。水棲の彼女には、あなた様が守っておやりになればよいかと」
「ヴァルも行く……んだよね?」
「もちろんです。魔石を何とかするのが、わたくしの務めでございます」
「そ、そうか」
一刻も早く……という距離では無さそうだが。
スキュラを説得して、火山渓谷を目指すとするか。
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