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第一章:生まれつきのスキル
10.魔法国と魔導書の変化
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「そうそう、こんな感じで手の平に魔力を集中させて……」
「こ、こうですか?」
「うん、筋がいいね! あんた。これなら今すぐにも魔導書を読むことが出来そうだ」
◇◇
ラクルの港から船に乗ったおれたちは、1日ほどの航海でたどり着く、魔法国レザンスにやって来た。
ついて早々、
『それは宝剣フィーサブロス……!? あんた、何者だい? どこから……いや、まずはギルドに来てもらおうかな」
特定のジョブを持たないおれは宝剣フィーサを背負い、水棲怪物であるスキュラを連れ歩いていたことで、いかにもな魔法士に声をかけられてしまう。
ルティは大きい樽を背負って歩いていたせいか、仲間では無く行商人として、別の意味で人だかりが出来ていた。
「ひぃぃええ~!? どうすればいいんですか~?」
「ギルドに行って来るから、そこで待ってて」
「分かりました~あぁぁぁ~これは売り物じゃありませぇん」
赤髪でドワーフな彼女はとても目立つのか、割と注目を集める傾向にある。
だがおれは、ルティ本人からはドワーフだということを聞いてはいない。
それをわざわざ聞くまでも無ければ言うほどでもないと、おれも彼女も思っている。
珍しい種族でもないが、女の子のドワーフで親しげだからだろう。
「ここが入り口だよ。さぁ、入って」
言われるがままに、魔法ギルドの部屋に入る。
魔法のことは当初、スキュラに教わろうとしていた。
しかし彼女の使用属性は、やはり水属性ばかり。
しかも教え方が分からないと言われてしまったので、今に至る。
「あたしだけなら使えるんですけれど、アックさまにお教え出来るようなスキルは、無かったですわ」
「そ、そんな……それは困ったな」
意気込んで教えようとしてくれた気持ちは嬉しかったが、言葉だけでは伝えられないのは厄介だった。
そんなわけで、結局スキュラもルティと同様に待機させた。
宝剣フィーサは、ずっと剣の姿のまま眠っている。
彼女曰くその時が来たら眠れなくなるから、今のうちにたくさん眠っておきたいらしい。
あながち間違いじゃなさそうだったので、フィーサを鞘から出すことは控えている。
『宝剣使いの……お名前は?』
『アック・イスティ。別に宝剣使いでは無くて……魔法を覚えたい』
『アックさん。まずはレザンスの魔法ギルドへようこそ! 私はギルドマスターのバヴァル・リブレイだよ』
『あ、どうも』
ギルドマスターと名乗っているが、部屋には他に誰もいない。
魔法の国ということは、魔法士向けの依頼がありそうなものだが……。
バヴァルと名乗った老齢な女性は、腰を低くしておれに対している。
ラクルに似て冒険者しかギルドを訪れないのかと思うくらい、部屋の中は寂れた状態だ。
『ところで、宝剣を手にしているということは、魔法剣を習得したいお考えですな?』
今のを聞く限り、どうやらフィーサは相当な剣らしい。
宝剣というだけでも目立つが、これまで長い間に英雄が手にしていたこともあるとしたら、確かに持っているだけで目を引く。
それだけに宝剣持ちというだけで、自然と魔法を覚えることになりそうだ。
魔法剣となると、元々のフィーサの強さに加えて属性を付与することになる。
そうなれば、何が来ても負けないだろうな。
「……む? アックさんには、すでに魔力が備わっておりますね」
「あぁ、それは前々から言われてますが」
「これまで魔法をその身に受けたことが?」
「一応、ありますね」
正確には、状態異常魔法で死にかけただけなんだが。
ついでに睡眠耐性も。
「それならば、当ギルドの魔導書に触れるだけで、適正の魔法スキルが覚醒するかと」
「魔導書? 適正の……?」
「アックさんは、まだこれといって決まった属性はお持ちでは無いでしょう?」
「そうですが……」
「どれ、手の平に魔力を集中させてごらんなされ」
「ぬぅぅ……!」
「ふむ、筋がいい。これなら問題なさそうだね」
強いて言えば魔石ガチャでレア確定だけど。
しかしガチャをしない時は、攻撃魔法の類は打てないし使うことも出来ない。
どうせなら自分の意思で魔法を打ちたいものだ。
どんな強力なものでも歓迎するし、とんでもない化け物クラスでも出たら嬉しい。
「こんな手の平で?」
「それを魔導書は判断するのです。あなたにとって、相応しい魔法スキルを導き出す……それが当ギルドの魔導書なのですよ」
「触れるだけでいいなら、ぜひ!」
「ではお待ちを」
そういうとバヴァルは、奥にある書庫から埃だらけの魔導書を持ってきた。
いや、絶対今まで使ったことないだろ。
「けほっ……では、表紙に手を」
「あ、あぁ、まぁ……ゴホッゴホッ」
これはひどい。
それでも触れるだけならと思い、古びた魔導書に触れてみた。
触れた途端、一瞬だったが熱のようなものを感じてしまう。
これはガチャ直後の魔石に似ている。
『――むっ!? 表紙の絵が……変化し始めた』
『えっ? 変化?』
魔導書の表紙の絵は、何かの英雄が描かれている。
しかも大勢の英雄が、どこかに向かって総攻撃をしているような感じだ。
「ふむ……適正が下されました。アックさん。あなたの魔法スキルは限定召喚、そして全属性、全精霊のスキルが覚醒しましたな。召喚に関して言えば、何かの触媒でもって強化されますでしょうな」
「召喚!? それに全属性に全精霊……? というか、限定召喚とは?」
「魔石をご存じかな?」
「ま、まぁ」
「アックさんが召喚をするには、魔石が必要となるのですよ。そして魔石を介した召喚は、何らかの力を限定的に現わすことでしょうな」
「……魔石」
「いずれにしても、全てにおける適正がなされた。アックさんには、ぜひとも宝剣に魔法を付与して欲しいものですな」
こんな簡単に……と言ってはいけないが、全属性が使えるなんて幸運すぎる。
召喚は外で試すしか無いが、依頼でも受けてやってみるか。
「こ、こうですか?」
「うん、筋がいいね! あんた。これなら今すぐにも魔導書を読むことが出来そうだ」
◇◇
ラクルの港から船に乗ったおれたちは、1日ほどの航海でたどり着く、魔法国レザンスにやって来た。
ついて早々、
『それは宝剣フィーサブロス……!? あんた、何者だい? どこから……いや、まずはギルドに来てもらおうかな」
特定のジョブを持たないおれは宝剣フィーサを背負い、水棲怪物であるスキュラを連れ歩いていたことで、いかにもな魔法士に声をかけられてしまう。
ルティは大きい樽を背負って歩いていたせいか、仲間では無く行商人として、別の意味で人だかりが出来ていた。
「ひぃぃええ~!? どうすればいいんですか~?」
「ギルドに行って来るから、そこで待ってて」
「分かりました~あぁぁぁ~これは売り物じゃありませぇん」
赤髪でドワーフな彼女はとても目立つのか、割と注目を集める傾向にある。
だがおれは、ルティ本人からはドワーフだということを聞いてはいない。
それをわざわざ聞くまでも無ければ言うほどでもないと、おれも彼女も思っている。
珍しい種族でもないが、女の子のドワーフで親しげだからだろう。
「ここが入り口だよ。さぁ、入って」
言われるがままに、魔法ギルドの部屋に入る。
魔法のことは当初、スキュラに教わろうとしていた。
しかし彼女の使用属性は、やはり水属性ばかり。
しかも教え方が分からないと言われてしまったので、今に至る。
「あたしだけなら使えるんですけれど、アックさまにお教え出来るようなスキルは、無かったですわ」
「そ、そんな……それは困ったな」
意気込んで教えようとしてくれた気持ちは嬉しかったが、言葉だけでは伝えられないのは厄介だった。
そんなわけで、結局スキュラもルティと同様に待機させた。
宝剣フィーサは、ずっと剣の姿のまま眠っている。
彼女曰くその時が来たら眠れなくなるから、今のうちにたくさん眠っておきたいらしい。
あながち間違いじゃなさそうだったので、フィーサを鞘から出すことは控えている。
『宝剣使いの……お名前は?』
『アック・イスティ。別に宝剣使いでは無くて……魔法を覚えたい』
『アックさん。まずはレザンスの魔法ギルドへようこそ! 私はギルドマスターのバヴァル・リブレイだよ』
『あ、どうも』
ギルドマスターと名乗っているが、部屋には他に誰もいない。
魔法の国ということは、魔法士向けの依頼がありそうなものだが……。
バヴァルと名乗った老齢な女性は、腰を低くしておれに対している。
ラクルに似て冒険者しかギルドを訪れないのかと思うくらい、部屋の中は寂れた状態だ。
『ところで、宝剣を手にしているということは、魔法剣を習得したいお考えですな?』
今のを聞く限り、どうやらフィーサは相当な剣らしい。
宝剣というだけでも目立つが、これまで長い間に英雄が手にしていたこともあるとしたら、確かに持っているだけで目を引く。
それだけに宝剣持ちというだけで、自然と魔法を覚えることになりそうだ。
魔法剣となると、元々のフィーサの強さに加えて属性を付与することになる。
そうなれば、何が来ても負けないだろうな。
「……む? アックさんには、すでに魔力が備わっておりますね」
「あぁ、それは前々から言われてますが」
「これまで魔法をその身に受けたことが?」
「一応、ありますね」
正確には、状態異常魔法で死にかけただけなんだが。
ついでに睡眠耐性も。
「それならば、当ギルドの魔導書に触れるだけで、適正の魔法スキルが覚醒するかと」
「魔導書? 適正の……?」
「アックさんは、まだこれといって決まった属性はお持ちでは無いでしょう?」
「そうですが……」
「どれ、手の平に魔力を集中させてごらんなされ」
「ぬぅぅ……!」
「ふむ、筋がいい。これなら問題なさそうだね」
強いて言えば魔石ガチャでレア確定だけど。
しかしガチャをしない時は、攻撃魔法の類は打てないし使うことも出来ない。
どうせなら自分の意思で魔法を打ちたいものだ。
どんな強力なものでも歓迎するし、とんでもない化け物クラスでも出たら嬉しい。
「こんな手の平で?」
「それを魔導書は判断するのです。あなたにとって、相応しい魔法スキルを導き出す……それが当ギルドの魔導書なのですよ」
「触れるだけでいいなら、ぜひ!」
「ではお待ちを」
そういうとバヴァルは、奥にある書庫から埃だらけの魔導書を持ってきた。
いや、絶対今まで使ったことないだろ。
「けほっ……では、表紙に手を」
「あ、あぁ、まぁ……ゴホッゴホッ」
これはひどい。
それでも触れるだけならと思い、古びた魔導書に触れてみた。
触れた途端、一瞬だったが熱のようなものを感じてしまう。
これはガチャ直後の魔石に似ている。
『――むっ!? 表紙の絵が……変化し始めた』
『えっ? 変化?』
魔導書の表紙の絵は、何かの英雄が描かれている。
しかも大勢の英雄が、どこかに向かって総攻撃をしているような感じだ。
「ふむ……適正が下されました。アックさん。あなたの魔法スキルは限定召喚、そして全属性、全精霊のスキルが覚醒しましたな。召喚に関して言えば、何かの触媒でもって強化されますでしょうな」
「召喚!? それに全属性に全精霊……? というか、限定召喚とは?」
「魔石をご存じかな?」
「ま、まぁ」
「アックさんが召喚をするには、魔石が必要となるのですよ。そして魔石を介した召喚は、何らかの力を限定的に現わすことでしょうな」
「……魔石」
「いずれにしても、全てにおける適正がなされた。アックさんには、ぜひとも宝剣に魔法を付与して欲しいものですな」
こんな簡単に……と言ってはいけないが、全属性が使えるなんて幸運すぎる。
召喚は外で試すしか無いが、依頼でも受けてやってみるか。
応援ありがとうございます!
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