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第11話 姉妹の逆襲 前編
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いま思えば、どうしてカナは妹のキイを必死に避けていたのだろうか。実家に帰らない理由こそ聞いたものの、そこまで逃げる必要なんて無かったはず。
今までそう思っていたわけだが――その意味がようやく分かった。
「すばるく~ん~! た~す~け~て~!!」
「えー……と」
「ぼさっと見てないで、あたしを助けておくれ~!」
「そんなこと言われても……仲良し姉妹を引き裂くなんてことは出来そうにないです」
そもそもちょっとでも近づこうとすれば、
「――あ? 変態ごときがお姉ちゃんに触れたらどうなるか……分かるよね?」
――などと、キイからの凄まじい圧力と睨みだけで何も出来ない俺がいる。まさかここまで溺愛していたなんて思わなかった。
姉妹同士がくっついて抱きしめ合ってる光景自体、何の不思議さも感じないが、何故よりにもよってここなのか。
あまり客がいないとはいえ、場所が場所だけにこのまま放置しとくのは非常に危険だ。殴られるのを覚悟で引き剥がすしかない。
「カナさん、失礼しますよ」
「むむっ? ひゃあぁ~!? だ、大胆よのぅ」
キイに触れるとその時点で殺られそうなので、カナの腰に手を回して勢い任せに俺の元に引き寄せた。
「はぁ? どういうつもり? 天近すばる!!」
「どうもこうも、そういうスキンシップは外でやるなよ……。お前がカナさんのことを好きなのは分かってるけど、度が過ぎるぞ、マジで」
「殴られたいの……?」
「俺じゃなくて、目の前のマシーンを殴れよ。それをやりに来たんだろ?」
何でこう大ごとになるんだ。溺愛にも程があるぞ。
「ちっ……うざ」
とか何とか言いながら、硬貨を入れてキイは目の前のマシーンに向かって拳を突き出し始めた。
キイの動きを固唾をのんで見守ろうとすると、耳元でカナが囁いてきた。
「(さぁさぁ、今のうちに逃げようじゃないか)」
「えぇ?」
「(キイちゃんの敵はマシーンに移ったから、今がとんずらチャンスだぜ)」
カナが良くても俺はどのみちボコられるのでは?
「え、でも……」
「とにかく、お部屋へレッツゴー」
部屋というのはもちろん俺の部屋のことだろう。カナを入れるとは一言も言って無いが、今はそうするしかなさそうだ。
かなり派手なパンチ音をさせるキイの隙をつき、俺とカナはその場を後にする。店を足早に出たところで、そこからはお互いに話す余裕も無いくらいに猛ダッシュしまくった。
「ゼハーゼハー……ハァッ、ハァッハァ、本当に無理……」
「ふはははー! これくらいで息を上げるなど情けないぞ、少年!」
「ゲホッ、ゲホゲホッ……いや、距離~……」
「あたしは体力には大いなる自信があるのだよ。声を出すには必要なことなのさ!」
アパートの部屋の前で膝に手をついて息を切らせる俺に対し、カナは腰に手を置いて胸を張ってどや顔を見せている。
あのゲームセンターからここまでかかった距離は走って数十分以上。バイトをしている俺でも普段走ることが無かっただけに、カナには何も言い返せなかった。
「というわけで、すばるくん! 部屋の中へと誘いたまえ!」
「……は~……い」
これが狙いだったのか?
俺を疲れさせれば断る気力も無くなって、自然と部屋へと入ることにつながるという……。そんな計算高い人だとは思いたくないのだが。
外で騒がしくしていても問題なので、素直に部屋の鍵を開けて中へ入ることに。
「ただいま帰ったぜ! 少年」
「お、おかえり……」
「うむうむぅ。そんなわけで、汗もかいたことだし着替えようじゃないか!」
息が整えだしたのもつかの間。俺よりも先に、カナは俺の部屋の中で堂々と上着を脱ぎだし始めた。
「ふぁっ!? な、何やってんの!!」
「生着替え。だが心配するでない! 裸になるつもりは毛頭ないから安心していいぜ!」
「当たり前だって!!」
「初々しいのぅ。それでこそ少年! それでこそあたしの計画が生きるというものだよ」
計画とか言い出してるが、一体カナは俺の部屋で何をしようとしているのか。
今までそう思っていたわけだが――その意味がようやく分かった。
「すばるく~ん~! た~す~け~て~!!」
「えー……と」
「ぼさっと見てないで、あたしを助けておくれ~!」
「そんなこと言われても……仲良し姉妹を引き裂くなんてことは出来そうにないです」
そもそもちょっとでも近づこうとすれば、
「――あ? 変態ごときがお姉ちゃんに触れたらどうなるか……分かるよね?」
――などと、キイからの凄まじい圧力と睨みだけで何も出来ない俺がいる。まさかここまで溺愛していたなんて思わなかった。
姉妹同士がくっついて抱きしめ合ってる光景自体、何の不思議さも感じないが、何故よりにもよってここなのか。
あまり客がいないとはいえ、場所が場所だけにこのまま放置しとくのは非常に危険だ。殴られるのを覚悟で引き剥がすしかない。
「カナさん、失礼しますよ」
「むむっ? ひゃあぁ~!? だ、大胆よのぅ」
キイに触れるとその時点で殺られそうなので、カナの腰に手を回して勢い任せに俺の元に引き寄せた。
「はぁ? どういうつもり? 天近すばる!!」
「どうもこうも、そういうスキンシップは外でやるなよ……。お前がカナさんのことを好きなのは分かってるけど、度が過ぎるぞ、マジで」
「殴られたいの……?」
「俺じゃなくて、目の前のマシーンを殴れよ。それをやりに来たんだろ?」
何でこう大ごとになるんだ。溺愛にも程があるぞ。
「ちっ……うざ」
とか何とか言いながら、硬貨を入れてキイは目の前のマシーンに向かって拳を突き出し始めた。
キイの動きを固唾をのんで見守ろうとすると、耳元でカナが囁いてきた。
「(さぁさぁ、今のうちに逃げようじゃないか)」
「えぇ?」
「(キイちゃんの敵はマシーンに移ったから、今がとんずらチャンスだぜ)」
カナが良くても俺はどのみちボコられるのでは?
「え、でも……」
「とにかく、お部屋へレッツゴー」
部屋というのはもちろん俺の部屋のことだろう。カナを入れるとは一言も言って無いが、今はそうするしかなさそうだ。
かなり派手なパンチ音をさせるキイの隙をつき、俺とカナはその場を後にする。店を足早に出たところで、そこからはお互いに話す余裕も無いくらいに猛ダッシュしまくった。
「ゼハーゼハー……ハァッ、ハァッハァ、本当に無理……」
「ふはははー! これくらいで息を上げるなど情けないぞ、少年!」
「ゲホッ、ゲホゲホッ……いや、距離~……」
「あたしは体力には大いなる自信があるのだよ。声を出すには必要なことなのさ!」
アパートの部屋の前で膝に手をついて息を切らせる俺に対し、カナは腰に手を置いて胸を張ってどや顔を見せている。
あのゲームセンターからここまでかかった距離は走って数十分以上。バイトをしている俺でも普段走ることが無かっただけに、カナには何も言い返せなかった。
「というわけで、すばるくん! 部屋の中へと誘いたまえ!」
「……は~……い」
これが狙いだったのか?
俺を疲れさせれば断る気力も無くなって、自然と部屋へと入ることにつながるという……。そんな計算高い人だとは思いたくないのだが。
外で騒がしくしていても問題なので、素直に部屋の鍵を開けて中へ入ることに。
「ただいま帰ったぜ! 少年」
「お、おかえり……」
「うむうむぅ。そんなわけで、汗もかいたことだし着替えようじゃないか!」
息が整えだしたのもつかの間。俺よりも先に、カナは俺の部屋の中で堂々と上着を脱ぎだし始めた。
「ふぁっ!? な、何やってんの!!」
「生着替え。だが心配するでない! 裸になるつもりは毛頭ないから安心していいぜ!」
「当たり前だって!!」
「初々しいのぅ。それでこそ少年! それでこそあたしの計画が生きるというものだよ」
計画とか言い出してるが、一体カナは俺の部屋で何をしようとしているのか。
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