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第二章 帝国と王国

第23話 戦闘育成都市

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「え? ギルドに誘われた? リナスさん、神官さまなのにいいんですか?」

 俺たちは雑貨屋にいたアグリッピナと再会することが出来た。
 雑貨屋は街の中心にありながらひっそりとしていて、大した物も置いていない。 

 他に客もいなく店主の姿も見えないので、とりあえずさっきまで獣人たちに囲まれ、ギルド勧誘されたことをアグリッピナに相談してみた。

 それなのに、

「いえ、そうじゃありませんよ。誘われたけどどうすればいいのかって話です。俺の話、聞いてました?」
「ピナ、リナスは困ってる。そういう話。分かった?」
「あ、あー! そういうことですね!」

 俺が説明したことをいまいち理解していないようで、カニャンが言って初めて理解したような顔をしている。

「それはですねー、ミケルーアが戦闘育成都市だからなんですよ! 旅の人だろうと冒険者だろうと育てたいって考えが根付いてましてー」
「育成都市……戦闘の?」
「はいー。ここは見てのとおり、獣人が多いところですから! みんな戦いたくてうずうずして……じゃなくて、血の気が多い人ばかりなんですよ」

 同じことだと思うが。

「では、ギルドに所属すると扱いが変わるという話はそういう意味なのですか?」

 話を聞いていたアルミドが、首をかしげながら割って入って来る。
 
「あれ? 猫のお姉さんということは、もしかしてカニャンちゃんの?」
「ええ、そうです。道中、カニャンがお世話になったそうでありがとうございます」

 そう言うとアルミドは深々と頭を下げた。

「お姉ちゃん違う。わたしがピナを助けた」
「そ、そうなのね」
「……ん」

 どっちかというとカニャンが正しいな。

 アグリッピナは地下洞では助けを求めて来たものの、集落では危険扱いされていたし、目を離すと何をしでかすか。

「いやー、カニャンちゃんがすごくてですねー!」
「……ほら、ね?」
「…………」

 アグリッピナの言動や行動には慣れてもらうしかない。
 俺もアグリッピナに話す時には遠慮しないようにしとこう。

「それはそうと、ピナ。この雑貨屋の店主は? 随分とひっそりしてるけど。それに君は錬金術師じゃなかった?」
「錬金術師は私じゃなくて、カンヘルさんですよ。私は調査隊だっただけで、錬金術ギルドには所属だけなのです。あ、おかげさまで属性鉱石をお届けすることが出来ました!」

 確か半竜のギルドマスターだな。
 所属してるだけなのに、怪しげな土やら何やらが作れるのか。

「……で、店主は?」
「ここにいるじゃないですか!」

 客もいなく、店主らしき者も見えない。
 いるのは腰に手を置き、のけ反ってしたり顔を見せている彼女だけ。

「もしかしなくてもピナが……?」

 王都門の兵もすんなり通していたし、王都では顔利きの人物なのか?

「ピナが店主とか、意外……」
「こ、こらっ、失礼ですよカニャン」

 猫姉妹も驚いているが、俺も開いた口が塞がらない状態。
 本人曰く戦えないらしいけど、アグリッピナは実はすごい人かもしれない。

「ふっふっふ! 王都のことは何でも知っていますから、私に何でもお任せ下さい!」
「……話を戻すけど、ミケルーアでは戦闘育成がメイン? だからギルド所属が決定事項な感じに?」
「そうなんですよ! どこでも構わないんですけど、どこかに所属すればスキルを磨くことが可能でして。カニャンちゃんなら、えーと……」

 育成に適しているなら、ここでカニャンを成長させられることになる。
 少なくともク・ベルハでやるよりはよっぽど。

「アグリッピナさん。帝国が軍事を起こすお話はご存じですか?」
「ええ? そんな話、聞いて無いですよー!」

 そんな話、初耳すぎる。
 もしかしてゾルゲンが使者として来た?

「不本意ですが、帝国からの命じで神殿の神官長と神殿騎士は、ミケルーアに出向きました。私はその話を聞き、同行こそしたのですが……」

 神殿長はともかく、ゾルゲン神官長がしてきたことを聞けば同意出来ない話だ。
 
 獣人を嫌うゾルゲンが王都をどうにかするという考えになっても、何ら不思議は無いとはいえ。

「だからここへ来たわけですか」
「……はい」

 帝国、それも神殿から出ることが無かったゾルゲンが急に来たのは、それが狙いか。

「リナス。わたし、強くなりたい。なって、リナスもお姉ちゃんも守りたい」
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