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額から滲み出る汗が、繰り返す激しい動きでメリンダの腹の上に落ちた。
俺を求めて何度も名前を呼ぶ彼女の声が色っぽく興奮する。
最後だ。今日で終わりだと思うと、すぐに終えてしまうのがもったいない。
どんなハードな要求にも娼婦のように応えてくれる都合のいいこの愛人は、もうすぐ他の男と結婚する。
乱れた息が落ち着いた後、メリンダが満足そうに俺の隣に体を横たえ首に腕を回してきた。
「今日は朝までいられるのよね?」
今日は大事な話があるから早く帰って来てほしいと妻から言われていた。
分かったと返事をしたが、妻には無理だったと言えば済む話だ。
「ああ。夜明け前には帰るけどな」
騎士という仕事がら、急に警邏に出なければならない状況はよくある。
いつも妻との約束が守れるとは限らない。
今日でメリンダとの関係が終わるんだ。
最後くらい長年の愛人との名残を惜しませてもらっても構わないだろう。
明日からは約束は守り、早く家に帰り、妻を大切にしようと思っている。
メリンダは俺を上から見下ろすと、嬉しそうに唇に吸いつき濃厚なキスをした。
*
10年前、俺が結婚して5年目の27歳だった頃、メリンダはまだ18歳で学園に通う学生だった。
当時、王都で貴族令嬢たちを狙った犯罪が多発していて、俺達騎士も王都の街を警邏していた。
昼間なら安心だという理由で気軽に単独で街に出る令嬢もいる。
危険な目に合わないよう、巡回するのも騎士の役目だった。
貴族街の裏通りで、人のいない路地に引き込まれるメリンダを見た。複数人の暴漢に無理やり連れて行かれたのだ。
警邏にあたっていた俺がその現場を発見し、犯人を風魔法で吹き飛ばし捕縛。メリンダを救った。
俺は騎士だが魔力も持っている。風を操る事ができるのだ。
町中ではこの力は他に被害を及ぼすので操るのが難しいが、現場は人のいない路地だった。
令嬢に感謝され、親である男爵からも個人的に褒美をもらった。
その事件から後、メリンダは俺に猛アタックしてくるようになった。
騎士団にしょっちゅう顔を出しては、好きだ好きだと言われ、刺しゅう入りのハンカチや手紙を渡された。
菓子や軽食を差し入れてくれ、その度、皆にひやかされた。
俺は結婚しているからと何度も断ったが、しつこくデートして欲しいと誘われた。
それを見かねた団長から注意されて、彼女は直接騎士団へは来なくなった。
久しぶりに街で彼女を見かけた時、自分から声をかけた。そして二人で茶や食事に行くようになった。
学園を卒業した後、メリンダは政略結婚するらしい。
好きでもない人と結婚しなければならないと聞かされた。
せめて初めては、好きな人に捧げたいと言われ、一度だけでいいからと懇願され関係を持った。
毎日、双子の育児で疲れ切っている妻と比べると、十代のメリンダの体は若く瑞々しかった。
ハリのある肌、有り余る十代の体力は俺を夢中にさせた。
『俺は、妻を愛しているから、君とは付き合う事はできない。体だけの関係だよ』
何度も彼女にそう言い聞かせた。
『大丈夫よ。私も一年後には結婚するし、婚約者がいる立場ですから』
秘密の関係は、リスクがある分リターンも多い。
自分に自信がわき、妻に優しくなれた。仕事もエネルギッシュにこなせ、手柄をあげることもできた。
相手は貴族令嬢だ。騎士であっても平民の自分とは身分が違う。自分の格が上がった気分になり、上等の女を抱ける優越感が得られた。
メリンダが結婚して彼女との関係は終わった。
けれどそれから3年が経ったとき、メリンダは王都へ帰って来た。
彼女は離婚して男爵家に戻ってきたのだった。
その後、俺達の関係はまた始まり、彼女と最初に会ってから既に10年が経過していた。
メリンダは王都に戻ってから男遊びが激しくなり、あらゆる男性と関係を持った。
離婚の原因も彼女の浮気らしい。
遊び歩いている彼女の噂は貴族たちの間に広まっていた。
俺は当時、商売女は抱かないようにしていた。性病が流行っていて、下手に感染でもしたらたまったもんじゃない。
メリンダが数多くの男たちと関係を持っている間は、彼女の誘いを断っていた。
男爵家に出戻りで帰ってきたメリンダは実家の居心地がよくないらしく再婚を考えているようだった。
誰とでも浮名を流している彼女は、再婚相手を探すのに苦労していた。
遊び人であるという噂を払拭するため、メリンダは男関係を整理しだした。
そして体の関係を持つ唯一の男として、俺に声をかけてきた。
半年前、彼女に再婚の話が持ち上がり、辺境に嫁ぐことが決まった。
もう社交界にいるのがしんどくなったとメリンダも言っていた。
そして20歳も年上で、大金持ちの辺境伯の後妻になる。
そろそろ頃合だなと感じていた俺達は最後の記念にと二人で男爵家の離れで抱き合った。
18歳のメリンダが28歳になり、27歳だった俺は現在騎士団の副団長を務める37歳になっていた。
俺を求めて何度も名前を呼ぶ彼女の声が色っぽく興奮する。
最後だ。今日で終わりだと思うと、すぐに終えてしまうのがもったいない。
どんなハードな要求にも娼婦のように応えてくれる都合のいいこの愛人は、もうすぐ他の男と結婚する。
乱れた息が落ち着いた後、メリンダが満足そうに俺の隣に体を横たえ首に腕を回してきた。
「今日は朝までいられるのよね?」
今日は大事な話があるから早く帰って来てほしいと妻から言われていた。
分かったと返事をしたが、妻には無理だったと言えば済む話だ。
「ああ。夜明け前には帰るけどな」
騎士という仕事がら、急に警邏に出なければならない状況はよくある。
いつも妻との約束が守れるとは限らない。
今日でメリンダとの関係が終わるんだ。
最後くらい長年の愛人との名残を惜しませてもらっても構わないだろう。
明日からは約束は守り、早く家に帰り、妻を大切にしようと思っている。
メリンダは俺を上から見下ろすと、嬉しそうに唇に吸いつき濃厚なキスをした。
*
10年前、俺が結婚して5年目の27歳だった頃、メリンダはまだ18歳で学園に通う学生だった。
当時、王都で貴族令嬢たちを狙った犯罪が多発していて、俺達騎士も王都の街を警邏していた。
昼間なら安心だという理由で気軽に単独で街に出る令嬢もいる。
危険な目に合わないよう、巡回するのも騎士の役目だった。
貴族街の裏通りで、人のいない路地に引き込まれるメリンダを見た。複数人の暴漢に無理やり連れて行かれたのだ。
警邏にあたっていた俺がその現場を発見し、犯人を風魔法で吹き飛ばし捕縛。メリンダを救った。
俺は騎士だが魔力も持っている。風を操る事ができるのだ。
町中ではこの力は他に被害を及ぼすので操るのが難しいが、現場は人のいない路地だった。
令嬢に感謝され、親である男爵からも個人的に褒美をもらった。
その事件から後、メリンダは俺に猛アタックしてくるようになった。
騎士団にしょっちゅう顔を出しては、好きだ好きだと言われ、刺しゅう入りのハンカチや手紙を渡された。
菓子や軽食を差し入れてくれ、その度、皆にひやかされた。
俺は結婚しているからと何度も断ったが、しつこくデートして欲しいと誘われた。
それを見かねた団長から注意されて、彼女は直接騎士団へは来なくなった。
久しぶりに街で彼女を見かけた時、自分から声をかけた。そして二人で茶や食事に行くようになった。
学園を卒業した後、メリンダは政略結婚するらしい。
好きでもない人と結婚しなければならないと聞かされた。
せめて初めては、好きな人に捧げたいと言われ、一度だけでいいからと懇願され関係を持った。
毎日、双子の育児で疲れ切っている妻と比べると、十代のメリンダの体は若く瑞々しかった。
ハリのある肌、有り余る十代の体力は俺を夢中にさせた。
『俺は、妻を愛しているから、君とは付き合う事はできない。体だけの関係だよ』
何度も彼女にそう言い聞かせた。
『大丈夫よ。私も一年後には結婚するし、婚約者がいる立場ですから』
秘密の関係は、リスクがある分リターンも多い。
自分に自信がわき、妻に優しくなれた。仕事もエネルギッシュにこなせ、手柄をあげることもできた。
相手は貴族令嬢だ。騎士であっても平民の自分とは身分が違う。自分の格が上がった気分になり、上等の女を抱ける優越感が得られた。
メリンダが結婚して彼女との関係は終わった。
けれどそれから3年が経ったとき、メリンダは王都へ帰って来た。
彼女は離婚して男爵家に戻ってきたのだった。
その後、俺達の関係はまた始まり、彼女と最初に会ってから既に10年が経過していた。
メリンダは王都に戻ってから男遊びが激しくなり、あらゆる男性と関係を持った。
離婚の原因も彼女の浮気らしい。
遊び歩いている彼女の噂は貴族たちの間に広まっていた。
俺は当時、商売女は抱かないようにしていた。性病が流行っていて、下手に感染でもしたらたまったもんじゃない。
メリンダが数多くの男たちと関係を持っている間は、彼女の誘いを断っていた。
男爵家に出戻りで帰ってきたメリンダは実家の居心地がよくないらしく再婚を考えているようだった。
誰とでも浮名を流している彼女は、再婚相手を探すのに苦労していた。
遊び人であるという噂を払拭するため、メリンダは男関係を整理しだした。
そして体の関係を持つ唯一の男として、俺に声をかけてきた。
半年前、彼女に再婚の話が持ち上がり、辺境に嫁ぐことが決まった。
もう社交界にいるのがしんどくなったとメリンダも言っていた。
そして20歳も年上で、大金持ちの辺境伯の後妻になる。
そろそろ頃合だなと感じていた俺達は最後の記念にと二人で男爵家の離れで抱き合った。
18歳のメリンダが28歳になり、27歳だった俺は現在騎士団の副団長を務める37歳になっていた。
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