旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾

文字の大きさ
上 下
44 / 60

 ※if この先のストーリーについて

しおりを挟む

作者より

拙作をお読みいただきありがとうございました。

この後、ifでバーナード元鞘編を上げます。
                               
 ※if この先のストーリーについて
ここまで私の作品(シリアス編)を読んでいただきありがとうございます。
この先のストーリーはifストーリーになります。
ちょっとしたポイントを押さえて読んで頂けたら幸いです。

ややこしくて申し訳ないのですが、まず『【バーナードside】 ソフィアの捜索』途中までお読みください。
そしてその先から最終話までのストーリーはいったん忘れて下さい。
そうすれば若干読みやすくなると思います。

注意点としては、元鞘ストーリーになりますので、苦手な方は回避推奨。
元鞘だろうがなんだろうがどんとこい!という方は是非お読み下さい。

『【バーナードside】 ソフィアの捜索』のエピソードは↓です。
(再度上げておきます)


******************************

その頃、バーナードの領地では


「何故彼女の居場所が分からないんだ?そんなはずがないだろう!」

バーナードが従者たちに対し怒りを露わにしていた。
マリリンが邸を去り、軍関係の仕事もひと段落した今、バーナードはやっとソフィアの捜索に集中できるようになった。
本腰を入れて彼女を捜し出そうとしていた。

邸の従者たちには領地内をくまなく探させた。彼女の実家にも使いをやり、行き違いがあったようで彼女の居場所を探していると聞いてみたが『離婚したという知らせがきただけで、今の居場所は知らない』と冷たくあしらわれた。

結婚してから彼女の実家との付き合いはなかった。
ソフィアの実家は伯爵家だった。しかしソフィアの両親は他界していて、今は叔父が爵位を継いでいる。
あまり親しく親戚付き合いはしていない関係だった。



「バーナード様、離婚は成立していますし、もう旦那様にできることはソフィア様に慰謝料を支払うことだけです」

私の何が何でもソフィアを見つけ出そうとする姿に、いい加減あきらめろと言わんばかりに、コンタンが告げる。

「そんなことは……わかっている」

「では、慰謝料の額ですがこちらでよろしいでしょうか」

コンタンは以前から用意していたのか、まとめられた書類を事務的に私の前に出してきた。
書類には、今までにソフィアが領地経営をして得た利益に、邸の資産価値の半分が上乗せされた莫大な金額が記されていた。

「こ、これ……こんなに多額になるのか」

「払えない額ではありません。それに心的ストレスに対する慰謝料も込みですので、妥当な金額ではないでしょうか」

確かに彼女に与えた精神的苦痛は計り知れない。できることなら、直接謝罪したい。二度と彼女に辛い思いをさせないと誓うから戻って来いと。
もし、ソフィアが私とマリリンの関係を男女間のそれだと勘違いしているなら、はっきり潔白だと言わなければならない。

マリリンたち親子に使われていた費用がなくなった。ケビンの父親のデクスターに、今までマリリンたちに費やした費用の倍額を請求した。
彼らにはアーロンを責任もって育てると念書を書かせ、定期的に報告する義務を課した。
私たちを騙した罪の代償として、ケビンは相続権を剥奪される。
マリリンは一生、外に出られないよう拘束し、監禁するようにと命じた。
デクスターは五十を疾うに過ぎた男だったが、力はまだ漲っていた。体力に物を言わせて事を行う豪腕は、彼女にとって恐怖でしかないだろう。
そしてその男の妻として、マリリンは今後、彼専用の奴隷として生きて行くことになる。

私の邸の使用人も、序列の守れない者を首にした。

邸の経済状況は、悪化しているわけではなく、かなり上向きの方向にある。
それはサイクスの繊維業が膨大な利益を上げているからだった。

払えない額ではない。

「この慰謝料をソフィアに支払う」

私は書類を見つめてコンタンに伝えた。
彼は大きく頷いた。

「ただし条件がある。直接私が彼女に渡すか、それが叶わないなら慰謝料について彼女との話し合いを求める」

コンタンは眉間にしわを寄せ、私に視線を向けると、はぁ、と大きくため息をついた。

コンタンはソフィアの居場所を知っていると思われる。
ガブリエルは、自分は居場所を知らされていないという。
邸に古くから仕えていてくれるモーガンやダミアはソフィアの居場所を知っているが、教えられないと言われた。私がマリリンに騙されている間に彼らの信用を失ってしまったのだ。

彼らは私の邸で働いている使用人達だ。私の命令を聞かないとなればいつだって首にできる。しかし、自らが招いた失態に対して彼らを責めるのは筋違いだと分かっているからそれはできない。

今回の件も、彼らが動いてくれなければ大変なことになっていただろう。
そうでなければ、私はあのままマリリンたち親子を邸に住まわせ、妻であるソフィアを蔑ろにして、アーロンに家督を譲っていたかもしれない。

全ては私の過ちだった。

けれど、ソフィアは戦時中もずっと私を待っていてくれた。そこに愛はあったはずだ。
もう一度、もう一度だけチャンスを与えてほしい。

何としてもソフィアの居場所を自分で突き止めてみせると、バーナードは固く拳を握った。




あれから何度もコンタンと話をしたが、結果的に知り得た情報は、彼女たちは国外に出国し今は平民として暮らしているということだけだった。

住所はコンタンも分かっておらず、彼女の居場所を知るのはステラ王女だけだという。慰謝料はステラ王女経由でソフィアに渡る予定だと説明された。
流石に王女には直接話を聞けない。謁見を申し出るも叶わなかった。そして間もなく王女は隣国の王子と結婚し、国を出てしまう。

ステラ王女殿下がこの国からいなくなれば、ソフィアの行方は二度と掴めないだろう。

何日も考えた。

執務室の彼女の席を見ながら、彼女の残した丁寧に書かれた帳簿の数字を指でなぞった。
食堂で味気ない食事をとりながら、テーブルを挟む、向かいの誰もいない空間を見つめた。
眠るベッドの冷たい右側をそっと撫で、そこにソフィアの体温を探した。

そしてある夜、私は気が付いた。

そうだ、彼女とともに消えた彼女の侍女がいたはずだ。

「確か……名前は……ミラ」

ソフィアの行方を追うより、メイドのミラの方を捜せばもしかしたら……




******************************





しおりを挟む
感想 788

あなたにおすすめの小説

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

【完結】貴方の傍に幸せがないのなら

なか
恋愛
「みすぼらしいな……」  戦地に向かった騎士でもある夫––ルーベル。  彼の帰りを待ち続けた私––ナディアだが、帰還した彼が発した言葉はその一言だった。  彼を支えるために、寝る間も惜しんで働き続けた三年。  望むままに支援金を送って、自らの生活さえ切り崩してでも支えてきたのは……また彼に会うためだったのに。  なのに、なのに貴方は……私を遠ざけるだけではなく。  妻帯者でありながら、この王国の姫と逢瀬を交わし、彼女を愛していた。  そこにはもう、私の居場所はない。  なら、それならば。  貴方の傍に幸せがないのなら、私の選択はただ一つだ。        ◇◇◇◇◇◇  設定ゆるめです。  よろしければ、読んでくださると嬉しいです。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...