プロローグで主人公が死んでしまう話【アンソロジー】

ゴディ

5最終話

処刑場は、民衆の怒りと憎しみが渦巻く場所となっていた。広場には数百人もの人々が集まり、自分の処刑を見届けようと詰めかけていた。

「贅沢ばかりしやがって！」
「お前のせいで、俺の家族は飢え死にしたんだ！」

彼らの顔には怒りと憎しみが浮かび上がり、口々に私を罵る声が響き渡っていた。
もう自分には何も残されていないと感じた。
自分が国民から愛されていると信じていた。しかし、その考えは誤りであったことに気づく。
今では国民は私を憎み、私の処刑を望んでいるのだ。

私は、自分の罪を真摯に受け止め、償うための処刑を受け入れることを決意する。
自分の過ちを認め、国民に対して謝罪し、死をもって償わなければならない。

処刑台に立ち、民衆に目を向けた。その中に、かつて自らが虐げた元王子妃カトレアの姿があった。彼女は処刑場の片隅に立ち、冷静な表情で私を見つめていた。
カトレアの姿を見た瞬間、私の心には一瞬の動揺が走った。

あれほど必死に捜しても見つからなかった彼女が、こんな時にこの場所に現れた。
カトレアの姿は、己の過去の悪行を鮮明に思い出させた。
体は震え、涙が溢れてきた。最期に皆の記憶に残る私の姿がそれでは情けない。

しっかり背筋を伸ばして、顔を上げて正面を睨みつけた。悪人は最後まで悪人であるべきだ。
動揺を隠し、私は再び冷酷な表情を取り戻した。

もう言葉さえも交わせないこんな状態で、彼女を見付けてしまうなんて、神様は意地が悪いな。

私の人生は全て間違いだらけだった。

民衆の怒りは最高潮に達しており、私の悪事を決して忘れず、報いを受けるその時を待ちわびていた。私はただ自分の運命を受け入れるしかないという冷酷な現実が存在した。

処刑台の上で、私は一瞬だけ空を見上げた。そこには、かつて自分が支配していた国の広がりがあった。しかし、その美しい空も、風景も、今や何の意味も持たなかった。私の運命は、ここで終わるのだ。

私は最期の瞬間まで感情がない表情を崩さなかった。
処刑人が剣を振り上げると、民衆の声は一瞬静まり返った。そして、剣が振り下ろされると同時に、歓声とともに怒りの怒号が再び響き渡った。

私の人生は、幕を閉じた。


もう一度、人生をやり直せるなら、今度はきっと間違えないのに。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　完