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第27話
しおりを挟む「浮気していたことは認めます。慰謝料も支払います。けれど、夫婦間での話し合いをしたい」
「美鈴様は離婚に応じられるまでは話し合うつもりはないとおっしゃっています。ここまで完璧な証拠があり、3年も奥様を騙していたわけですから離婚に応じるべきです」
「子どもは……雄太はどうなる。雄太の親権は俺が取る。妻は収入がないだろう。経済的にも安定している私が雄太の親権を取ります。それなら離婚に応じます」
「御存じかとは思いますが、3歳児の親権は母親の方になることがほとんどです。夫は仕事に行っていて世話ができないでしょう。それとも仕事を辞めるか時短勤務にしますか?祖父母と同居されますか?今までの育児は積極的に参加していましたか?」
「それはこれから考えます」
「では訴訟ですね。法定離婚事由はご主人の浮気です。裁判で認められる浮気を立証できる証拠が十分あります。離婚や慰謝料の請求を拒否しても、判決で離婚や慰謝料の請求が認められるでしょう。そうすれば、ご主人の意見は関係なく離婚をして慰謝料を支払ってもらうことになります。親権もそのとき母親側に移るでしょう」
「妻への経済的援助はしません。子供の養育費も支払いません。それでもいいのなら親権も渡しましょう」
「はい。合意ですね」
「……は?」
「奥様は、失礼。美鈴さんは養育費はいらないとおっしゃっています。ですのでこれで合意です」
「そんな……生活が苦しくなるだけだ。離婚の慰謝料だけで暮らせてもせいぜい数年。子どもの幸せを一番に考えたら定職にもついていない妻が子育てしていけるはずがない。国からの補助やパート収入だけで息子に貧しい生活をさせるなんてありえないでしょう」
「それなら十分な養育費をあなたが支払えばいいではないですか」
「まったく話が通じない」
「それでは、合意という事で書類を作成いたします。奥様は正社員で仕事をしていらっしゃいますし、収入も十分あります。住まいもちゃんとした所にあり、子育てする環境も整っています」
「お、俺は雄太の父親だ。親としての権利があるだろう!」
「もちろん面会はできるでしょう。面会請求したいのでしたら、養育費くらいちゃんと支払ってあげたらいかがですか?」
「私も弁護士を頼みます。それまではこの話を先には進めません」
「分かりました。それでは弁護士が決まり次第連絡お願いします。ひと月以内にお返事いただけますようお願いします。急いで下さい。訴訟になって会社にバレてしまうのは困るでしょうから」
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