22 / 31
第22話 夫の人生
しおりを挟む《雄一side》
「久しぶりに、雄太を遊びに連れて行ってやろうと思ってるんだ。今度の日曜は雄太、お出かけしような」
ここ最近は美鈴との夫婦関係は円満だ。
家にも早く帰っているし、雄太とも一緒に遊んでやっている。
美鈴は満足だろう。
「どこに連れて行きますか?パパとお出かけできるなんて雄太は喜ぶと思います」
「動物園へ行こうと思っているから、準備を頼むよ」
愛梨はずっと雄太に会いたいと言っていた。
彼女と会える時間が減ってしまい、休日はずっと家族サービスばかりだったから少し拗ねているようだった。
そろそろ愛梨も構ってやらないと可哀そうだ。
「ああ。君は留守番してくれてかまわない」
「そうですか」
「いつも、雄太の世話を一人でしてくれているからな。たまにはゆっくりすればいい」
「ゆっくりさせてもらうわ。ありがとう」
ものわかりの良い妻は扱いやすくて楽だ。
雄太もそろそろ愛梨に慣れていってもらわなくてはならない。いろんな大人に遊んでもらえて雄太も喜ぶだろう。
「暑くなりそうだから、帽子を持っていかなくちゃね」
美鈴はそういうと食べ終わった食器をキッチンに運んだ。
妻の作る夕飯は俺好みの味付けで、毎日食べても飽きがこない。
外食ばかりで偏り気味だった食生活も改善され、最近なんだか体の調子が良くなった。
この生活を手放すと考えると少し惜しい気がする。
「美鈴は家の事もよくやってくれているし、感謝してるよ。俺は幸せだよ」
美鈴は、ふふっ、と笑った。
しっかり妻を褒めておくことも忘れない。
美鈴は勉強もできるし、真面目でしっかりした性格だ。容姿も整っている。
俺の子を産んでくれる母体としては申し分ない。
一途で俺に頼り切る彼女を守ってやらなければと思い結婚を決めた。
けれど、子どもができてからは子ども中心に物事を考えるようになり、夫である俺を蔑ろにしだした。
生意気な態度は癪に障る。
一気に愛梨に気持ちが傾いていき、妻を女として見られなくなった。
一生一緒に暮らすことを考えると、美鈴では物足りない。
なかなか上手くいかないもので、可愛く俺に甘えてくる愛梨は子供を産む事ができなかった。
仕方がないから、雄太ともう一人くらい子どもができれば妻と離婚して愛梨と子供達で新しい家庭をつくろうと思っている。
540
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。


あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる