浮気夫、タイムリープで地獄行き

おてんば松尾

文字の大きさ
上 下
17 / 31

第17話

しおりを挟む

雄一さんは何事もなかったかのように普通に帰宅した。
私が家にいなかったことにも触れてこなかった。

誕生日に朝帰りをした謝罪も言い訳もなかった。

私は極力彼と顔を合わせないようにした。
いつも夫の朝食の準備をしていたが、頼まれない限りは今後一切作る気はない。
夕飯もしかりだ。言われなければ用意しない。

夫はATM。それ以外の何でもない。

誕生日から5日が経った頃、雄太へのプレゼントらしい包みがダイニングテーブルに置いてあった。
誕生日当日でも翌日でもなく、まさかの5日後?有り得ない。


これをそのままごみ箱に捨てたい気分だったが、離婚の際、妻がプレゼントを捨てたと言われたら心象が良くない。
こちらに不利となる可能性があるので仕方なく雄太に渡した。

大きな電車のおもちゃセットだった。
たくさんのレールパーツが入っていた。
誰が組み立てるんだろう。
そんな事を思いながら一応スマホに写真を撮っておいた。




「夕飯を食べてないんだけど……」

夫が9時前に帰宅してそんな事を言い出した。

「必要な時はラインで知らせて下さい。雄一さんは外食がほとんどですから、いるかいらないかが分からないので準備していません」

「毎日用意するのが妻の役目だろう」

は?何を言ってるのこの人。

「毎日食べてくれますか?用意したら食べて下さいね。責任もって食べてくれるなら用意します」

「それは……忙しい時もあるから絶対食べるとは言い切れない」

「自分で作れば?」

夫は私がそう言うとは思っていなかったのだろう。
一瞬、驚いたように目を見開いたが、その後無言で自室に入って行った。

これで夫は当分家で食事するとは言わないだろう。
楽になったわと思った。



それからも夫との関係は険悪で、そのまま数カ月が過ぎていった。
こんな状態で、私たちは家族と言えるのだろうか。

雄太にも良い影響を与えていないと思う。
せめて挨拶くらいはしなければならないだろう。

そう思っていた矢先に、たまたま早起きした雄太が雄一さんに。

「パパ、はよ」

と言った。

『パパおはよう』だ。
子どもの方が大人よりも何倍も偉いなと思った。

雄一さんは雄太の頭を撫でて「おはよう雄太」と言って出勤して行った。

彼の背中が心なしかしゃきっとして見えた。嬉しそうだった。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...