幸せだよと嘘をつく~サレ妻の再生計画~

おてんば松尾

文字の大きさ
上 下
26 / 28

第26話

しおりを挟む

雪乃は綾ちゃんとスペイン料理を出すバルに来ていた。
ちょうど一年前、全てはここから始まった。

「本当に長い戦いでしたね。雪乃先輩も、ドロドロにはまりまくってましたよね。やっと落ち着いた感じですか?」

「そうね、やっと生活リズムが整ったって感じかな。離婚してからの半年は仕事と引っ越しとでバタバタしてた。あっという間だったわ」


「結局、康介さんと離婚しましたね。元サヤあるかのとか思ったんですけどね」

「一応離婚しないための契約期間は満了してから離婚した。契約を破ったのは康介だったしね。自業自得ってところだわ」

「けど、ご主人の離婚しないって強い意志は本物だったと思います。下半身が緩すぎっていうのは問題でしたけど」

「見境なくってわけではなかったけど、意志が弱すぎだったわね。結局私の事を甘く見ていたのよ」

「一番最初に、スッパリ離婚していれば、こんなに揉めずに被害も最小限で食い止められたのに、残念でしたね」

「そうね。まぁ、私も伴侶を失って、戸籍にバツが付いた。お金は手に入ったけど、今現在恋人がいる訳でもない。結構精神的にもキツかったわ」

「雪乃先輩の周りには、前島課長や、小林大地さんみたいなイケメンがいたのに、色っぽい関係に発展しなかったですね」

「私ってモテないのよね。現実世界で妻にするより、床の間に飾って置きたい人形タイプなんですって」

雪乃は冗談っぽく笑った。

「なんなんですかそれ、そもそも現代の家の間取りで床の間なんてありませんから。和室はいらないです。ダニが湧くし、全部フローリングに限ります」


「そうね……掃除しやすいのが一番ね」

なんか話の流れが家の間取りになっている。
突拍子もない方向へ進む綾ちゃんの話は面白いから時間が経つのも早い。



「まぁ、今どき離婚なんて珍しくもなんともないんですから、前向きに独身ライフを楽しんで下さい。それと、30歳おめでとうございます」


「ありがとう。新しい人生の始まりよ」


雪乃は気分もよく店を後にした。


あれから、真奈美さんの親が大地さんへの慰謝料を肩代わりしたようだ。
孫をずっと押し付けられ、娘の尻拭いまでさせられた真奈美さんのご両親は、彼女を実家から追い出したらしい。


結局、康介とはうまくいかず真奈美さんは一人になった。
彼女は今どこで何をしているのかは知らない。



康介は、会社を辞めて独立したと風の噂で聞いた。


私たちが住んでいたマンションは引き払ったようだ。
もう、東京にはいないのかもしれない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

婚約破棄した令嬢の帰還を望む

基本二度寝
恋愛
王太子が発案したとされる事業は、始まる前から暗礁に乗り上げている。 実際の発案者は、王太子の元婚約者。 見た目の美しい令嬢と婚約したいがために、婚約を破棄したが、彼女がいなくなり有能と言われた王太子は、無能に転落した。 彼女のサポートなしではなにもできない男だった。 どうにか彼女を再び取り戻すため、王太子は妙案を思いつく。

結婚するので姉様は出ていってもらえますか?

基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。 気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。 そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。 家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。 そして妹の婚約まで決まった。 特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。 ※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。 ※えろが追加される場合はr−18に変更します。

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

伯爵令嬢は、愛する二人を引き裂く女は悪女だと叫ぶ

基本二度寝
恋愛
「フリージア様、あなたの婚約者のロマンセ様と侯爵令嬢ベルガモ様は愛し合っているのです。 わかりませんか? 貴女は二人を引き裂く悪女なのです!」 伯爵家の令嬢カリーナは、報われぬ恋に嘆く二人をどうにか添い遂げさせてやりたい気持ちで、公爵令嬢フリージアに訴えた。 彼らは互いに家のために結ばれた婚約者を持つ。 だが、気持ちは、心だけは、あなただけだと、周囲の目のある場所で互いの境遇を嘆いていた二人だった。 フリージアは、首を傾げてみせた。 「私にどうしろと」 「愛し合っている二人の為に、身を引いてください」 カリーナの言葉に、フリージアは黙り込み、やがて答えた。 「貴女はそれで構わないの?」 「ええ、結婚は愛し合うもの同士がすべきなのです!」 カリーナにも婚約者は居る。 想い合っている相手が。 だからこそ、悲恋に嘆く彼らに同情したのだった。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

処理中です...