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第23話
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約束の半年になる。
離婚はしないというあの契約書の期限だった。
康介はよく耐えたと思う。
彼はただの遊びの関係が、ここまで深い爪痕を残すなんて思ってなかっただろう。
そして約半年かけて、康介は真奈美さんとの不倫関係を清算した。
彼は全てが終わったと思っている。
「康介さん。今日はディナーを予約しているのよ。誕生日の翌日予約していたスカイレスト、ランシャノアールに6時よ」
「それはまぁ、雪乃が行きたいのなら勿論付き合うけど、ちょっと悪趣味だなと思うよ」
康介さんは苦笑する。
誕生日の翌日予約していたホテルのディナー。
この離婚問題は、あの日そこから始まったのだから、同じ場所で終わらせようと思った。
「個室を予約したからゆっくり食事を楽しみましょう」
「俺に対する戒めだな。けど、これは俺たち夫婦の門出を祝う食事だと思って、記念に堪能するよ」
「一生忘れられないディナーになるのは間違いないでしょうね」
雪乃は背中の空いた綺麗な黒のワンピースを着た。
フォーマルな装いは今夜の勝負服だ。
誰もが振り返る程、美しく妖艶に見える雪乃の姿に康介も目を奪われている。
『さぁ、断罪の始まりよ』
***************
個室に通されると、そこには小林大地さんと、真奈美さんが座っていた。
康介は驚いて私を振り返る。
「初めまして、真奈美の元夫の小林大地です」
「……」
言葉が出ない康介の代わりに雪乃が挨拶する。
「わざわざお時間をいただきありがとうございました。夫の康介です。真奈美さんも来ていただけて良かったです」
「……ええ」
真奈美さんには、望みのものを与えられるから来てほしいと頼んでいた。
彼女は別れた夫がいることに不満を隠しきれない様子だ。
「いったいどういうことなんだ?雪乃、ちゃんと説明してほしい」
「ええもちろんよ。取り敢えず、席に着きましょう。話はそれからよ」
小林さんが、僕がワインを選びましょうと言い、注文をした。
ソムリエが退出してから、雪乃は話し始めた。
「今日の集まりは、皆で思っていることを嘘偽りなく語り合い、新しい生活を歩んでいく為のものよ」
「そうです。僕と雪乃さんで企画しました」
「君たちは知り合いなのか?いったいどういうことなんだ」
「では、僕が先に説明させてもらいますね」
「お願いします」
雪乃は大地さんに進行を任せた。
「僕は真奈美と結婚してから、一度も浮気をした事はありません。単身赴任でしたが家族は仲良く、子どもたちは可愛かった。勿論妻を愛していました」
「そ、そんな事はもうどうでもいいでしょう!私たちは離婚が成立しているわ」
真奈美さんが焦ったように大地さんの話を止めようとする。
「そうだね。この度、元妻から、子どもたちの親権を取り戻し、私が引き取って育てる事になりました」
「え!そうなのか?」
康介が驚いて真奈美さんを見た。
「そうよ、私は子持ちじゃなくなった」
真奈美さんはなぜか自信に満ちたような顔でそう言った。
まるで子供がいなくなったことを喜んでいるかのようだ。
「真奈美は、育児を親任せにして、殆ど子供たちの面倒を見てこなかった。私は現在会社を退職し、家業を手伝うために東京に戻っています。今は毎日、彼女の実家に通い子供たちに会っています。来週から私の実家でやっと子供と暮らす事ができます」
「子供をよこせって煩かったし、大地さんは造り酒屋の長男よ。跡継ぎなの。子供達も贅沢に暮らせた方が幸せだと思って、私は子供を手放したの」
「お子さんは、元、ご主人に育てられた方が幸せでしょうね。ブログのためだけに子育てしているふりをしていたお母さんと生活するよりよっぽどいいと思います」
雪乃は真奈美に嫌味を言う。
「子供も産んだことないくせに!知ったような口をきかないで」
「いったいどういうことなんだ?」
初めて聞く話に説明を求める康介。
「真奈美さんはご主人が浮気をしていると言っていたけど、大地さんは浮気なんてしていなかった。彼女は康介に嘘をついていたのよ」
「なんだって!何年も旦那の浮気に苦しんできたって言ってたじゃないか」
「単身赴任なんだから、浮気してると思っただけよ。してないっていても真実は分からないでしょう」
開き直った彼女の態度は、非常に不快だ。
「真奈美の言っている意味が分からないよ。浮気をしているでしょうと疑われた事だって一度もなかったし、そんな事実はない。そもそも僕は君を裏切った事なんてなかった」
落ち着いた大地さんの声色が真奈美さんを追い詰める。
真奈美さんが大地さんに罪を着せて、悲劇のヒロインぶってると思うと反吐が出る。
「とにかく、真奈美さんの嘘をここで証明したの」
それに康介さんはまんまと騙されていた。
「わざわざ、そんな事を今更俺に知らせなくても、もう終わった事なんだからいいだろう」
「そうでもないわ」
「そうよ、まだ終わっていないわ!私は今日、康介と雪乃さんが離婚するって聞いてここまで来たのよ」
「なんだって?離婚なんてしない。俺たちはこれから新しくまた夫婦生活を始めるんだ」
「それは無理な話だわ」
雪乃はハッキリとそう告げた。
離婚はしないというあの契約書の期限だった。
康介はよく耐えたと思う。
彼はただの遊びの関係が、ここまで深い爪痕を残すなんて思ってなかっただろう。
そして約半年かけて、康介は真奈美さんとの不倫関係を清算した。
彼は全てが終わったと思っている。
「康介さん。今日はディナーを予約しているのよ。誕生日の翌日予約していたスカイレスト、ランシャノアールに6時よ」
「それはまぁ、雪乃が行きたいのなら勿論付き合うけど、ちょっと悪趣味だなと思うよ」
康介さんは苦笑する。
誕生日の翌日予約していたホテルのディナー。
この離婚問題は、あの日そこから始まったのだから、同じ場所で終わらせようと思った。
「個室を予約したからゆっくり食事を楽しみましょう」
「俺に対する戒めだな。けど、これは俺たち夫婦の門出を祝う食事だと思って、記念に堪能するよ」
「一生忘れられないディナーになるのは間違いないでしょうね」
雪乃は背中の空いた綺麗な黒のワンピースを着た。
フォーマルな装いは今夜の勝負服だ。
誰もが振り返る程、美しく妖艶に見える雪乃の姿に康介も目を奪われている。
『さぁ、断罪の始まりよ』
***************
個室に通されると、そこには小林大地さんと、真奈美さんが座っていた。
康介は驚いて私を振り返る。
「初めまして、真奈美の元夫の小林大地です」
「……」
言葉が出ない康介の代わりに雪乃が挨拶する。
「わざわざお時間をいただきありがとうございました。夫の康介です。真奈美さんも来ていただけて良かったです」
「……ええ」
真奈美さんには、望みのものを与えられるから来てほしいと頼んでいた。
彼女は別れた夫がいることに不満を隠しきれない様子だ。
「いったいどういうことなんだ?雪乃、ちゃんと説明してほしい」
「ええもちろんよ。取り敢えず、席に着きましょう。話はそれからよ」
小林さんが、僕がワインを選びましょうと言い、注文をした。
ソムリエが退出してから、雪乃は話し始めた。
「今日の集まりは、皆で思っていることを嘘偽りなく語り合い、新しい生活を歩んでいく為のものよ」
「そうです。僕と雪乃さんで企画しました」
「君たちは知り合いなのか?いったいどういうことなんだ」
「では、僕が先に説明させてもらいますね」
「お願いします」
雪乃は大地さんに進行を任せた。
「僕は真奈美と結婚してから、一度も浮気をした事はありません。単身赴任でしたが家族は仲良く、子どもたちは可愛かった。勿論妻を愛していました」
「そ、そんな事はもうどうでもいいでしょう!私たちは離婚が成立しているわ」
真奈美さんが焦ったように大地さんの話を止めようとする。
「そうだね。この度、元妻から、子どもたちの親権を取り戻し、私が引き取って育てる事になりました」
「え!そうなのか?」
康介が驚いて真奈美さんを見た。
「そうよ、私は子持ちじゃなくなった」
真奈美さんはなぜか自信に満ちたような顔でそう言った。
まるで子供がいなくなったことを喜んでいるかのようだ。
「真奈美は、育児を親任せにして、殆ど子供たちの面倒を見てこなかった。私は現在会社を退職し、家業を手伝うために東京に戻っています。今は毎日、彼女の実家に通い子供たちに会っています。来週から私の実家でやっと子供と暮らす事ができます」
「子供をよこせって煩かったし、大地さんは造り酒屋の長男よ。跡継ぎなの。子供達も贅沢に暮らせた方が幸せだと思って、私は子供を手放したの」
「お子さんは、元、ご主人に育てられた方が幸せでしょうね。ブログのためだけに子育てしているふりをしていたお母さんと生活するよりよっぽどいいと思います」
雪乃は真奈美に嫌味を言う。
「子供も産んだことないくせに!知ったような口をきかないで」
「いったいどういうことなんだ?」
初めて聞く話に説明を求める康介。
「真奈美さんはご主人が浮気をしていると言っていたけど、大地さんは浮気なんてしていなかった。彼女は康介に嘘をついていたのよ」
「なんだって!何年も旦那の浮気に苦しんできたって言ってたじゃないか」
「単身赴任なんだから、浮気してると思っただけよ。してないっていても真実は分からないでしょう」
開き直った彼女の態度は、非常に不快だ。
「真奈美の言っている意味が分からないよ。浮気をしているでしょうと疑われた事だって一度もなかったし、そんな事実はない。そもそも僕は君を裏切った事なんてなかった」
落ち着いた大地さんの声色が真奈美さんを追い詰める。
真奈美さんが大地さんに罪を着せて、悲劇のヒロインぶってると思うと反吐が出る。
「とにかく、真奈美さんの嘘をここで証明したの」
それに康介さんはまんまと騙されていた。
「わざわざ、そんな事を今更俺に知らせなくても、もう終わった事なんだからいいだろう」
「そうでもないわ」
「そうよ、まだ終わっていないわ!私は今日、康介と雪乃さんが離婚するって聞いてここまで来たのよ」
「なんだって?離婚なんてしない。俺たちはこれから新しくまた夫婦生活を始めるんだ」
「それは無理な話だわ」
雪乃はハッキリとそう告げた。
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