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第22話
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雪乃は弁護士に頼み真奈美さんのご主人に連絡を取ることにした。
そして康介が帰宅するまでの時間、真奈美さんのご主人である小林大地さんとオンラインで話し合う時間を持った。
「私が真奈美さんと夫から聞いた話は、小林さんがずっと浮気をしていたということです。その悩みを康介に相談するうちに、二人は深い仲になったと説明されました」
「僕は浮気なんてしていない。真奈美が嘘を言っているのは確かだけど、それに河津さんのご主人は騙されているのか、それとも二人で雪乃さんを騙しているのか僕には分かりません」
小林さんは憔悴しきっているようだった。
妻に裏切られたあげく子供を奪われたのだ。
夫の康介がした事だけど、雪乃は申し訳ない気持ちになった。
「小林さんの不倫に対して、主人が嘘を言っているようには見えませんでした。けれど……私は夫の嘘を見抜けません。不倫していた事も気がつかなかった妻ですので」
「それを言うなら、僕も同じですから。情けないです」
「お互い辛いですね」
同じ立場で傷をなめ合っているだけでは駄目ですねと大地さんは苦しそうに笑った。
一番恐れていることは、子供たちと会えなくなる事だと彼は言った。
自分は子供を愛しているし、できれば引き取りたい。けれど、ずっと妻と一緒に暮らしてきた子供たちが、自分と共に暮らせるはずがないと。
「僕の場合は、子どもを彼女に渡したくはなかった。けれど育児をできるかと言われたら、仕事をしながらやれる自信はなかった。子供のためだと思い、彼女に親権を渡したんです。子供に罪はないので、成人するまでは養育費も払い続けると約束しました」
「真奈美さんに対する不倫の慰謝料は請求されなかったんですね」
「雪乃さんのご主人から300万受け取ったので、私はそれで十分でした。真奈美から金を取れば、生活費が減り、子供たちに影響しますのでしませんでした」
「私は真奈美さんから慰謝料を受け取ったのですが、それはご主人が支払っていると聞きました」
「いいえ、私は払っていません。真奈美が支払ったと聞きました」
私への慰謝料の出どころは、多分康介だと確信した。
「今も、夫は真奈美さんと関係を続けているかもしれません」
雪乃はその可能性は大きいと感じた。
「ぶしつけな質問ですが、何故ご主人は雪乃さんとの離婚を拒否されるのでしょう?」
「愛しているからだと彼は言います。けれど行動が伴っていない」
「ご主人は、真奈美に脅されているのかもしれません。家庭を壊した責任を取れとか、そう言った感じで無理に関係を続けさせられているのかも」
「それって、拒否できますよね?もう彼女との浮気は私にバレていますし、今更彼女に対して責任を取る必要はないはずです」
「確かにそうですね。情があるとか、愛情が残っているとかでしょうか?確かめる必要がありますね。僕も、正直真奈美が僕の浮気をでっちあげていた事に驚いていますし、もしご主人がその言葉を信じてしまっていたとしたらいい気はしない。真実を突き止めたい」
「確かめる必要がありますね」
「作戦を練りましょう」
「はい」
私たちは協定を結んだ。
*******************
「真奈美さんはそれで納得したんだ」
「ああ。俺は妻とは離婚しない。真奈美に気持ちはないと理解してくれた」
「子供さんが気の毒だわね。あなたも子供さんには会った事があるでしょう」
「子供たちは俺の子じゃない。育てる義務はない」
子供に罪はない。それは当然だ。
けれど康介がここまではっきりと真奈美さんの子供の事を拒否するのに違和感がある。
康介はいったい何を考え、彼の真意は何処にあるんだろう。
「雪乃、契約を交わした日から計算して、君の浮気は後1ヶ月で終わる」
「そうね」
「契約通り、ちゃんと彼との関係を清算してくれ」
康介は前島さんの事を言っているのだ。
もう、そんなものはとっくの昔になくなっているのに。
「大丈夫よ。約束だから、きちんと終わらせるわ」
「ああ……また、昔のように幸せな夫婦関係に戻ろう」
愛し合う夫婦ではない。
幸せな夫婦。
けれどあなたは『幸せだよ』と嘘をつく。
そして康介が帰宅するまでの時間、真奈美さんのご主人である小林大地さんとオンラインで話し合う時間を持った。
「私が真奈美さんと夫から聞いた話は、小林さんがずっと浮気をしていたということです。その悩みを康介に相談するうちに、二人は深い仲になったと説明されました」
「僕は浮気なんてしていない。真奈美が嘘を言っているのは確かだけど、それに河津さんのご主人は騙されているのか、それとも二人で雪乃さんを騙しているのか僕には分かりません」
小林さんは憔悴しきっているようだった。
妻に裏切られたあげく子供を奪われたのだ。
夫の康介がした事だけど、雪乃は申し訳ない気持ちになった。
「小林さんの不倫に対して、主人が嘘を言っているようには見えませんでした。けれど……私は夫の嘘を見抜けません。不倫していた事も気がつかなかった妻ですので」
「それを言うなら、僕も同じですから。情けないです」
「お互い辛いですね」
同じ立場で傷をなめ合っているだけでは駄目ですねと大地さんは苦しそうに笑った。
一番恐れていることは、子供たちと会えなくなる事だと彼は言った。
自分は子供を愛しているし、できれば引き取りたい。けれど、ずっと妻と一緒に暮らしてきた子供たちが、自分と共に暮らせるはずがないと。
「僕の場合は、子どもを彼女に渡したくはなかった。けれど育児をできるかと言われたら、仕事をしながらやれる自信はなかった。子供のためだと思い、彼女に親権を渡したんです。子供に罪はないので、成人するまでは養育費も払い続けると約束しました」
「真奈美さんに対する不倫の慰謝料は請求されなかったんですね」
「雪乃さんのご主人から300万受け取ったので、私はそれで十分でした。真奈美から金を取れば、生活費が減り、子供たちに影響しますのでしませんでした」
「私は真奈美さんから慰謝料を受け取ったのですが、それはご主人が支払っていると聞きました」
「いいえ、私は払っていません。真奈美が支払ったと聞きました」
私への慰謝料の出どころは、多分康介だと確信した。
「今も、夫は真奈美さんと関係を続けているかもしれません」
雪乃はその可能性は大きいと感じた。
「ぶしつけな質問ですが、何故ご主人は雪乃さんとの離婚を拒否されるのでしょう?」
「愛しているからだと彼は言います。けれど行動が伴っていない」
「ご主人は、真奈美に脅されているのかもしれません。家庭を壊した責任を取れとか、そう言った感じで無理に関係を続けさせられているのかも」
「それって、拒否できますよね?もう彼女との浮気は私にバレていますし、今更彼女に対して責任を取る必要はないはずです」
「確かにそうですね。情があるとか、愛情が残っているとかでしょうか?確かめる必要がありますね。僕も、正直真奈美が僕の浮気をでっちあげていた事に驚いていますし、もしご主人がその言葉を信じてしまっていたとしたらいい気はしない。真実を突き止めたい」
「確かめる必要がありますね」
「作戦を練りましょう」
「はい」
私たちは協定を結んだ。
*******************
「真奈美さんはそれで納得したんだ」
「ああ。俺は妻とは離婚しない。真奈美に気持ちはないと理解してくれた」
「子供さんが気の毒だわね。あなたも子供さんには会った事があるでしょう」
「子供たちは俺の子じゃない。育てる義務はない」
子供に罪はない。それは当然だ。
けれど康介がここまではっきりと真奈美さんの子供の事を拒否するのに違和感がある。
康介はいったい何を考え、彼の真意は何処にあるんだろう。
「雪乃、契約を交わした日から計算して、君の浮気は後1ヶ月で終わる」
「そうね」
「契約通り、ちゃんと彼との関係を清算してくれ」
康介は前島さんの事を言っているのだ。
もう、そんなものはとっくの昔になくなっているのに。
「大丈夫よ。約束だから、きちんと終わらせるわ」
「ああ……また、昔のように幸せな夫婦関係に戻ろう」
愛し合う夫婦ではない。
幸せな夫婦。
けれどあなたは『幸せだよ』と嘘をつく。
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