幸せだよと嘘をつく~サレ妻の再生計画~

おてんば松尾

文字の大きさ
上 下
13 / 28

第13話

しおりを挟む

真奈美さんは自分のSNSのアカウントを簡単に雪乃に教えた。


馬鹿でもなければ、自ら不倫の証拠なんて提示しない。
この人は、自分の不倫の写真をわざわざ妻である私に見せたいんだ。
雪乃はそう確信した。

「これが証拠になって、あなたは私から慰謝料請求されるかもしれません」

「それも覚悟の上です。だいたい200万くらいが上限ですよね。1年の不倫ですし。けれど、それは康介さんが払うと言ってくれているので。もう、私には何もできません」

この女の慰謝料を、康介が……支払うの?
嘘でしょう。

「康介とはまだ付き合いが続いているのですか?」

「あの日、エグゼホテルのディナーのときに別れました。康介さんは奥様に関係がバレたので別れると言っていました」

「ホテルのディナーを……もしかして康介と一緒に食べました?」

「はい。最後の晩餐と言いますか、もうお別れだという事で一緒に食事をしました」

離婚を切り出したあの日、彼女に別れを告げに行くと焦ってマンションを飛び出して、エグゼホテルでディナー?食べたの?
信じられない。

「……嘘でしょう」


「ホテルのレストランで、奥さんにスマホを壊されたから、もう連絡ができないと康介さんが言っていました。彼は私の番号を記憶してませんし、今は連絡が取れません」

いや、もうとっくにスマホのデータは復活してるし。
連絡を取ることは可能だろう。

しないのであって、できないわけではない。

「ひとつだけ、大事なことを聞きますね。真奈美さんは、現在のご主人と離婚して康介と一緒になりたいと思っていますか?」

「……ううっ……それは……私には子供がいます。離婚はできません。けれど、康介さんは私にとって一番大事な人で、今でも愛しています。もし、もし……奥様との離婚が成立し康介さんが独身になったら、私は夫と離婚してでも、彼と生きていきたいと思っています」

「は?」

もはや、驚きを通り越して悪寒がする。

「ごめんなさい……ううっ……正直な気持ちです。本当に申し訳ありません」

彼女は泣きながらテーブルに突っ伏してしまった。もうなんか、わざとらしいというか、演技ですよね、としか言いようがない。呆れて物が言えないとはこういう事だと思った。

真奈美さんが泣いている間に、スマホで彼女のSNSを確認した。
アカウント名は『MANA=KOU』1年前に作られている裏垢だ。

行ったレストラン、泊まったホテル。旅行した温泉宿。もらったプレゼント。
私は急いでアカウント情報を綾ちゃんにラインで送って、証拠を確保して貰う。

綾ちゃんはこういった作業は得意だ。
スクショ案件は全て完璧にこなす。

あとから真奈美さんが削除しても、綾ちゃんが魚拓で残す。





もう、完全に終わったわ。

康介さん、あなた地雷女を引き当てたわね。






************************



雪乃は今日の事は康介に話さないと決めた。


弁護士を雇って、彼女を訴えるつもりだ。

もう、事を荒立てず穏便に済ますという考えは雪乃にはなかった。

彼女から宣戦布告されたんだから、なにも遠慮する事はないだろう。



徹底的にやっつける。





準備期間が必要だった。
弁護士を雇い、証拠を揃えなければならない。

康介との話し合いも何度かしなくてはならないだろう。

真奈美さんは慰謝料を支払い謝罪をすればそれで事は終わると思っている。
彼女は自分がしたことを軽く考えすぎている。


康介とは3年夫婦として過ごしてきた。
彼は策士だし、頭もキレる。

けれど、そんな彼が選んだ相手が、子持ちの真奈美さん?
康介はいったい何を思っているのかが知りたかった。

なぜ?どうして?理由はあるはずだと思った。

ただの浮気で遊びの関係の真奈美さんの方が私より優れていたのか。
もう女として雪乃を見られなくなったのか。

真奈美さんの言うことを全て信じれば、康介はまだ真奈美さんのことを愛していて別れたくないと心の中で思っているはずだ。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

婚約破棄した令嬢の帰還を望む

基本二度寝
恋愛
王太子が発案したとされる事業は、始まる前から暗礁に乗り上げている。 実際の発案者は、王太子の元婚約者。 見た目の美しい令嬢と婚約したいがために、婚約を破棄したが、彼女がいなくなり有能と言われた王太子は、無能に転落した。 彼女のサポートなしではなにもできない男だった。 どうにか彼女を再び取り戻すため、王太子は妙案を思いつく。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

心を失った彼女は、もう婚約者を見ない

基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。 寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。 「こりゃあすごい」 解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。 「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」 王太子には思い当たる節はない。 相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。 「こりゃあ対価は大きいよ?」 金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。 「なら、その娘の心を対価にどうだい」 魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。

結婚するので姉様は出ていってもらえますか?

基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。 気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。 そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。 家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。 そして妹の婚約まで決まった。 特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。 ※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。 ※えろが追加される場合はr−18に変更します。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...