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最終章 ~最強の更に先へ~
第134話 聖物の意志②
しおりを挟むロック……ワード……?
『ロックワード殿は『人』でありながら我ら魔物と共にいた。あの方がいれば、『人』と魔物が殺し合う機会も減っていただろうに……』
「いいや、『人』と魔物は永遠に殺し合う運命。あいつのくだらない思想は、どの道実現しなかった」
『お前がいたからなあ!』
餓者髑髏は叫ぶと、剣を振り上げた。
剣に水が纏わりつき、大きな剣となった。
「――『天雷』」
騎士団長が餓者髑髏の水の大剣に雷を落とす。
雷が水の大剣に当たった瞬間、餓者髑髏は剣を振り下ろす。
電気を纏った重い一撃が盟主に直撃する。
盟主は炎の巨腕で受け止める。
しかし電気は炎では受け止められなかった。
「ぐっ……」
餓者髑髏の水は蒸発し、それと同時に盟主の右腕も消えた。
餓者髑髏が剣を振り上げると、雨の一粒一粒が短剣の形を取り、盟主に降り注いだ。
圧倒的だ。
餓者髑髏×騎士団長。
1人でもオレに匹敵する腕の持ち主だというのに、2人の力が合わさり、その実力は倍以上に跳ねあがっていた。
聖物の意志も関係しているのか? 騎士団長の動き、魔法の威力が依然と比べ、格段に上昇している。餓者髑髏にも匹敵する実力だ。
「――『雷乱斬』」
追撃として、騎士団長が無数の短い雷を雨のように降らせる。
「――『塔森』」
盟主の周りにいくつもの突起物が生えた。
鉄……まではいかないけど、多少なりとも鉄は含んでいるようだ。大部分は土だが。
それでも、地面と繋がっている以上、避雷針としての役目は果たしている。しかし――
餓者髑髏の雨が、それらを打ち壊す。
この天気も2人に味方している。餓者髑髏が敵じゃなくてよかったなぁ……。
「ちっ……。――『地海』」
その瞬間、盟主は地面に溶けるように消えた。
電気も、雨も通らない。
そして地面の下から
「――『泥棘』」
いくつもの鋭い棘が突き出してきた。
盟主がここら一帯を焼いたおかげで、辺りは泥だらけ。だから技名が泥なのか。
餓者髑髏は間一髪で回避できたが、騎士団長は左足にその攻撃を受けた。
防備をしていたためか、ダメージは……。
その瞬間、騎士団長は地面に引きずり込まれそうになった。いや、左足が地面に埋まっている。
「身動きが……」
そこへ更に追撃を仕掛けようと盟主が魔法を放った瞬間、
「――『水龍瀑布』」
餓者髑髏がその場で剣を振り下ろした。
それに合わせ、上空から大量の水が落下した。
轟音と共に水は着地し、地面を大きく揺らした。
魔法で作り出した水のため、辺りが水浸しになることはなかった。
そして、地面の中から盟主が飛び出してきた。
「ふーー……ふーー……」
騎士団長と餓者髑髏の前に、盟主は打つ手なしか。
「ふむ……なるほどな……。――『魂裂』」
『……』
――ビキッ!
餓者髑髏《がしゃどくろ》の顔に、大きな罅が走った。
何が? 盟主は『こんれつ』といった。これが何を指すのかはわからない。
ただ、れつは裂だろう。
裂……裂く。
英語だったらよかったのだが、オリジナル魔法や三賢者死後に開発された魔法だったら、日本語なのだが。
ああ、三賢者誕生前に生み出され、僅かに受け継がれた魔法も英語じゃないな。
ともかく!
裂く……餓者髑髏の顔を裂いた? こんはなんだ?
棍、混、魂……。
候補が多すぎる。
『何を……!』
「秩序を保つ聖物があったとしても、やはりこれはお前の過失だなぁ。餓者髑髏よ」
『くっ……』
徐々に罅は広がり……止まった。
その形は、以前あった餓者髑髏の痣の形と同じだった。
偶然? いや、何かしらの関連性はあるとみていいな。
「お前が行ったのは修復ではない。空いた穴に入った異物を取り出しただけだ」
『この程度で私はやられはしないぞ』
「仕方あるまい。集めるのに苦労したのだが……。――『魂食』」
盟主は両手に白い光の珠を出現させた。
そしてそれを……
――食べた。
両手の光の珠を食べ終わると、盟主は
すぅーー……と、息を吐いた。
顔はすまし顔だ。
特段、何も変わった感じはない。
纏うオーラ、魔力量……何も変わっていない。
だが、ここにいる全員の勘が訴えかける。
――こいつはまずい。
「――『雷電球』」
『――『水槍』』
騎士団長が電気の球を、餓者髑髏《がしゃどくろ》が水の槍を放つ。
しかし、
「――『魔法干渉』 ――『排除』」
2人の放った2発の魔法は、盟主に当たる直前で消滅した。
今まで何度も盟主が放った言葉だが、大して効果は為さなかったはずだ。
それに、今2人の放った魔法はちゃんと魔力が練られていた。
今までの盟主なら、消すことはできなかったはずだ。
何が変わった?
目に見えず、探知できない何か……隠れステータス的な何かが上昇したのか?
「私は何も変わっていないさ。ただ、封じていた力を解き放ったまでよ」
一人称が我から私に変わってんじゃん。
封じていた力? 厨二秒かって。
『ふん……』
駿の十八番、『排除』。オレも似たような……まるっきり最下位互換なら使えるが。
あれは……このレベルの戦場じゃ、意味がない。
「――『雷獣軍』」
『――『白波兎』』
上空の雨雲から、雷の塊が盟主に降り注ぐ。それは獣の形をしていた。
降り注ぐ雨や、地面の水たまりの水が兎のような形を取った。餓者髑髏の剣からも生み出し続け出される。
兎なんて……ああ、餓者髑髏は三賢者の時代より前に生き(?)てたのか。
兎なんて、名称が決まっていない生物をそう呼べば、兎になる。実際、それは兎というより、ネズミに似ていた。
手数で押し切るつもりか。
駿なら捌けるだろうけど、借り物の力で駿レベルの実力を発揮できるはずがない。
「くっ……」
雷獣が盟主に当たると放電する。
兎が盟主に当たると兎は弾け飛ぶ。
「――『台風目』」
盟主を中心に豪風が吹く。先ほどとは比べ物にならない風速だ。
雷獣も兎も吹き飛ばされた。
『「――『爆散』」』
2人揃って同じ詠唱?
盟主の体に纏わりついていた僅かな電気がスパークし、盟主を包む。
盟主の体に纏わりついていた僅かな水が、盟主を締め付ける。
「ぐあぁあああああ」
パワーアップしたと思ったが、餓者髑髏《がしゃどくろ》と騎士団長の前には些細な変化だったようだな。
「――『電網』」
騎士団長……ではなく、盟主が放った。
電気の網だ。けど……大きすぎる! 高さが人の5倍はある。避けようがない。
網だから攻撃は流れていくだろうしな。
「――『雷斬』」
騎士団長が剣に電気を纏い、振り下ろした。そして、振り上げた。
振り上げる瞬間、網と接触し、電気で剣と網が繋がった。
下に隙間が生まれ、餓者髑髏がスライディングで潜り抜けた。
騎士団長は上で剣をぐるぐる回し、電気の網を剣に纏わりつける。わたあめを作っているようだ。
スライディングし、盟主に迫った餓者髑髏は剣を右下から左上に斬り上げる。
その勢いに身を任せ跳び上がり、体を軸に回転し、斬り下ろす。
盟主は軽く後ろに下がり、必要最低限の動きで攻撃を避けた。すまし顔は崩れない。
屈んだところに蹴りを加え、餓者髑髏は吹き飛ぶ。
パワーも上昇しているのか。
オレ? 今も体の自由が利かないんだ。怒りは収まった。
でも、もう1人、オレがいる感じ。ちなみに、この意志が複製体。
まだ条件は満たせていない感じだ。冷静の熟練度が足りていないのか。それに、これ以上理性を失いたくない。
盟主との直線距離が開けたところで、騎士団長が剣先を盟主に向け、腰を落とした。
剣に纏わりついた電気が激しくスパークし、一瞬、激しく光った。雨粒が光を反射し、辺りを「白」が包む。
騎士団長はその隙に、剣に纏わりついた電気を放ち、その陰に隠れて接近した。
電気が盟主に当たり、そこを一際明るくする。
そして雷を纏った騎士団長が、その電気をすべて剣に集め、横に振るった。
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