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最終章 悪役令嬢は・・・
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マリオット先生はゆっくりと椅子に座り直した。
「どうだい?僕がこんなことした理由が分かったかい?僕は闇の組織に関わる奴も、闇の組織を生んだアンファエルン皇国も憎くて堪らない。だから全部潰してやろうって思ったのさ」
先生はもう、いつもの優しくて穏やかな表情に戻っていた。だけど目だけはどこか虚ろで、光を映さなくなっている。
私はそれが悲しくて、思わず言ってしまった。
「先生。先生のやろうとした事は、絶対誰も喜ばないです!先生の恋人も・・・友達のイーサン・ベルフォートだって」
「知ってるよ。僕だってそれくらい。・・・これは僕の・・・僕だけの憎しみだ。単なる私怨なんだよ」
先生は疲れた様に笑った。
(そんな・・・)
乙女ゲーム『アンファエルンの光の聖女』はストーリーの裏にこんな悲劇を隠していたと言うのだろうか?それともここは、ゲームとは全く違う異世界なのだろうか?
確かめる事なんて出来ないけど・・・それでもゲームでマリオット先生を攻略するルートには、ヒロインと幸せになるエンドだってあったのだ。
やるせない気持ちで私は聞いた。
「先生は迷わなかったのですか?・・・やっぱり止めようって、途中で思い返したりしなかったのですか・・・?」
マリオット先生の顔に一瞬、逡巡の表情浮かぶ。
「・・・思ったさ」
先生の瞳にほんの少し光が戻った。
「学園で君達の先生として過ごした事は・・・偽りの生活ではあったけど、僕が生きてきた中で一番穏やかな日々だったからね。ふふ・・・去年の初日は大変だったなぁ」
(ああ、マーリンが私に噛みついて来た日の事か)
「あれはねエンリルが勝手にやったんだ。ライナスに気に入られてるアリアナ君を、苦しめたかったのか・・・それとも君からヘンルーカの気配を感じ取っていたのかは分からないけど・・・」
「先生、私は・・・」
「うん、君はヘンルーカじゃない。それもちゃんと分かってるよ」
先生は私から顔を隠す様に俯いた。今どんな表情を浮かべているのだろう・・・
「君達の先生でいるのは楽しかった。だから僕は・・・君達から正体を隠した。できれば、レナルド・マリオットは君達の先生のままで覚えておいて欲しかったんだ。・・・例えそれが卑怯で独りよがりの望みだとしてもね」
(先生・・・)
だったらどうして、そのまま私達の先生でいてくれなかったのか?
(先生は、学園にいるのが楽しかったのでしょ?先生でいる事が幸せだったんだよ!)
先生は選択肢を誤った。彼がこの世界で選ぶ道筋は無数にあったはずなのだ。だけど、彼の辛い過去を聞いた後で、彼がやって来た事を間違いだったと責められるだろうか?
(難しいよ・・・)
「さぁ、これで僕の話は終わりだ。・・・そろそろ休ませてくれるかい」
そう言って顔を上げた先生は、力無く憔悴しているように見えた。トラヴィスが扉の外の騎士を呼び、先生を連れて行こうとした時、私は思わず彼に言った。
「先生。先生はやっぱり間違ってた!自分を不幸にしちゃ駄目です、駄目なんですよ!」
先生は少し目を見開いた。そして静かに笑みを浮かべて、
「・・・僕はその事に気づけなかったよ。アリアナ君、君はやっぱり聡明だね。だけど君は僕を許しちゃいけないよ。僕は自分の恋人がされたのと同じ事を、君にしてしまったのだから・・・」
そう言って振り向くことなく、騎士達に連れて行かれた。
私達はしばらく黙ったまま、先生が出て行った扉を見つめていた。
「アリアナ・・・」
リリーが涙ぐんでいる。なのに彼女はポケットから出したハンカチを、何故か私の頬にそっとをあてた。
「え・・・」
その時自分がぼろぼろに泣いている事に、私は初めて気付いたのだ。
皇国に帰国した私達は、何故か国民や貴族達に大歓声で迎えられた。
「え!?何なんですか?この騒ぎは・・・」
トラヴィスが皇太子の笑みを崩さず、
「どうやら、早馬で先に連絡が行ってたらしいわよ。私達が隣国との戦争を防いだってね」
国民に手を振りながら、小声で教えてくれた。
セルナク国は態度を180度変えたらしく、皇国にかなり有利な条件で同盟を提案してきた。ただし、その代わりに
「エメライン王女を、学園に復学させる様に言ってきたわ」
「げっ!」
同盟を強く勧めてきたのも、どうやらエメラインらしい。
(確かに皇国にまた来るとは言ってたけど、なんちゅう行動力よ)
さすが、真正悪役王女。
そして1カ月経って、アンファエルン学園は夏休みに入った。
「どうだい?僕がこんなことした理由が分かったかい?僕は闇の組織に関わる奴も、闇の組織を生んだアンファエルン皇国も憎くて堪らない。だから全部潰してやろうって思ったのさ」
先生はもう、いつもの優しくて穏やかな表情に戻っていた。だけど目だけはどこか虚ろで、光を映さなくなっている。
私はそれが悲しくて、思わず言ってしまった。
「先生。先生のやろうとした事は、絶対誰も喜ばないです!先生の恋人も・・・友達のイーサン・ベルフォートだって」
「知ってるよ。僕だってそれくらい。・・・これは僕の・・・僕だけの憎しみだ。単なる私怨なんだよ」
先生は疲れた様に笑った。
(そんな・・・)
乙女ゲーム『アンファエルンの光の聖女』はストーリーの裏にこんな悲劇を隠していたと言うのだろうか?それともここは、ゲームとは全く違う異世界なのだろうか?
確かめる事なんて出来ないけど・・・それでもゲームでマリオット先生を攻略するルートには、ヒロインと幸せになるエンドだってあったのだ。
やるせない気持ちで私は聞いた。
「先生は迷わなかったのですか?・・・やっぱり止めようって、途中で思い返したりしなかったのですか・・・?」
マリオット先生の顔に一瞬、逡巡の表情浮かぶ。
「・・・思ったさ」
先生の瞳にほんの少し光が戻った。
「学園で君達の先生として過ごした事は・・・偽りの生活ではあったけど、僕が生きてきた中で一番穏やかな日々だったからね。ふふ・・・去年の初日は大変だったなぁ」
(ああ、マーリンが私に噛みついて来た日の事か)
「あれはねエンリルが勝手にやったんだ。ライナスに気に入られてるアリアナ君を、苦しめたかったのか・・・それとも君からヘンルーカの気配を感じ取っていたのかは分からないけど・・・」
「先生、私は・・・」
「うん、君はヘンルーカじゃない。それもちゃんと分かってるよ」
先生は私から顔を隠す様に俯いた。今どんな表情を浮かべているのだろう・・・
「君達の先生でいるのは楽しかった。だから僕は・・・君達から正体を隠した。できれば、レナルド・マリオットは君達の先生のままで覚えておいて欲しかったんだ。・・・例えそれが卑怯で独りよがりの望みだとしてもね」
(先生・・・)
だったらどうして、そのまま私達の先生でいてくれなかったのか?
(先生は、学園にいるのが楽しかったのでしょ?先生でいる事が幸せだったんだよ!)
先生は選択肢を誤った。彼がこの世界で選ぶ道筋は無数にあったはずなのだ。だけど、彼の辛い過去を聞いた後で、彼がやって来た事を間違いだったと責められるだろうか?
(難しいよ・・・)
「さぁ、これで僕の話は終わりだ。・・・そろそろ休ませてくれるかい」
そう言って顔を上げた先生は、力無く憔悴しているように見えた。トラヴィスが扉の外の騎士を呼び、先生を連れて行こうとした時、私は思わず彼に言った。
「先生。先生はやっぱり間違ってた!自分を不幸にしちゃ駄目です、駄目なんですよ!」
先生は少し目を見開いた。そして静かに笑みを浮かべて、
「・・・僕はその事に気づけなかったよ。アリアナ君、君はやっぱり聡明だね。だけど君は僕を許しちゃいけないよ。僕は自分の恋人がされたのと同じ事を、君にしてしまったのだから・・・」
そう言って振り向くことなく、騎士達に連れて行かれた。
私達はしばらく黙ったまま、先生が出て行った扉を見つめていた。
「アリアナ・・・」
リリーが涙ぐんでいる。なのに彼女はポケットから出したハンカチを、何故か私の頬にそっとをあてた。
「え・・・」
その時自分がぼろぼろに泣いている事に、私は初めて気付いたのだ。
皇国に帰国した私達は、何故か国民や貴族達に大歓声で迎えられた。
「え!?何なんですか?この騒ぎは・・・」
トラヴィスが皇太子の笑みを崩さず、
「どうやら、早馬で先に連絡が行ってたらしいわよ。私達が隣国との戦争を防いだってね」
国民に手を振りながら、小声で教えてくれた。
セルナク国は態度を180度変えたらしく、皇国にかなり有利な条件で同盟を提案してきた。ただし、その代わりに
「エメライン王女を、学園に復学させる様に言ってきたわ」
「げっ!」
同盟を強く勧めてきたのも、どうやらエメラインらしい。
(確かに皇国にまた来るとは言ってたけど、なんちゅう行動力よ)
さすが、真正悪役王女。
そして1カ月経って、アンファエルン学園は夏休みに入った。
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