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第8章 悪役令嬢は知られたくない
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イーサンは感情のこもらないビー玉の様な目をしたまま、私に聞いた。
「では彼女を壊したのは誰だ?」
「わ、私達には分からないけど・・・貴方には心当たりがあるんじゃ・・・」
そう言いかけた時、イーサンの視線が弾かれる様に石像に向いた。私達も引っ張られる様にそちらを見ると、像の近くでゆらりと起き上がる人影が見えた。
「えっ、あ!ディーン!?」
ディーンは額から血を流し、服もボロボロであちこち傷だらけだ。おまけに片方の手がぶらりとしたまま動いていない。
私は血の気が一気に下がった。
ディーンは祭壇の柱で体を支えながら、イーサンを睨みつけた。そして振り絞る様に叫んだ。
「・・・ライナス・イーサン・ベルフォート!。見ろ!、この石像が壊されたのは最近じゃない。少なくても数年は経ってる」
「何だと・・・?」
「壊された部分の石が経年で変色している・・・。それにその破片も片付けられている・・・」
ディーンの言葉に、イーサンはぷつりと糸が切れた様に空中から地面に降り立った。目を見開いたまま片手で顔を覆うと、口元を歪ませてぼそりと呟いた。
「・・・ふざけたマネを・・・。全員、殺してやる」
するとイーサンの姿がノイズが走る様に歪み始めた。
(転移!?)
その途端、リリーがイーサンに向かって叫びながら走り出した。
「待って!。行かないでっ!」
リリーがイーサンに触れたかと思った瞬間、二人の姿は消え失せてしまった。
(嘘・・・)
「リリー!」
私達は呆然と立ち尽くし、二人の消えた場所を見つめていた。
「ど、どうしましょ!?殿下!。リリーが・・・!」
私はトラヴィスに詰め寄ったが、彼も戸惑った表情で首を振るばかりだ。
すると、後ろの方でドサッと言う物音が聞こえ、振り返るとディーンが倒れていた。
「ディーン!?」
私は瓦礫をかき分けて彼のいる祭壇の方へ走った。色んな事が起き過ぎて、もうどうして良いのか分からない。
(あ・・・)
近寄るとディーンの怪我は、想像していたよりもずっと酷かった。全身傷だらけで服が血に染まっている。多分右腕は折れているのだろう。
「・・・だ、大丈夫・・・?しっかりして・・・」
声が震えて、勝手に涙がぼろぼろと溢れた。
触れる事も出来ずにおろおろしていると、後ろから肩を叩かれた。
「どいてごらん。治癒魔術をかけるから」
トラヴィスは倒れているディーンの横に腰を下ろして手をかざした。ディーンの体が温かい光に包まれる。
「・・・最初にイーサンに襲われた時、ディーンが咄嗟に私達を守ってくれたんだ。シールドが間に合わなくて吹っ飛ばされたけど、彼が庇ってくれなかったら私達は皆死んでいたかもしれない」
治癒魔術を施しながらトラヴィスは疲れた声でそう言った。そして涙でぐしゃぐしゃで声も出ない私を見て苦笑すると、
「心配しなくても大丈夫。ディーンは強いから。それに私は超チートだから、治癒魔法も得意なんだ」
安心させるように片目をつぶった。
少しホッとして気が抜けた途端クリフの事を思いだし、
「そ、そうだ!。クリフも怪我をしてるんです!。通路の所で倒れて・・・」
すると離れた所から「大丈夫だよ~」と声がした。
「僕が連れて来たから。・・・ああ重かった!。僕と兄上が治癒魔術が出来る事に感謝してよね」
見ると通路の前でパーシヴァルがクリフを手当てしている。その横でミリアも意識を取り戻した様で、壁にもたれるように座って手を振っていた。
(良かった・・・)
だけど落ち着いたとは言え、今の状況は全然良いとは言えない。
洞窟の中で怪我人だらけの上、リリーはイーサンと共に消えてしまったのだから。
(ま、まずはなんとかして洞窟を出て、リリーを探さなくちゃ)
でも、どうやって?
頭を抱えていたら、「うう・・・」とうめき声を上げてディーンが目を開けた。
「大丈夫ですか!?」
彼は痛みに顔をしかめながら、体を起こした。
「ま、まだ横になっていた方が・・・」
慌てる私に「いや・・・大丈夫だ・・・」と言うと、トラヴィスに向かって頭を下げた。
「すみません、不覚をとりました」
「謝るな。お前のおかげで皆助かったんだ」
とトラヴィスが立ち上がった時だった。私の目の端に何か黒いモノが動いた気がして振り返った。
すると黒いフードを来た若い男とばっちり目が合ってしまった。
(え!?)
男は怯えた表情で「ひぃっ!」と叫ぶと、もつれた足取りで逃げようとする。
しかしトラヴィスが手を打ちつける様に叩くと、男はつんのめるようにして倒れた。
「うわぁ、殺さないでくれぇ!」
叫ぶ男にトラヴィスは近寄りながら
「それはお前次第だな」
とドスの効いた声でそう言った。
「では彼女を壊したのは誰だ?」
「わ、私達には分からないけど・・・貴方には心当たりがあるんじゃ・・・」
そう言いかけた時、イーサンの視線が弾かれる様に石像に向いた。私達も引っ張られる様にそちらを見ると、像の近くでゆらりと起き上がる人影が見えた。
「えっ、あ!ディーン!?」
ディーンは額から血を流し、服もボロボロであちこち傷だらけだ。おまけに片方の手がぶらりとしたまま動いていない。
私は血の気が一気に下がった。
ディーンは祭壇の柱で体を支えながら、イーサンを睨みつけた。そして振り絞る様に叫んだ。
「・・・ライナス・イーサン・ベルフォート!。見ろ!、この石像が壊されたのは最近じゃない。少なくても数年は経ってる」
「何だと・・・?」
「壊された部分の石が経年で変色している・・・。それにその破片も片付けられている・・・」
ディーンの言葉に、イーサンはぷつりと糸が切れた様に空中から地面に降り立った。目を見開いたまま片手で顔を覆うと、口元を歪ませてぼそりと呟いた。
「・・・ふざけたマネを・・・。全員、殺してやる」
するとイーサンの姿がノイズが走る様に歪み始めた。
(転移!?)
その途端、リリーがイーサンに向かって叫びながら走り出した。
「待って!。行かないでっ!」
リリーがイーサンに触れたかと思った瞬間、二人の姿は消え失せてしまった。
(嘘・・・)
「リリー!」
私達は呆然と立ち尽くし、二人の消えた場所を見つめていた。
「ど、どうしましょ!?殿下!。リリーが・・・!」
私はトラヴィスに詰め寄ったが、彼も戸惑った表情で首を振るばかりだ。
すると、後ろの方でドサッと言う物音が聞こえ、振り返るとディーンが倒れていた。
「ディーン!?」
私は瓦礫をかき分けて彼のいる祭壇の方へ走った。色んな事が起き過ぎて、もうどうして良いのか分からない。
(あ・・・)
近寄るとディーンの怪我は、想像していたよりもずっと酷かった。全身傷だらけで服が血に染まっている。多分右腕は折れているのだろう。
「・・・だ、大丈夫・・・?しっかりして・・・」
声が震えて、勝手に涙がぼろぼろと溢れた。
触れる事も出来ずにおろおろしていると、後ろから肩を叩かれた。
「どいてごらん。治癒魔術をかけるから」
トラヴィスは倒れているディーンの横に腰を下ろして手をかざした。ディーンの体が温かい光に包まれる。
「・・・最初にイーサンに襲われた時、ディーンが咄嗟に私達を守ってくれたんだ。シールドが間に合わなくて吹っ飛ばされたけど、彼が庇ってくれなかったら私達は皆死んでいたかもしれない」
治癒魔術を施しながらトラヴィスは疲れた声でそう言った。そして涙でぐしゃぐしゃで声も出ない私を見て苦笑すると、
「心配しなくても大丈夫。ディーンは強いから。それに私は超チートだから、治癒魔法も得意なんだ」
安心させるように片目をつぶった。
少しホッとして気が抜けた途端クリフの事を思いだし、
「そ、そうだ!。クリフも怪我をしてるんです!。通路の所で倒れて・・・」
すると離れた所から「大丈夫だよ~」と声がした。
「僕が連れて来たから。・・・ああ重かった!。僕と兄上が治癒魔術が出来る事に感謝してよね」
見ると通路の前でパーシヴァルがクリフを手当てしている。その横でミリアも意識を取り戻した様で、壁にもたれるように座って手を振っていた。
(良かった・・・)
だけど落ち着いたとは言え、今の状況は全然良いとは言えない。
洞窟の中で怪我人だらけの上、リリーはイーサンと共に消えてしまったのだから。
(ま、まずはなんとかして洞窟を出て、リリーを探さなくちゃ)
でも、どうやって?
頭を抱えていたら、「うう・・・」とうめき声を上げてディーンが目を開けた。
「大丈夫ですか!?」
彼は痛みに顔をしかめながら、体を起こした。
「ま、まだ横になっていた方が・・・」
慌てる私に「いや・・・大丈夫だ・・・」と言うと、トラヴィスに向かって頭を下げた。
「すみません、不覚をとりました」
「謝るな。お前のおかげで皆助かったんだ」
とトラヴィスが立ち上がった時だった。私の目の端に何か黒いモノが動いた気がして振り返った。
すると黒いフードを来た若い男とばっちり目が合ってしまった。
(え!?)
男は怯えた表情で「ひぃっ!」と叫ぶと、もつれた足取りで逃げようとする。
しかしトラヴィスが手を打ちつける様に叩くと、男はつんのめるようにして倒れた。
「うわぁ、殺さないでくれぇ!」
叫ぶ男にトラヴィスは近寄りながら
「それはお前次第だな」
とドスの効いた声でそう言った。
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