モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第8章 悪役令嬢は知られたくない

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「アリアナ、この先はどうなっているんだ?」

「え~っと、ここからも抜け穴が3つありまして、一つは伝説の紫と緑の水晶の場所に繋がってます。もう一つは地底湖。最後の一つはかなり奥に行ったところで地図では通路が切れてました」

地図を頭に思い浮かべながら説明をした。

「闇の神殿に繋がっているのがどこなのか、判断が難しいな」

ディーンが眉をひそめた。

「やっぱり伝説の水晶の所から繋がっているのじゃないかしら?」

ミリアがそう言うと、

「いや、地図上で切れている通路が怪しいんじゃないか?」

とパーシヴァルが口を挟む。

「アリアナ、その先に繋がっていそうな所は無かったのか?」

クリフに尋ねられて私は首を振った。

「どの通路も他に繋がっている様な事は描かれていませんでした。・・・途切れた先は分かりませんが」

(やっぱり地図が途中で切れてる通路が怪しいのかな?。でもミリアの言う様に伝説の場所も可能性あるよね・・・)

う~む、困った。

するとそれまで腕を組んで黙っていたトラヴィスが口を開いた。

「地底湖の方へ行ってみよう」

(ん、何で?)

皆も戸惑った表情を浮かべている。

「でも、地底湖の場所には通路が無いって・・・」

ミリアがそう言うとトラヴィスはゆっくりと頷いた。

「闇の神殿が簡単に見つかる様な所だったら、もう誰かが見つけているさ。伝説の水晶の場所は何度も調べられているだろうし、切れた通路の先に何かがあるのなら地図に記載されているだろう」

(なるほど)

「とは言え、賭けには違いないな」

トラヴィスはそう言って肩をすくめた。

でも彼の言う事には一理ある。それに途切れた通路の方はかなり距離があったから、今日中に帰れるかどうかも怪しい。

私がその事を説明すると皆も納得したようで、とりあえず地底湖の方へ行ってみる事にした。

地図上では地底湖までの距離は短かった。だけど実際行ってみると勾配のきつい下り坂・・・と言うよりも水晶で出来た岩山を降りる感じで、私達は進むのに苦労した。最後の方なんかほとんど数メートルの崖の様になっていて、どう降りて良いのか分からない。

(ひ、ひえ・・・)

私はすっかり足がすくんでしまった。ズボンとゴムの靴に履き替えては来たけれど、怖いのは変わりない。

(リリーとミリアは・・・?)

と見ると、さすがのヒロイン・チートのリリーは一人ですいすいと降りていく。

(ええっ!!)

そしてミリアはちゃっかりトラヴィスとパーシヴァルの手を借りて下まで降りてしまっていた。

(ど、どうしよう・・・)

「アリアナ」

声をかけられて振り返るとディーンが私に背を向けて屈んでいた。

「背負っていく。私の肩に掴まれ」

(嘘でしょっ!)

体温が一気に上がった気がした。

「む、無理ですよ。私、結構重いですし、それにディーンが危ない・・・」

「大丈夫だから、早く掴まれ」

みんな待ってるからと急かされて、私は渋々ディーンの背中に負ぶさった。

「目を瞑っていろ」

(うう・・・)

ディーンの背中の温もりを感じながら、私は固く目を閉じた。

そしてあっという間に私を背負ったままディーンは下に降り立った。

「あ、ありがとうございます」

「行くぞ」

トラヴィスの号令で通路を抜けると、

(わっ!)

ぽっかりと抜けた広い空間、ここにも大小様々な水晶が沢山あり、そして水晶よりも透き通った水が広がっていた。

「凄い・・・底まで見えますね」

地底湖は広かった。水面は静かで、さざ波一つ立っていない。

「どこかに繋がる道が無いか調べてみよう」

私達は湖岸を歩きながら、抜け道が無いか慎重に調べたが見当たらない。

「やはりそう上手くはいかないか・・・」

トラヴィスがそう言った時、

「あ、あそこを・・・」

リリーが対岸の方を指さした。

見ると湖の反対側、岩に半分隠された場所にぽっかりと開いた黒い穴が見えた。

私達はしばらく誰も声を上げれなかった。

そんな中、ミリアが呆れたように、

「あんな所、湖を泳がないと行けないわ。それに半分水に浸かってるじゃないの!」

彼女の言う通り、その穴は水面に半分程顔を出した状態で、泳がないと先にも進め無さそうだった。

他の皆も難しい表情で対岸を見つめ、溜息をついている。

(ミリアの言う通りだ。しかも私は泳げない)

地底湖は相当大きい。泳げたってこの冷たそうな水の中を、服を着たまま泳ぎ切るのは難しいだろう。

私は腕を組んで湖を睨んだ。

(う~むむ、出来るか?)

「トラヴィス殿下、ディーン。氷魔術で道を作れませんか?」

私の言葉に皆がハッと我に返る。

「湖全部を凍らせなくても、あの通路まで歩けるように出来ないですか?」

トラヴィスとディーンが顔を見合わせた。氷魔術を使えるのはこの中では二人だけだ。

「なるほど・・・簡単だな」

トラヴィスはニヤッと笑うと右手を振り上げた。するとあっという間に対岸の抜け穴までの氷の道が出来上がった。
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