モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第8章 悪役令嬢は知られたくない

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次の日も、実戦魔術の野外授業は朝食作りから始まった。

この日は最初から、私とリリーが他のテントグループを手伝う事に決めた。

だけど「手伝いましょうか?」と、あるグループに声をかけた時に(しまった・・・)と後悔した。そこはマーリンのいるグループだったからだ。案の定、

「結構よ!」

の一言で断られてしまった。

他のメンバーはすがる様な目で私を見て来たけど、マーリンがそう言うからには手を出す訳にはいかない。私はしおしおと他のグループの所へ声をかけに行った。


そしてその日は思わぬ事件が色々と起こることとなる。


今日の授業は5人一組の6グループがまず作られた。

この組み分けもレブナン先生の采配で行われたが、やはり絶妙な組み分けで、昨日と同じように魔力の強い者が均等に6グループに振り分けられていた。

だけど私は、先生のこの組み分けに納得できなかった。

昨日のような対戦の時は良いが、今日みたいに5人組で実戦的に訓練するのなら違う分け方が良いと思ったのだ。それに、

(やっぱりディーンとマーリンは一緒なんだ・・・)

5人組でもディーンとマーリンは同じチームになっていた。

レブナン先生は2人をくっつけたがってるのだろうか?。それともこの世界がゲームに準じようとしているのか?。

そんな風に疑ってしまいたくなる。

ディーンの組には他に、女生徒2名と男子生徒が1名。

女生徒達は何やらディーンに必死に話しかけていた。そしてマーリンが女生徒達とディーンの間に割って入り、少しもめている様に見えるた。

(おいおい、大丈夫なの?)

だけどディーンはあまり気にしていないようだった。

「さぁ!。今日はこのグループで対抗戦をするぞ!。それぞれのグループにシールドが出来る人を配置してあるから安心しろ。戦闘時間は10分!」

レブナン先生は今日も楽しそうに説明を始めた。

「作戦会議の時間を20分あげるから、その間にどう戦うか考えるんだ!」

(そうか、相手グループの性格も考えて戦わないといけないもんね)

レブナン先生はオタクかもしれないけど、授業自体はちゃんとしてるのだ。


最初の対決はトラヴィスのいるAグループとクラークとレティシアのいるBグループだった。

「はじめ!」

先生の掛け声で戦闘が始まる。

(おお!。両方ともがんばれ!)

Bグループはクラークがシールドを張って、レティシアや他の者が攻撃や回復をするというバランスの良さそうな組だった。

Aグループはトラヴィス以外強い者が居ない。さすがに不利かと思ったのだけど、いかんせんトラヴィスが化け物だった。

彼はシールドを全員に張りつつ、さらに自分も攻撃するという離れ業をやってのけた。

そして氷魔術が得意なレティシアに対し、圧倒的な魔力差の炎の魔術を繰り出したのだ。

トラヴィスの炎は相手からの攻撃を全て飲み込みながら、Bグループに襲い掛かった。もちろんクラークのシールドで防御は出来たが・・・、

「勝者Aグループ!」

10分後、レブナン先生はそう叫んだ。

(結局トラヴィス対クラークとレティじゃん)

それにこう言ってはなんだけど、他の生徒が雑魚過ぎる。これで戦闘訓練になるのかな?と思ったけど、レブナン先生は上機嫌だ。

「さすがはトラヴィス殿下!。レティシアさんの攻撃も良かったけど殿下にはかないませんな」

トラヴィスは薄く笑って軽く頭を下げた。そしてレブナン先生が次の組に号令をかけようとしたところで、彼は先生に声をかけた。

「レブナン先生。少し提案があるのですが?」

「ん?何かな?」

「このグループ分けだと、魔力量の少ない者には訓練になりません。組分けを変えた方が良いと思います」

「た、確かに・・・う~む」

先生は腕を組んで考え込んだ。

(やっぱり、ねーさんもそう思ったか)

もしかしたら先生以外は、皆そう思ってるかもしれない。

ルブナン先生は自分の額を軽くたたいて、

「殿下達の魔術の素晴らしさに目を奪われて、他の生徒の事を失念していたな・・・。よし、今から組み分けを考え直そう!」

どうやらありがたい事に、レブナン先生は柔軟な考え方が出来る人のようだ。

するとトラヴィスが見惚れる程のあでやかな笑みを浮かべて、

「でしたら、あそこで見学しているアリアナ嬢に良い案があるみたいですよ」

と言い出した。

「え?」

(はぁ!?)

「ほほう!。アリアナさんはわが学園きっての才媛と噂されてる。ぜひ話を聞かせて欲しいなっ!?」

ルブナン先生が鼻息荒く、私に詰め寄ってきた。

「え、い、いえいえ、私なんかただの素人で」

「いや!。私は生徒の意見は広く聞くべきだと思っている。さあ!提案してくれたまえっ」

どうもルブナン先生は柔軟過ぎる人のようだった・・・。

「は、はぁ・・では」

(知らないよ。本当に素人考えだからね)

トラヴィスは先生の後ろでニヤニヤ笑いながら成り行きを見ている。

いまいましい気持ちで、私は昨日から見ていて思った事を説明した。

「え~っと、まず魔力や魔術のレベルの高い人で各グループに振り分けるのでは無くて、その人達だけでチームを作るのはどうですか?」

「え?しかしそれだと弱いチームは絶対に勝てないぞ」

「はい。だからレベルを3つぐらいに分けて、それぞれのレベルの同士で訓練したらどうでしょう?」

(一般生徒と攻略者達をぶつけるのは絶対無理があるもんね)

するとルブナン先生は、

「なるほど・・・だがそうなると、それぞれのレベルで2チームずつしか作れないな」

と言うので、

「5人にこだわらなくて良いのじゃ無いですか?。それぞれの魔力量や魔術の適正に合わせてチームを作れば良いと思います」

「ふむ・・・では君ならどういうグループにする?」

(え?そこまで聞くの?)

「ええとですね・・・」

私は素早く頭の中で組み合わせを作った。
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