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第8章 悪役令嬢は知られたくない
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トラヴィスは指で本の上をなぞりながら、
「どうやら、この辺から皇国の闇の組織へ対する態度が変わって来たみたいだ」
「皇国創立から2年ほど経ってますね。何があったのでしょうか?」
「読んでみる。・・・アンファエルン皇帝から組織への支援は完全に打ち切られた。理由はライナスがヘンルーカを拉致したからとされているが、それは真っ赤な嘘だ・・・」
私達は驚きに目を見張る。
「ライナスはヘンルーカを誰よりも大事に思っていた事を私は知っている。二人は互いを信頼し思い合っていた。二人を最初に引き裂いたのはアンファエルンだ・・・」
「ヘンルーカって、他の本に書いてあった聖女ですよね?。あの、皇国を創立するのに一緒に戦ったという・・・」
私の言葉にトラヴィスは黙って頷いた。手記の日付が変わる。
「とうとう皇国は組織の排斥に動き出した。私達は逃げなくてはいけない。ここには得難い能力を持つ子供達が沢山いるのだ。この子達を守らなくてはいけない。夫はアンファエルン側についた。逃げる前にエンリルを連れ戻さなければ。あの子の能力は人の技を超えている。私はあの子が恐ろしい・・・」
(夫?この手記を書いたのは女性なんだ。それにエンリルの能力って精神魔術の事だよね・・・?)
トラヴィスはさらに頁をめくる。
「・・・ヘンルーカが殺された・・・!?。ライナスを庇ってアンファエルンの手にかかったのだ。なんという事だ、娘を殺したあの男を私は許さない。ライナスも囚われている。私達には助けるすべがない・・・」
「娘!?。この人はヘンルーカさんのお母さんなんですね!?」
「どうやらそのようだな・・・」
静かな部屋にトラヴィスの声が重々しく響く。彼は手記を読み進めた。
「・・・ライナスが処刑された」
「処刑!?」
「酷い・・・!」
余りの事にディーンも私も声を上げた。トラヴィスも顔をしかめながら先を読む。
「・・・彼の力なら逃げられたであろうに。ライナスはヘンルーカの死に耐えられなかったのだ。だが私達にはライナスが必要だ。その為にはエンリルの力に頼らざるを得ない。あの魔術を使えるのはエンリルだけなのだから。そして・・・残虐な皇帝から逃れる為に、私達は紫水晶の洞窟の奥にある地下に隠れることにした。ここならば追手に見つかる事も無いだろう・・・」
(紫水晶の洞窟・・・?)
なんか、どっかで聞いた事が・・・。
「・・・儀式は成功した。私達は再び師を得る事が出来たのだ。我々の組織は永遠だ。未来永劫アンファエルンの血筋を苦しめ続けるのだ・・・どうやら手記はここで終わっているみたいだな」
トラヴィスは残りの頁をめくりながらそう言った。
「最後の頁に名前が書いてある。ローズ・ヴェリティ。聖女ヘンルーカと同じ家名だ。彼女の母親で間違いないようだな・・・」
「この手記によると、アンファエルン皇帝はヘンルーカとライナスを殺害したようですね」
ディーンが眉を寄せながらそう呟く。
「ああ、そのようだな・・・。しかも闇の組織の弾圧を始めたのも皇帝のようだ」
「その為に闇の魔力が悪であると民衆に印象付けたのでしょうか。ライナスを処刑する為に?」
ディーンが吐き捨てる様に言った。
「エンリル皇妃が使えたという魔術も気になります。この手記を書いたローズ・ヴェリティはそれを恐れながらも、最後には必要としていたようです。それに儀式とはいったい何でしょう?」
私も苦々しい気持ちで気になる事を指摘した。
「分からないが・・・」
トラヴィスが手記を置いて黙ったまま腕を組む。そして、
「他の本も確認してみよう」
トラヴィスはもう一つの手書きの書物を開いた。そして、驚いたように目を見開いた。
「どうしたんですか?」
「読むぞ・・・私の名はアンファエルン・レイヴンズクロフト。この皇国の初代皇帝であった・・・」
「え!?」
私もディーンもびっくりして、確かめる様に文章を覗きこんだ。
「アンファエルン皇帝の手記なのですか!?」
「そのようだが・・・。どうも日付からすると晩年・・・皇帝が崩御された年に書かれたもののようだ」
ペラペラとめくって、
「ほんの数ページしか書かれていない。いいか、読むぞ?・・・昨年、エンリルが亡くなってから、私はやっと自分の犯した罪に気付く事が出来た。愛した女性を手にかけ、信頼していた友まで処刑した。私の罪は許されない」
「そんな・・・死ぬ前に後悔したって遅いですよ」
反省するなら、もうちょっと早くしろ!と言いたかった。
「どうやら、この辺から皇国の闇の組織へ対する態度が変わって来たみたいだ」
「皇国創立から2年ほど経ってますね。何があったのでしょうか?」
「読んでみる。・・・アンファエルン皇帝から組織への支援は完全に打ち切られた。理由はライナスがヘンルーカを拉致したからとされているが、それは真っ赤な嘘だ・・・」
私達は驚きに目を見張る。
「ライナスはヘンルーカを誰よりも大事に思っていた事を私は知っている。二人は互いを信頼し思い合っていた。二人を最初に引き裂いたのはアンファエルンだ・・・」
「ヘンルーカって、他の本に書いてあった聖女ですよね?。あの、皇国を創立するのに一緒に戦ったという・・・」
私の言葉にトラヴィスは黙って頷いた。手記の日付が変わる。
「とうとう皇国は組織の排斥に動き出した。私達は逃げなくてはいけない。ここには得難い能力を持つ子供達が沢山いるのだ。この子達を守らなくてはいけない。夫はアンファエルン側についた。逃げる前にエンリルを連れ戻さなければ。あの子の能力は人の技を超えている。私はあの子が恐ろしい・・・」
(夫?この手記を書いたのは女性なんだ。それにエンリルの能力って精神魔術の事だよね・・・?)
トラヴィスはさらに頁をめくる。
「・・・ヘンルーカが殺された・・・!?。ライナスを庇ってアンファエルンの手にかかったのだ。なんという事だ、娘を殺したあの男を私は許さない。ライナスも囚われている。私達には助けるすべがない・・・」
「娘!?。この人はヘンルーカさんのお母さんなんですね!?」
「どうやらそのようだな・・・」
静かな部屋にトラヴィスの声が重々しく響く。彼は手記を読み進めた。
「・・・ライナスが処刑された」
「処刑!?」
「酷い・・・!」
余りの事にディーンも私も声を上げた。トラヴィスも顔をしかめながら先を読む。
「・・・彼の力なら逃げられたであろうに。ライナスはヘンルーカの死に耐えられなかったのだ。だが私達にはライナスが必要だ。その為にはエンリルの力に頼らざるを得ない。あの魔術を使えるのはエンリルだけなのだから。そして・・・残虐な皇帝から逃れる為に、私達は紫水晶の洞窟の奥にある地下に隠れることにした。ここならば追手に見つかる事も無いだろう・・・」
(紫水晶の洞窟・・・?)
なんか、どっかで聞いた事が・・・。
「・・・儀式は成功した。私達は再び師を得る事が出来たのだ。我々の組織は永遠だ。未来永劫アンファエルンの血筋を苦しめ続けるのだ・・・どうやら手記はここで終わっているみたいだな」
トラヴィスは残りの頁をめくりながらそう言った。
「最後の頁に名前が書いてある。ローズ・ヴェリティ。聖女ヘンルーカと同じ家名だ。彼女の母親で間違いないようだな・・・」
「この手記によると、アンファエルン皇帝はヘンルーカとライナスを殺害したようですね」
ディーンが眉を寄せながらそう呟く。
「ああ、そのようだな・・・。しかも闇の組織の弾圧を始めたのも皇帝のようだ」
「その為に闇の魔力が悪であると民衆に印象付けたのでしょうか。ライナスを処刑する為に?」
ディーンが吐き捨てる様に言った。
「エンリル皇妃が使えたという魔術も気になります。この手記を書いたローズ・ヴェリティはそれを恐れながらも、最後には必要としていたようです。それに儀式とはいったい何でしょう?」
私も苦々しい気持ちで気になる事を指摘した。
「分からないが・・・」
トラヴィスが手記を置いて黙ったまま腕を組む。そして、
「他の本も確認してみよう」
トラヴィスはもう一つの手書きの書物を開いた。そして、驚いたように目を見開いた。
「どうしたんですか?」
「読むぞ・・・私の名はアンファエルン・レイヴンズクロフト。この皇国の初代皇帝であった・・・」
「え!?」
私もディーンもびっくりして、確かめる様に文章を覗きこんだ。
「アンファエルン皇帝の手記なのですか!?」
「そのようだが・・・。どうも日付からすると晩年・・・皇帝が崩御された年に書かれたもののようだ」
ペラペラとめくって、
「ほんの数ページしか書かれていない。いいか、読むぞ?・・・昨年、エンリルが亡くなってから、私はやっと自分の犯した罪に気付く事が出来た。愛した女性を手にかけ、信頼していた友まで処刑した。私の罪は許されない」
「そんな・・・死ぬ前に後悔したって遅いですよ」
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