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第8章 悪役令嬢は知られたくない
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ディーンは本を閉じて、
「この本で目に付いたのはこれぐらいです。もう少し探してみましょう」
彼の言葉に頷いて、私達はまた本棚の調査を続けた。
そしてほんの数分後、今度はトラヴィスが私達を呼んだ。
「ここに闇の魔力について書かれている。読むぞ・・・闇の魔力、光の魔力は魔力そのものの根源となる力であり、二つの魔力は対となり互いを補う力である。そして世界の秩序の為に二つの魔力の存在は必要不可欠である・・・どう言う事だと思う?」
私達は顔を見合わせた。私達が習ってきた事と全く違う。
「闇の魔力は悪しき能力で、この世に混乱をもたらすと我々は習いました」
私もディーンの言葉に頷いて、
「唯一対抗できるのが光の魔力だと、どの文献にもそう書いてありました。でも、もしこの本に書かれている事が真実ならば、闇の魔力イコール悪と言うのは間違っているという事になります。それに、さっきの文献では皇国創建時にライナス・アークはアンファエルン初代皇帝に協力してますし・・・」
「その後で何かがあったと言う事か。闇の魔力を忌避するような出来事が?・・・それとも何者かが闇の能力者を排除したかったのか?」
―――闇の能力者はこの国にとって禁忌だからだ。存在する事すら許されない
イーサンの言葉が頭の中に蘇る。
トラヴィスは本をパラパラめくり、
「この本はもう少し読んでみたいが後回しだな。なぜ闇の魔力が嫌悪の対象になったのか・・・その歴史を知りたい。それに闇の組織がどうして犯罪組織と変化していったのかが分かれば良いのだが」
「それと、闇の組織の地下神殿の場所ですね」
ゲームの中でイーサンが探したと言う場所。そこにはきっと、何かがあるはずだから・・・
「あっ、そうか!」
思い出した。
「どうしたんだ?」
「地下神殿です!どうしてゲームでイーサンが地下神殿を探していたのか分かりました!」
「えっ!?」
「以前、イーサンが言ってたんです。闇の組織に大切な物を隠されているから、協力せざるを得ないって。きっとその『大切な物』の隠し場所が地下神殿なんじゃないでしょうか?」
するとディーンが訝し気に、
「イーサンの『大切な物』とは?」
「それは言って無かったので分からないのです。でもあのイーサンが闇の組織に力を貸す位だから、余程の物だと思います」
そう話している途中で急に扉をコツコツ叩く音がして、私達は3人ともビクッとなった。
トラヴィスが向かい扉を開けてみると、そこには図書館長が立っていた。
「閉館のお時間です。皆様お出になってください」
(もうそんな時間?)
発見はあったけど、調べた時間に比べて収穫が少ない気がした。
私達は疲れた顔で禁書の部屋を後にした。
図書館を出たところでトラヴィスが私達に振り向くと、
「私は執務室に寄るが君達はこのまま寮に帰りたまえ。明日もこの作業が続くのだから早く休むと良い」
「え?」
そう言ってスタスタと歩いて行ってしまった。
(ちょ、ちょっとねーさん!?)
去り際に私に向かってニヤッと笑ったのは見逃さなかったぞ!なんで!?
私が呆然とトラヴィスの去り行く背中を見ていると、
「リナ」
と後ろから声をかけられ背中に緊張が走った。
「帰ろうか?」
「は、はひ」
噛んでしまった・・・。
二人とも黙ったまま、寮への道を歩く。
春になったとはいえ4月の夕方の風は、少し冷たさを残していた。
「寒く無いか?」
「だ、大丈夫です」
・・・会話が続かない。
図書館と寮は学園の端と端。たっぷり15分は二人きりで歩く事になる。
(気まずい・・・)
ディーンに前の世界での名前を聞かれてから、彼は二人の時だけ私をその名で呼ぶようになった。私は10カ月も経ったというのに、今もそれに慣れなくて困っている。
(前は普通に話せたのに・・・)
ディーンはあの事件から、少し変わったと思う。
「この本で目に付いたのはこれぐらいです。もう少し探してみましょう」
彼の言葉に頷いて、私達はまた本棚の調査を続けた。
そしてほんの数分後、今度はトラヴィスが私達を呼んだ。
「ここに闇の魔力について書かれている。読むぞ・・・闇の魔力、光の魔力は魔力そのものの根源となる力であり、二つの魔力は対となり互いを補う力である。そして世界の秩序の為に二つの魔力の存在は必要不可欠である・・・どう言う事だと思う?」
私達は顔を見合わせた。私達が習ってきた事と全く違う。
「闇の魔力は悪しき能力で、この世に混乱をもたらすと我々は習いました」
私もディーンの言葉に頷いて、
「唯一対抗できるのが光の魔力だと、どの文献にもそう書いてありました。でも、もしこの本に書かれている事が真実ならば、闇の魔力イコール悪と言うのは間違っているという事になります。それに、さっきの文献では皇国創建時にライナス・アークはアンファエルン初代皇帝に協力してますし・・・」
「その後で何かがあったと言う事か。闇の魔力を忌避するような出来事が?・・・それとも何者かが闇の能力者を排除したかったのか?」
―――闇の能力者はこの国にとって禁忌だからだ。存在する事すら許されない
イーサンの言葉が頭の中に蘇る。
トラヴィスは本をパラパラめくり、
「この本はもう少し読んでみたいが後回しだな。なぜ闇の魔力が嫌悪の対象になったのか・・・その歴史を知りたい。それに闇の組織がどうして犯罪組織と変化していったのかが分かれば良いのだが」
「それと、闇の組織の地下神殿の場所ですね」
ゲームの中でイーサンが探したと言う場所。そこにはきっと、何かがあるはずだから・・・
「あっ、そうか!」
思い出した。
「どうしたんだ?」
「地下神殿です!どうしてゲームでイーサンが地下神殿を探していたのか分かりました!」
「えっ!?」
「以前、イーサンが言ってたんです。闇の組織に大切な物を隠されているから、協力せざるを得ないって。きっとその『大切な物』の隠し場所が地下神殿なんじゃないでしょうか?」
するとディーンが訝し気に、
「イーサンの『大切な物』とは?」
「それは言って無かったので分からないのです。でもあのイーサンが闇の組織に力を貸す位だから、余程の物だと思います」
そう話している途中で急に扉をコツコツ叩く音がして、私達は3人ともビクッとなった。
トラヴィスが向かい扉を開けてみると、そこには図書館長が立っていた。
「閉館のお時間です。皆様お出になってください」
(もうそんな時間?)
発見はあったけど、調べた時間に比べて収穫が少ない気がした。
私達は疲れた顔で禁書の部屋を後にした。
図書館を出たところでトラヴィスが私達に振り向くと、
「私は執務室に寄るが君達はこのまま寮に帰りたまえ。明日もこの作業が続くのだから早く休むと良い」
「え?」
そう言ってスタスタと歩いて行ってしまった。
(ちょ、ちょっとねーさん!?)
去り際に私に向かってニヤッと笑ったのは見逃さなかったぞ!なんで!?
私が呆然とトラヴィスの去り行く背中を見ていると、
「リナ」
と後ろから声をかけられ背中に緊張が走った。
「帰ろうか?」
「は、はひ」
噛んでしまった・・・。
二人とも黙ったまま、寮への道を歩く。
春になったとはいえ4月の夕方の風は、少し冷たさを残していた。
「寒く無いか?」
「だ、大丈夫です」
・・・会話が続かない。
図書館と寮は学園の端と端。たっぷり15分は二人きりで歩く事になる。
(気まずい・・・)
ディーンに前の世界での名前を聞かれてから、彼は二人の時だけ私をその名で呼ぶようになった。私は10カ月も経ったというのに、今もそれに慣れなくて困っている。
(前は普通に話せたのに・・・)
ディーンはあの事件から、少し変わったと思う。
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