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第8章 悪役令嬢は知られたくない
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「窓もランプも無いのに明るいですね」
「うん、どうやら天井に灯り用の魔術具が埋め込まれている。重要な古書があるこの部屋で、火を使わない様にだろう」
禁書の部屋は思っていたよりも広かった。本棚が幾つもあり、そして蔵書も想像以上に多い。
(こ、これを全部調べるの?)
図書館の棚と違って分類されて無さそうだし、片っ端から見ていくしかない。そう思うと気が遠くなりそうだった。
トラヴィスは溜息をつくと、
「どうやら我が皇国には隠しておきたい事が多々あるようだな」
呆れたようにそう言った。
私達は手分けして本を調べて行った。キーワードはもちろん「闇の組織」と「闇の魔力」。
調べていく内に、私は冷や汗が止まらなくなった。
(これ・・・私が見て良いの?)
さすが禁書の部屋。手に取る本の内容には、かなりショッキングなものが多かった。
過去の皇帝の醜聞だったり、邪魔な貴族を滅亡させる為の陰謀の方法やガチな魔術での呪いのかけ方。
はては魔術で人造人間を造る研究などの本もあり、思わず「フランケンかよ!?」と突っ込みたくなった。
(あまり、内容を頭に入れない様にしよう・・・)
その方が身の為の気がした。
二つ隣の本棚ではトラヴィスが調べている。眉間にしわが寄っているところを見ると、手に持っているのはどうもロクでも無い内容の本のようだ。
そう言えば、仲間達に私が別の世界から来た事がバレてからしばらくして、トラヴィスは自分が同じ世界からの転生者である事を皆に打ち明けた。
トラヴィス曰く「隠しておくと、話をするとき面倒なのよ」というのが理由だ。
だけど、自分が過去生で女性であった事はしっかり伏せている。もちろん皇太子としての威厳を保ちたいからだろう。
(一回やらかしてるもんね)
初めてイーサンに会った時の暴走の事である。
あの場に居た者は皆、何も言わないけれど多分覚えているだろう。
おかげで一時期、皇太子が男色だと言う噂がたった(まぁ半分は私のせいだけど・・・)
仲間たちはトラヴィスの告白に驚いたようだったけど、
「だからアリアナを秘書にしたのですね」
とクラークやディーンも腑に落ちたようだ。おかげで皆が居る所でもトラヴィスと前の世界の話が出来るようになったので助かる。
しかも、未知の世界の記憶を持つトラヴィスは、皆から・・・主にパーシヴァルとミリアからだけど・・・完全無欠かつ神秘の存在として見られるようになった。
(神秘・・・OLねーさんの口調で話してるトラヴィスを見せてやりたいよ)
機械的にキーワードを探して本を調べつつ、私は乾いた笑みを浮かべた。すると、
「ありました」
左側の壁にある書棚を調べていたディーンが声を上げた。
私もトラヴィスも慌ててディーンに駆け寄り、彼が示す頁を覗きこんだ。
「これは・・・闇の組織の成り立ちか?」
そこに書いてあった内容は、一般に伝わっている内容と全く違っていた。
「特殊魔力統制組織、俗名・闇の組織とは元々は闇の魔術の最たる使い手である魔導士ライナス・アークによって作られた団体であり・・・」
(ライナス?)
ライナス・イーサン・ベルフォート・・・イーサンの名前。
これはただの偶然だろうか?
「・・・扱いの難しい闇の魔力を持つ子供達に、魔力の制御方法、魔術の操作方法を教授する為の機関として始まった・・・」
(そう言えば!)
「イーサンも言ってました!。闇の組織は闇の魔力を持ってしまった子供達を保護をしているって」
「うむ・・・それに、最初は皇国の支援を受けた公的機関だったようだ。それが、何故か今は犯罪組織として国と対立している」
「この頁も見てください」
ディーンが本をめくる。
「ここには、魔導士ライナス・アークについて書かれているのですが、彼はこの皇国の初代皇帝であるアンファエルン・レイヴンズクロフト様と関係が深かったようです」
「何?」
アンファエルン・レイヴンズクロフトはトラヴィスやパーシヴァルの先祖にあたる。
昔、この大陸が戦乱の世の中だった頃に、一人で民衆の先頭にたって、この地に平和をもたらしたと言う正真正銘の英雄だ。
(何せ国の名前に彼の名がついてるくらいだもんね)
だけどトラヴィスが読んだ文章は、私達の常識を覆すものだった。
「魔導士ライナス・アークは騎士アンファエルン・レイヴンズクロフト、そして聖女であるヘンルーカ・ヴェリティと共に戦い、この地に新しい皇国を設立した・・・だと?」
「え!?そんな話、歴史の授業で習った事無いですよ?」
トラヴィスも苦い顔で頷く。
「ああ、どこの文献にもこんな話は書かれていない・・・しかも初代皇帝はその時の聖女と結婚したはず。聖女の名はエンリル。エンリル・レイヴンズクロフトが初代皇妃の名前だ」
「聖女が二人いたって事ですか?」
「・・・分からない」
なんだか色々矛盾してる。歴史に伝わってない魔導士ライナスと聖女ヘンルーカ。この二人は何者なのだろう?
「うん、どうやら天井に灯り用の魔術具が埋め込まれている。重要な古書があるこの部屋で、火を使わない様にだろう」
禁書の部屋は思っていたよりも広かった。本棚が幾つもあり、そして蔵書も想像以上に多い。
(こ、これを全部調べるの?)
図書館の棚と違って分類されて無さそうだし、片っ端から見ていくしかない。そう思うと気が遠くなりそうだった。
トラヴィスは溜息をつくと、
「どうやら我が皇国には隠しておきたい事が多々あるようだな」
呆れたようにそう言った。
私達は手分けして本を調べて行った。キーワードはもちろん「闇の組織」と「闇の魔力」。
調べていく内に、私は冷や汗が止まらなくなった。
(これ・・・私が見て良いの?)
さすが禁書の部屋。手に取る本の内容には、かなりショッキングなものが多かった。
過去の皇帝の醜聞だったり、邪魔な貴族を滅亡させる為の陰謀の方法やガチな魔術での呪いのかけ方。
はては魔術で人造人間を造る研究などの本もあり、思わず「フランケンかよ!?」と突っ込みたくなった。
(あまり、内容を頭に入れない様にしよう・・・)
その方が身の為の気がした。
二つ隣の本棚ではトラヴィスが調べている。眉間にしわが寄っているところを見ると、手に持っているのはどうもロクでも無い内容の本のようだ。
そう言えば、仲間達に私が別の世界から来た事がバレてからしばらくして、トラヴィスは自分が同じ世界からの転生者である事を皆に打ち明けた。
トラヴィス曰く「隠しておくと、話をするとき面倒なのよ」というのが理由だ。
だけど、自分が過去生で女性であった事はしっかり伏せている。もちろん皇太子としての威厳を保ちたいからだろう。
(一回やらかしてるもんね)
初めてイーサンに会った時の暴走の事である。
あの場に居た者は皆、何も言わないけれど多分覚えているだろう。
おかげで一時期、皇太子が男色だと言う噂がたった(まぁ半分は私のせいだけど・・・)
仲間たちはトラヴィスの告白に驚いたようだったけど、
「だからアリアナを秘書にしたのですね」
とクラークやディーンも腑に落ちたようだ。おかげで皆が居る所でもトラヴィスと前の世界の話が出来るようになったので助かる。
しかも、未知の世界の記憶を持つトラヴィスは、皆から・・・主にパーシヴァルとミリアからだけど・・・完全無欠かつ神秘の存在として見られるようになった。
(神秘・・・OLねーさんの口調で話してるトラヴィスを見せてやりたいよ)
機械的にキーワードを探して本を調べつつ、私は乾いた笑みを浮かべた。すると、
「ありました」
左側の壁にある書棚を調べていたディーンが声を上げた。
私もトラヴィスも慌ててディーンに駆け寄り、彼が示す頁を覗きこんだ。
「これは・・・闇の組織の成り立ちか?」
そこに書いてあった内容は、一般に伝わっている内容と全く違っていた。
「特殊魔力統制組織、俗名・闇の組織とは元々は闇の魔術の最たる使い手である魔導士ライナス・アークによって作られた団体であり・・・」
(ライナス?)
ライナス・イーサン・ベルフォート・・・イーサンの名前。
これはただの偶然だろうか?
「・・・扱いの難しい闇の魔力を持つ子供達に、魔力の制御方法、魔術の操作方法を教授する為の機関として始まった・・・」
(そう言えば!)
「イーサンも言ってました!。闇の組織は闇の魔力を持ってしまった子供達を保護をしているって」
「うむ・・・それに、最初は皇国の支援を受けた公的機関だったようだ。それが、何故か今は犯罪組織として国と対立している」
「この頁も見てください」
ディーンが本をめくる。
「ここには、魔導士ライナス・アークについて書かれているのですが、彼はこの皇国の初代皇帝であるアンファエルン・レイヴンズクロフト様と関係が深かったようです」
「何?」
アンファエルン・レイヴンズクロフトはトラヴィスやパーシヴァルの先祖にあたる。
昔、この大陸が戦乱の世の中だった頃に、一人で民衆の先頭にたって、この地に平和をもたらしたと言う正真正銘の英雄だ。
(何せ国の名前に彼の名がついてるくらいだもんね)
だけどトラヴィスが読んだ文章は、私達の常識を覆すものだった。
「魔導士ライナス・アークは騎士アンファエルン・レイヴンズクロフト、そして聖女であるヘンルーカ・ヴェリティと共に戦い、この地に新しい皇国を設立した・・・だと?」
「え!?そんな話、歴史の授業で習った事無いですよ?」
トラヴィスも苦い顔で頷く。
「ああ、どこの文献にもこんな話は書かれていない・・・しかも初代皇帝はその時の聖女と結婚したはず。聖女の名はエンリル。エンリル・レイヴンズクロフトが初代皇妃の名前だ」
「聖女が二人いたって事ですか?」
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