モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
上 下
199 / 284
第7章 悪役令嬢は目覚めたくない

23

しおりを挟む
(ゆゆゆ、幽霊!?)

んなわけは無い。だってここは私の意識世界だ。

でも、その私の世界になんでこの人が居る?

しかも、その人物はぼんやりとしていて向こう側が薄く空けて見えた。彼女は動くことなく、ただ私の方を見ている。

私は恐る恐る、

(だ、誰ですか!?)

と聞いた。

だけど女性は何も言わず目を閉じると、そのまま霧が散る様に消えてしまった。


呆然としたまま思わず唾を飲み込む。

(い、意識世界でも、幽霊って出るの?)

そうとしか思えない出来事だった。それにしても・・・

(綺麗な女の人だった・・・)

長いストレートの金髪にスカイブルーの瞳。誰かに似ていたような気もしたけど・・・


首筋を撫でるような気配に私は後ろを振り返った。

そこには私を捕えている鎖を握った黒い影が、相変わらず部屋の隅に立っている。

(見るだけで嫌な気分になるんだよな・・・)

それに鎖がまた太くなったようだ。

(ちぇ・・・)

私は黒い影に背を向けて、ソファに横になった。




どれくらい経ったのか、私は誰かの声で目を覚ました。

(あれ?)

知らない間に眠っていたらしい。

起き上がってスクリーンを見ると、クラークとトラヴィスが映っている。

「気分はどうだ?アリアナ嬢」

「問題はありませんわ、殿下」

どうやら3人はリビングに居る様だ。私は少し混乱した。

(え?今っていつ?)

ついさっきまで、アリアナは寝室で寝ていたと思ったのに・・・。

自分が眠ってしまってからの時間感覚が無い。3人の会話を聞くうちに、どうやらアリアナが目覚めてから丸一日経っているようで、という事は・・・


(うっそー!私、昨日のお昼からずっと眠ってたって事!?)


意識しかないから、疲れた訳でも無いだろうに・・・。

(危ないな・・・下手に眠るといつ起きれるのか分からないぞ)

じゃらっと鎖の音が鳴る。手足の枷も、それに繋がっている鎖も眠る前のまま・・・いや、少し重みを増している気がした。それに黒い影も少し大きくなったように思うのは気のせいか?

(うかつだった・・・。あの影は私を眠らせたいんだった)

自分から相手の思惑に乗ってどうすんのよ!と、頭を抱えていたら、

「では・・・やはりノエルは精神魔術にかけられていたんですね」

クラークの声が聞こえた。

「ああ、モーガンと接触した所を二人とも捕える事が出来た。しかし・・・」

(え!モーガン先生を捕まえられたの?)

それは凄い大前進じゃない?

(ノエルに見張りを付けてるって言ってたもんね。さすがトラヴィス、抜かりないじゃん)

だけど、トラヴィスの次の言葉を聞いて、私は愕然とした。

「・・・まさか、モーガン先生も精神魔術の支配下にあったとは」

(え!?)

モーガン先生が精神魔術に!?

(ど、ど、どういう事!?)

「女生徒達やノエルに精神魔術をかけたのはモーガン先生のようです。リリーの聖魔術で解術出来ましたしね。しかし、そのモーガン先生自体が強い精神魔術で操られていたとなると・・・」

クラークが言葉を詰まらせる。トラヴィスは溜息をついて、

「もう一人の術師の正体が掴めなくなると言う事だ」

重い口調でそう言った。

私は唖然としたまま考えを巡らせた。

(えーっとつまり、モーガン先生は私達に精神魔術をかけた術師と仲間だと思ってたけど、そうでは無かったって事?)

モーガン先生の行動は精神魔術で操られていたから彼女の意思では無かった。

(そんな!だって、モーガン先生は闇の組織と繋がってるんでしょ?。今回の事は闇の組織の仕業なんだよね?)

そう考えて、ふと疑問が浮かぶ。

(イーサンは、もう一人の精神魔術師については何も言ってなかった・・・)

彼は闇の組織に属してないとは言え、かなり内部に入り込んでいる。その彼が知らないなんて事あるだろうか?

(イーサンも知らない人物・・・)

背中にぞくっと寒気が走った。


「モーガン先生にかけられた精神魔術の解術は?」

外の世界でアリアナが聞いた。

「相手は魔力が強い上に、魔力増幅の宝珠を使っている。リリーの一人の力では解術出来なかった」

「マーリンとエメライン王女の力は借りれないのですか?」

アリアナの言葉にトラヴィスとクラークは顔を見合わせた。

「実は・・・アリアナ嬢でなければ手を貸して貰えるかと思い、マーリンに頼んではみたのだが、彼女の力では足りなかったのだ。リリーと合わせても解術出来なかった」

「ではエメライン王女は?」

トラヴィスが顔をしかめた。

「我々に協力する気は無いそうだ」

トラヴィスは溜息をつきながら、リビングのソファにドカッと座った。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

処理中です...