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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない
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「『彼女』は不思議とアリアナに似ていたんだ。言動や振る舞いは正反対と言っていい程違うのに、僕も両親も何故か『彼女』の中にアリアナに似た部分を感じてしまっていた。だから僕達は自然と『彼女』をアリアナとして見る事が出来たんだと思う。あの大きな光は、もしかしたら小さなアリアナの精神を補う為に来てくれたのではないかって、そんな風にさえ思えたんだ。」
それを聞いて流石に首を傾げた。
(いやいやいやいや、そんなわけないでしょ!?)
全然似てないぞ!?
さっきからのアリアナのお嬢様っぷりを見て良く分かった!私は公爵令嬢としては全くの劣等生だった。
(くっ・・・。勉強と礼儀作法は完璧だと自負していたけど・・・態度というか滲み出るものが違うというか)
まぁ、これが育ちというものかもしれない。
「それに、僕達は気づいてしまったんだ『彼女』の抱えている寂しさに」
(ん?)
私はクラークの言った事にドキッとした。
「僕達と居る時、彼女はとても幸せそうで・・・単に僕を兄と呼んだり、両親に話しかけるだけで、ずっと欲しかった願いが叶ったような顔をしいた。・・・そんな様子を見ているとね、僕達はもう彼女に何も言えなくなってしまったんだ」
(・・・・)
「彼女がアリアナの身体に来る以前に、いったいどんな人生を送って来たのかは分からないけどね・・・」
胸の奥がきゅっとなる様な・・・嬉しいのか、恥ずかしいのか、いたたまれないのとも少し違う、そんな良く分からない感情。
(・・・ありがと)
私はこの世界に来て、とてもとても恵まれていたのだ・・・。
そんな風に浸っていたら、
「あの子の事なら、トラヴィス殿下が一番良くご存知でしてよ、お兄様。」
アリアナの言葉に、一瞬で部屋の空気が変わった気がした。
「殿下はそれはそれは、あの子と仲良しですのよ。そうですわよね、殿下?。とてもあの子を可愛がってらしたし、あの子も殿下に懐いてるようでしたわ。それに、そうそう殿下はあの子がわたくしと違う事も、最初からご存知でしたものね?」
アリアナの口調にからかう様な響きが混じる。
「・・・何の事かな?」
顔には完璧皇子の笑みが張り付いていたが、トラヴィスの目は「この小娘が!いらん事を!」と語っていた。
心なしかクリフとディーンの顔もこわばっている様な気がするがどうしてだろう?。それに何故かレティシアの目がらんらんと輝き始めた。
アリアナはくすくす笑っていたが、これ以上トラヴィスをからかう気は無さそうだ。
(へぇ!トラヴィスねーさんを手玉に取るなんて、アリアナってばたいしたもんだわ)
つい感心してしまった。
トラヴィスは咳払いをして、
「事情は分かった。それで・・・大事な事を聞きたいのだが」
「はい、なんでしょう?」
「どうして今、君が表に出ている?。そして君の言う『あの子』はどうなったのだ?」
(う・・・・やっぱりそれを聞いちゃうか・・・)
トラヴィスは優しいけど、それだけじゃない・・・。ある部分は厳しくて容赦が無い。
(・・・手加減はしない・・・か)
でもさ、今のアリアナが本物のアリアナである以上、この状態が自然なんだよ?。
私が再び表に出るのはおかしいんだ。そんなのアリアナだってクラークだって望んで無いだろうし、アリアナの両親だってそうだ。
・・・だから、トラヴィス。そんな事聞いちゃいけないんだよ。
(私の身体じゃないんだから・・・。私はさ、このままアリアナの中から皆の事を見守っていくよ)
なんて、まるでご先祖様のような気持ちでしみじみしていると、アリアナがとんでもない事を言い出した。
「わたくしが表に出ているのは異常な事なのです。先ほども言ったように、あの子は強力な精神魔術によって封じられています。術師はこの身体の中に、わたくしとあの子の二人の精神が存在する事を知らなかったはずです。だから眠らされたのはあの子だけで済んだのです」
「なるほど・・・それで?」
「今はあの子の力の残り火で動けていますが、恐らく今の封じられている状態では、この身体はあの子の力を得る事が出来ないのです。既に・・・その兆候が出て来ていますわ」
アリアナはそう言って、疲れた様に息を吐いた。
(え、そうなの!?。いや、力ぐらい幾らだって出すよ!)
えい!えい!っと、私はどうにかならないか、気張ってみた・・・が、どうも身体が無いと上手くいかない。今の私は意識だけの存在なのだ。
(ちょ、ちょっともう!どうにかならないの?)
そしてふと気づいた。アリアナの視界から見る外の景色が、いつの間にか映画館のスクリーンの様になっているのだ。
(はーん、今私が居るのは私の意識世界って事だよね?。だから、私の馴染みのある形に具現化したって事かな?)
だったら自分の姿も具現化できるかもしれない。今の空気に溶けてる様な状況だと、どうにも心もとないのだ。
私は自分の姿をゆっくり思い浮かべる。手足、身体、そして顔・・・。私はまぶたを開け自分の身体を見た。
(おっ出来た!)
やった!、意識世界での自分の身体の具現化に成功したぜ。そして少し驚く。その身体はどう見てもアリアナよりも大きかったのだ。
(そっか・・・アリアナになる前の・・・)
顔は見えないけど、それは前の世界の私の姿だった。
(ノスタルジーだねぇ・・・)
そう思いながら自分の手足を良く見てギョッとした。
私の両手両足には黒い枷が付けられていて、しかも鎖でつながれていたのだ。
それを聞いて流石に首を傾げた。
(いやいやいやいや、そんなわけないでしょ!?)
全然似てないぞ!?
さっきからのアリアナのお嬢様っぷりを見て良く分かった!私は公爵令嬢としては全くの劣等生だった。
(くっ・・・。勉強と礼儀作法は完璧だと自負していたけど・・・態度というか滲み出るものが違うというか)
まぁ、これが育ちというものかもしれない。
「それに、僕達は気づいてしまったんだ『彼女』の抱えている寂しさに」
(ん?)
私はクラークの言った事にドキッとした。
「僕達と居る時、彼女はとても幸せそうで・・・単に僕を兄と呼んだり、両親に話しかけるだけで、ずっと欲しかった願いが叶ったような顔をしいた。・・・そんな様子を見ているとね、僕達はもう彼女に何も言えなくなってしまったんだ」
(・・・・)
「彼女がアリアナの身体に来る以前に、いったいどんな人生を送って来たのかは分からないけどね・・・」
胸の奥がきゅっとなる様な・・・嬉しいのか、恥ずかしいのか、いたたまれないのとも少し違う、そんな良く分からない感情。
(・・・ありがと)
私はこの世界に来て、とてもとても恵まれていたのだ・・・。
そんな風に浸っていたら、
「あの子の事なら、トラヴィス殿下が一番良くご存知でしてよ、お兄様。」
アリアナの言葉に、一瞬で部屋の空気が変わった気がした。
「殿下はそれはそれは、あの子と仲良しですのよ。そうですわよね、殿下?。とてもあの子を可愛がってらしたし、あの子も殿下に懐いてるようでしたわ。それに、そうそう殿下はあの子がわたくしと違う事も、最初からご存知でしたものね?」
アリアナの口調にからかう様な響きが混じる。
「・・・何の事かな?」
顔には完璧皇子の笑みが張り付いていたが、トラヴィスの目は「この小娘が!いらん事を!」と語っていた。
心なしかクリフとディーンの顔もこわばっている様な気がするがどうしてだろう?。それに何故かレティシアの目がらんらんと輝き始めた。
アリアナはくすくす笑っていたが、これ以上トラヴィスをからかう気は無さそうだ。
(へぇ!トラヴィスねーさんを手玉に取るなんて、アリアナってばたいしたもんだわ)
つい感心してしまった。
トラヴィスは咳払いをして、
「事情は分かった。それで・・・大事な事を聞きたいのだが」
「はい、なんでしょう?」
「どうして今、君が表に出ている?。そして君の言う『あの子』はどうなったのだ?」
(う・・・・やっぱりそれを聞いちゃうか・・・)
トラヴィスは優しいけど、それだけじゃない・・・。ある部分は厳しくて容赦が無い。
(・・・手加減はしない・・・か)
でもさ、今のアリアナが本物のアリアナである以上、この状態が自然なんだよ?。
私が再び表に出るのはおかしいんだ。そんなのアリアナだってクラークだって望んで無いだろうし、アリアナの両親だってそうだ。
・・・だから、トラヴィス。そんな事聞いちゃいけないんだよ。
(私の身体じゃないんだから・・・。私はさ、このままアリアナの中から皆の事を見守っていくよ)
なんて、まるでご先祖様のような気持ちでしみじみしていると、アリアナがとんでもない事を言い出した。
「わたくしが表に出ているのは異常な事なのです。先ほども言ったように、あの子は強力な精神魔術によって封じられています。術師はこの身体の中に、わたくしとあの子の二人の精神が存在する事を知らなかったはずです。だから眠らされたのはあの子だけで済んだのです」
「なるほど・・・それで?」
「今はあの子の力の残り火で動けていますが、恐らく今の封じられている状態では、この身体はあの子の力を得る事が出来ないのです。既に・・・その兆候が出て来ていますわ」
アリアナはそう言って、疲れた様に息を吐いた。
(え、そうなの!?。いや、力ぐらい幾らだって出すよ!)
えい!えい!っと、私はどうにかならないか、気張ってみた・・・が、どうも身体が無いと上手くいかない。今の私は意識だけの存在なのだ。
(ちょ、ちょっともう!どうにかならないの?)
そしてふと気づいた。アリアナの視界から見る外の景色が、いつの間にか映画館のスクリーンの様になっているのだ。
(はーん、今私が居るのは私の意識世界って事だよね?。だから、私の馴染みのある形に具現化したって事かな?)
だったら自分の姿も具現化できるかもしれない。今の空気に溶けてる様な状況だと、どうにも心もとないのだ。
私は自分の姿をゆっくり思い浮かべる。手足、身体、そして顔・・・。私はまぶたを開け自分の身体を見た。
(おっ出来た!)
やった!、意識世界での自分の身体の具現化に成功したぜ。そして少し驚く。その身体はどう見てもアリアナよりも大きかったのだ。
(そっか・・・アリアナになる前の・・・)
顔は見えないけど、それは前の世界の私の姿だった。
(ノスタルジーだねぇ・・・)
そう思いながら自分の手足を良く見てギョッとした。
私の両手両足には黒い枷が付けられていて、しかも鎖でつながれていたのだ。
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