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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない
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「僕は馬車での出来事を両親に話しました。そして『彼女』に対してどう接するか話し合い、まずはアリアナとして対応して様子を見る事にしたのです」
(そ、そうでしたか・・・)
私はクラークの話を冷や汗もので聞いていた。だって、最初から全部バレてたとなると・・・
(あ~恥ずかしい!なんかもう色々恥ずかしいぞ!)
顔を隠してじたばた転げまわりたい気分だった。
(わ、私、結構クラークの事、「お兄様ぁ」とか言って甘えてたし、アリアナの両親にだって娘ぶった態度とってたし・・・あ~もう、なんか自分が痛い・・・)
穴があったら入って埋めたい。
私の煩悶には気づかないクラークは話を続けた。
「『彼女』は最初の頃、とても戸惑っていました。どうしてこうなったのか分らない様子で、もちろんアリアナとしての記憶は無く、貴族の礼儀作法やマナーなども分からない状態でした。幸いというか都合が良く、医者はショックによる記憶喪失と判断してくれたので、僕達はそれに便乗する形でしばらく観察する事にしたんです。すると驚いた事に『彼女』は学園に行くまでの一カ月の間で、貴族として必要な知識を全て習得してしまいました。教養に関しては家庭教師が舌を巻くほどに。・・・そしてその頃には、『彼女』も『アリアナ』として生きる覚悟を決めた様に見えました」
(そりゃまぁ、あの時は必死でしたから・・・)
火事場のなんちゃらですよ。
(覚悟というか、どうしょうもなかっただけだよ?)
「『彼女』は学園に入学するにあたって、何か真剣に悩んでいるようでした。それに不思議な事ですが、このアンファエルン学園に対して強い思い入れがあるように感じましたし、・・・何か知っている様にも見えました」
(・・・す、鋭いなクラーク!)
こんな人を騙し通せると思った私がばかだった。
(そうだったなぁ・・・。あの頃は状況が良く分からなくて、ただただ自分が良くやってた乙女ゲームの悪役令嬢になってる事に焦っていた。ストーリーの先にある断罪や、ロリコンとの結婚が怖くて、そこから逃げる事だけを考えていた)
だから、悪役令嬢アリアナがこれまでどうやって生きて来たのか、考える事も無かった。クラークやアリアナの両親達の本当の思いにも気付かなかった。
(浅はか過ぎ・・・)
己を恥じよ!と昔の自分に言ってやりたい。
「そして僕達は再び話し合った結果、『彼女』をアリアナとして愛する事に決めました。理由は3つあります。一つは彼女がアリアナの精神を身体に戻し、命を助けてくれたから・・・」
(いやあ・・・だから、全然覚えが無いんだって・・・)
命の恩人っぽく言われているけど、私は何もしてない。した記憶も無い。だから繰り返し言われると心苦しくなる。
「そして、二つ目は『彼女』がアリアナの身体に入って以来、魔力の供給を必要としなくなったからです」
(あっ!)
そういえば、そうだ!私はクラークに魔力を流して貰った事なんて一度も無かった。
「アリアナは普通に生活できるようになりました。魔力を流さなくても、頭痛や体調の悪さに悩まされる事も無く、健常な生活を維持できるようになったのです。そして何よりも、早すぎる命の期限に僕達は怯えなくて良くなりました」
「成程、アリアナの身体に大きな精神が宿った事で、身体を維持する力を得たと言う事なのか?。だが、それでもアリアナには魔力も『脈』無い。一体どうやって身体に力をまわしている?」
トラヴィスの問いにはアリアナが答えた。
「それについては、誰にも分かりませんわ。わたくしの持って生まれた質としか言いようがありません。でも、あの子の持つ強い力は確実にわたくしの身体と心を変えてくれましたわ。」
「心も?」
「はい」
アリアナは頷き、真っすぐトラヴィスを見た。
「わたくし、この身体の中であの子がこれまで経験した事を、全て見たり聞いたりする事が出来ましたの。・・・まるで、夢を見ている様な感覚でしたけど、これが現実だって分かってましたわ」
「全部・・・見てた?」
心なしかトラヴィスの声がこわばった気がした。
(ぷぷぷっ・・・ねーさん焦ってる。アラサーOLの部分も見られてたって事だもんね)
吹き出しそうになってしまった。
でも、あのトラヴィスねーさんを見た時は、さぞかしアリアナも驚いた事だろう。
(ギャップどころじゃ無いもんね)
アリアナはトラヴィスの微妙な反応に気付いたのか気づいて無いのか、話しを続ける。
「ええ、見てましたわ。それで気づきましたの。あの子は服のセンスが無くて、口が悪くて、食いしん坊で、お人好しで、とんでもなく鈍感だけど、・・・他人に対して酷く優しいのです。自分よりも目の前にいる人を大事にするのです。・・・わたくし、最初はそれに反発していましたわ。他人に優しくする事もされることも嫌いでしたもの。偽善で自己満足だって。優しさなんて、満たされてる者の驕りだって思ってましたわ」
アリアナの口調が強くなった。だけど直ぐに急に力が抜けた様に、
「・・・なのにあの子は息を吸う様に、自然に相手の事を考えるのですわ。自分を攻撃した者に対してでさえ、直ぐに心を寄せるのです。・・・理解できませんでしたわ」
そう言ってため息ついた。
(ちょ、ちょっとやめて!私、そこまでじゃ無いよ!? )
アリアナの言葉に顔が赤くなる思いだった。
(なんか、めちゃ褒められてる?!・・・褒められてるんだよね?。最初の方はかなり、けなされてた気もするけど・・・)
「そんな彼女と一緒にいるうちに、わたくし嫌でも分かってしまったのですわ。彼女の優しさは・・・ずっと、私がそうしたかった事なのだって・・・彼女のように生きる事に本当は憧れてたのですわ。だからわたくし、いつの間にかあの子の気持ちに共感していましたの」
はにかむようにそう言ったアリアナにリリーが突然、
「似てますもの!」
と言った。
「アリアナ様と、あの・・もう一人の『アリアナ様』はとても似てるんです。その・・・優しい部分が!。私には分かるんです!」
「似てる?わたくしとあの子が?」
「ええ!」
「ありがとう・・・」
アリアナの声が柔らかく震えた。
クラークはアリアナの手に片手を添えると、
「それが3つ目の理由なんだ」
そう言ってアリアナを優しく見つめた。
(そ、そうでしたか・・・)
私はクラークの話を冷や汗もので聞いていた。だって、最初から全部バレてたとなると・・・
(あ~恥ずかしい!なんかもう色々恥ずかしいぞ!)
顔を隠してじたばた転げまわりたい気分だった。
(わ、私、結構クラークの事、「お兄様ぁ」とか言って甘えてたし、アリアナの両親にだって娘ぶった態度とってたし・・・あ~もう、なんか自分が痛い・・・)
穴があったら入って埋めたい。
私の煩悶には気づかないクラークは話を続けた。
「『彼女』は最初の頃、とても戸惑っていました。どうしてこうなったのか分らない様子で、もちろんアリアナとしての記憶は無く、貴族の礼儀作法やマナーなども分からない状態でした。幸いというか都合が良く、医者はショックによる記憶喪失と判断してくれたので、僕達はそれに便乗する形でしばらく観察する事にしたんです。すると驚いた事に『彼女』は学園に行くまでの一カ月の間で、貴族として必要な知識を全て習得してしまいました。教養に関しては家庭教師が舌を巻くほどに。・・・そしてその頃には、『彼女』も『アリアナ』として生きる覚悟を決めた様に見えました」
(そりゃまぁ、あの時は必死でしたから・・・)
火事場のなんちゃらですよ。
(覚悟というか、どうしょうもなかっただけだよ?)
「『彼女』は学園に入学するにあたって、何か真剣に悩んでいるようでした。それに不思議な事ですが、このアンファエルン学園に対して強い思い入れがあるように感じましたし、・・・何か知っている様にも見えました」
(・・・す、鋭いなクラーク!)
こんな人を騙し通せると思った私がばかだった。
(そうだったなぁ・・・。あの頃は状況が良く分からなくて、ただただ自分が良くやってた乙女ゲームの悪役令嬢になってる事に焦っていた。ストーリーの先にある断罪や、ロリコンとの結婚が怖くて、そこから逃げる事だけを考えていた)
だから、悪役令嬢アリアナがこれまでどうやって生きて来たのか、考える事も無かった。クラークやアリアナの両親達の本当の思いにも気付かなかった。
(浅はか過ぎ・・・)
己を恥じよ!と昔の自分に言ってやりたい。
「そして僕達は再び話し合った結果、『彼女』をアリアナとして愛する事に決めました。理由は3つあります。一つは彼女がアリアナの精神を身体に戻し、命を助けてくれたから・・・」
(いやあ・・・だから、全然覚えが無いんだって・・・)
命の恩人っぽく言われているけど、私は何もしてない。した記憶も無い。だから繰り返し言われると心苦しくなる。
「そして、二つ目は『彼女』がアリアナの身体に入って以来、魔力の供給を必要としなくなったからです」
(あっ!)
そういえば、そうだ!私はクラークに魔力を流して貰った事なんて一度も無かった。
「アリアナは普通に生活できるようになりました。魔力を流さなくても、頭痛や体調の悪さに悩まされる事も無く、健常な生活を維持できるようになったのです。そして何よりも、早すぎる命の期限に僕達は怯えなくて良くなりました」
「成程、アリアナの身体に大きな精神が宿った事で、身体を維持する力を得たと言う事なのか?。だが、それでもアリアナには魔力も『脈』無い。一体どうやって身体に力をまわしている?」
トラヴィスの問いにはアリアナが答えた。
「それについては、誰にも分かりませんわ。わたくしの持って生まれた質としか言いようがありません。でも、あの子の持つ強い力は確実にわたくしの身体と心を変えてくれましたわ。」
「心も?」
「はい」
アリアナは頷き、真っすぐトラヴィスを見た。
「わたくし、この身体の中であの子がこれまで経験した事を、全て見たり聞いたりする事が出来ましたの。・・・まるで、夢を見ている様な感覚でしたけど、これが現実だって分かってましたわ」
「全部・・・見てた?」
心なしかトラヴィスの声がこわばった気がした。
(ぷぷぷっ・・・ねーさん焦ってる。アラサーOLの部分も見られてたって事だもんね)
吹き出しそうになってしまった。
でも、あのトラヴィスねーさんを見た時は、さぞかしアリアナも驚いた事だろう。
(ギャップどころじゃ無いもんね)
アリアナはトラヴィスの微妙な反応に気付いたのか気づいて無いのか、話しを続ける。
「ええ、見てましたわ。それで気づきましたの。あの子は服のセンスが無くて、口が悪くて、食いしん坊で、お人好しで、とんでもなく鈍感だけど、・・・他人に対して酷く優しいのです。自分よりも目の前にいる人を大事にするのです。・・・わたくし、最初はそれに反発していましたわ。他人に優しくする事もされることも嫌いでしたもの。偽善で自己満足だって。優しさなんて、満たされてる者の驕りだって思ってましたわ」
アリアナの口調が強くなった。だけど直ぐに急に力が抜けた様に、
「・・・なのにあの子は息を吸う様に、自然に相手の事を考えるのですわ。自分を攻撃した者に対してでさえ、直ぐに心を寄せるのです。・・・理解できませんでしたわ」
そう言ってため息ついた。
(ちょ、ちょっとやめて!私、そこまでじゃ無いよ!? )
アリアナの言葉に顔が赤くなる思いだった。
(なんか、めちゃ褒められてる?!・・・褒められてるんだよね?。最初の方はかなり、けなされてた気もするけど・・・)
「そんな彼女と一緒にいるうちに、わたくし嫌でも分かってしまったのですわ。彼女の優しさは・・・ずっと、私がそうしたかった事なのだって・・・彼女のように生きる事に本当は憧れてたのですわ。だからわたくし、いつの間にかあの子の気持ちに共感していましたの」
はにかむようにそう言ったアリアナにリリーが突然、
「似てますもの!」
と言った。
「アリアナ様と、あの・・もう一人の『アリアナ様』はとても似てるんです。その・・・優しい部分が!。私には分かるんです!」
「似てる?わたくしとあの子が?」
「ええ!」
「ありがとう・・・」
アリアナの声が柔らかく震えた。
クラークはアリアナの手に片手を添えると、
「それが3つ目の理由なんだ」
そう言ってアリアナを優しく見つめた。
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