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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない
6(ジョージア)
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「・・・このまま目を醒まさないとなると体力面での消耗が心配です・・・やはり、早急に魔術の解術が必要かと・・・」
(そりゃそうよね)
医者が部屋を出て行くのを横目で見ながら、私は腕を組んで壁にもたれた。すると、ソファに座り込んでいたリリーが思いついたように立ち上がった。
「殿下、クラーク様。私にもう一度、アリアナ様の解術を試させてください!」
「リリー、アリアナ嬢を眠らせてる精神魔術は君の能力を超えている。何度やっても難しいだろう。」
トラヴィス殿下はリリーに諦めさせるためか、少し厳しい口調ではっきりと言った。
でも、リリーは首を横に振った。彼女の目に強い光が戻ってきている。
「二人でならどうですか!?」
「どういう事だ?」
トラヴィス殿下が怪訝そうに聞く。私達も首を傾げた。
「二人以上の力でアリアナ様に聖魔術を施すのです。魔力増幅の道具の力で魔力を強める事が出来るのなら、人間同士でもそれが可能なのでは無いですか?」
トラヴィス殿下はリリーの意見に眉をひそめた。
「あいにくだが他人に魔力を貸す事は出来ない。魔力の質がお互い違うからね。魔力圧を受けた時の様に中毒症状を起こしてしまうだろう。よほど、魔力の性質が似ている者同士であれば可能かもしれない・・・が、そういう相手はなかなか居ない。君に魔力を貸せる様な人物を探すのは難しいと思う。」
だけど、リリーはそうでは無いとかぶりを振った。
「違います。魔力を借りるのではなく、複数の者が同時にアリアナ様に聖魔術で解術を行えばどうですか?。アリアナ様にかけられた精神魔術の魔力を、超える事が出来るのでは無いでしょうか?」
リリーの言葉に部屋に居たほとんどがハッとさせられた。
(なる・・・そういう手があったの。・・・確かに攻撃系の魔術とかだと、同じ属性の魔術を合わせると威力が強くなったりするものね。そんな裏技があったとは・・・。おっと、これは報告案件じゃない?。あ~でも、今は外に出にくいかなぁ。急いで相談したいんだけど・・・)
「・・・確かに可能性はある。」
考え込むようにトラヴィス殿下に口元に手をやった。
「トラヴィス殿下!可能性があるのなら試してみましょう!」
クラーク様がすがる様な声を上げる。
「だが・・・、聖魔術の使い手をどうする?。聖魔術は光の魔力の持ち主で無いと使えない。今、この皇国にいる光の魔力の使い手は・・・」
「リリーとマーリン、それにエメライン王女ですね・・・」
ミリアが殿下の後を続ける
溜息の声が部屋中であがった。
私も呆れて、
「あのさぁ、アリアナ様を嫌ってるマーリンが手伝ってくれるわけ無いじゃない。エメライン王女だって、アリアナ様を殺そうとしたのよ?。協力させるのは無理じゃない?」
つい口に出てしまった。
「でも、それは二人とも精神魔術で操られていたからです!。魔術が解ければ大丈夫な筈でしょう?・・・マーリンの解術なら私が出来ます。そうすれば、きっと助けてくれるはず・・・」
「そうかなぁ?」
(甘くない?)
「殿下!もうマーリンの解術をしても良いのですよね!?」
リリーの問いにトラヴィス殿下が頷きつつ、
「確かに、モーガンが姿を消した以上もう様子を見る事は無い。マーリンや他の生徒の解術も急いだほうが良いだろう。・・・ディーンもマーリンに付きまとわれて困っているのだろう?」
「いえ・・・私は別に・・・」
歯切れの悪い答え方をしたディーンに、パーシヴァル殿下が珍しく剣のある目を送った。
「へぇ、まんざらでも無かったって事か?」
糾弾する様な口調だ。
ディーンはパーシヴァル殿下を鋭く睨んだが、殿下はさらに口調を荒げた。
「だってそうだろう?あれだけベタベタ見せつけられれば、お前にもその気があるのかと思うさ!アリアナ嬢だってきっとそう思ったはずだ!」
ディーンは顔を赤らめ、何か言い返そうと口を開きかけたが、思い直したように口を引き締めると、パーシヴァル殿下から顔を背けた。
まだ気持ちが収まらない様子のパーシヴァル殿下はディーンの肩を掴もうとしたが、
「パーシヴァルやめろ。今はそんな事をしてる場合では無い。」
(仰る通り)
トラヴィス殿下の言葉にパーシヴァル殿下は腕を降ろして目を伏せた。
トラヴィス殿下はリリーに視線を戻した。
「リリー。マーリンを解術したとしてもアリアナの為に力を貸してくれるだろうか?。彼女は元からアリアナの事を良く思ってなかっただろう?」
「マーリンは、本来はとても優しい方なのです!。だからきっと・・・」
「そうかもしれないが心配は残る。マーリンはディーンに好意を持っている。婚約者であるアリアナに対し、良い思いを持っていないのは確実だ。そんな気持ちで上手く聖魔術を使えるだろうか?」
途端、リリーの顔がスッと青ざめ彼女は黙り込んでしまった。何故か酷く動揺している様だった。
「エメラインに関しても同じだ。精神魔術は解かれたが、アリアナを害する気持ちが無くなった保証は無い。今の状態のアリアナの所へ連れてくるのは危険だ」
(本当に仰る通りだわ)
どうやらこの中で、トラヴィス殿下が一番冷静そう。
さてどうしようか?と私は腕を組みなおす。この場を抜けるタイミングを見つけないと。それで、早くこの事を伝えに行くのだ。
まさか先生にあんな能力があるとは、きっとトラヴィス殿下でさえ想像できないなだろう。
(魔術の合わせ技なんてアイデアが出てくると思わなかったわ。おかげで上手くいきそうじゃない?)
私は口の端に笑みを浮かべた。
(そりゃそうよね)
医者が部屋を出て行くのを横目で見ながら、私は腕を組んで壁にもたれた。すると、ソファに座り込んでいたリリーが思いついたように立ち上がった。
「殿下、クラーク様。私にもう一度、アリアナ様の解術を試させてください!」
「リリー、アリアナ嬢を眠らせてる精神魔術は君の能力を超えている。何度やっても難しいだろう。」
トラヴィス殿下はリリーに諦めさせるためか、少し厳しい口調ではっきりと言った。
でも、リリーは首を横に振った。彼女の目に強い光が戻ってきている。
「二人でならどうですか!?」
「どういう事だ?」
トラヴィス殿下が怪訝そうに聞く。私達も首を傾げた。
「二人以上の力でアリアナ様に聖魔術を施すのです。魔力増幅の道具の力で魔力を強める事が出来るのなら、人間同士でもそれが可能なのでは無いですか?」
トラヴィス殿下はリリーの意見に眉をひそめた。
「あいにくだが他人に魔力を貸す事は出来ない。魔力の質がお互い違うからね。魔力圧を受けた時の様に中毒症状を起こしてしまうだろう。よほど、魔力の性質が似ている者同士であれば可能かもしれない・・・が、そういう相手はなかなか居ない。君に魔力を貸せる様な人物を探すのは難しいと思う。」
だけど、リリーはそうでは無いとかぶりを振った。
「違います。魔力を借りるのではなく、複数の者が同時にアリアナ様に聖魔術で解術を行えばどうですか?。アリアナ様にかけられた精神魔術の魔力を、超える事が出来るのでは無いでしょうか?」
リリーの言葉に部屋に居たほとんどがハッとさせられた。
(なる・・・そういう手があったの。・・・確かに攻撃系の魔術とかだと、同じ属性の魔術を合わせると威力が強くなったりするものね。そんな裏技があったとは・・・。おっと、これは報告案件じゃない?。あ~でも、今は外に出にくいかなぁ。急いで相談したいんだけど・・・)
「・・・確かに可能性はある。」
考え込むようにトラヴィス殿下に口元に手をやった。
「トラヴィス殿下!可能性があるのなら試してみましょう!」
クラーク様がすがる様な声を上げる。
「だが・・・、聖魔術の使い手をどうする?。聖魔術は光の魔力の持ち主で無いと使えない。今、この皇国にいる光の魔力の使い手は・・・」
「リリーとマーリン、それにエメライン王女ですね・・・」
ミリアが殿下の後を続ける
溜息の声が部屋中であがった。
私も呆れて、
「あのさぁ、アリアナ様を嫌ってるマーリンが手伝ってくれるわけ無いじゃない。エメライン王女だって、アリアナ様を殺そうとしたのよ?。協力させるのは無理じゃない?」
つい口に出てしまった。
「でも、それは二人とも精神魔術で操られていたからです!。魔術が解ければ大丈夫な筈でしょう?・・・マーリンの解術なら私が出来ます。そうすれば、きっと助けてくれるはず・・・」
「そうかなぁ?」
(甘くない?)
「殿下!もうマーリンの解術をしても良いのですよね!?」
リリーの問いにトラヴィス殿下が頷きつつ、
「確かに、モーガンが姿を消した以上もう様子を見る事は無い。マーリンや他の生徒の解術も急いだほうが良いだろう。・・・ディーンもマーリンに付きまとわれて困っているのだろう?」
「いえ・・・私は別に・・・」
歯切れの悪い答え方をしたディーンに、パーシヴァル殿下が珍しく剣のある目を送った。
「へぇ、まんざらでも無かったって事か?」
糾弾する様な口調だ。
ディーンはパーシヴァル殿下を鋭く睨んだが、殿下はさらに口調を荒げた。
「だってそうだろう?あれだけベタベタ見せつけられれば、お前にもその気があるのかと思うさ!アリアナ嬢だってきっとそう思ったはずだ!」
ディーンは顔を赤らめ、何か言い返そうと口を開きかけたが、思い直したように口を引き締めると、パーシヴァル殿下から顔を背けた。
まだ気持ちが収まらない様子のパーシヴァル殿下はディーンの肩を掴もうとしたが、
「パーシヴァルやめろ。今はそんな事をしてる場合では無い。」
(仰る通り)
トラヴィス殿下の言葉にパーシヴァル殿下は腕を降ろして目を伏せた。
トラヴィス殿下はリリーに視線を戻した。
「リリー。マーリンを解術したとしてもアリアナの為に力を貸してくれるだろうか?。彼女は元からアリアナの事を良く思ってなかっただろう?」
「マーリンは、本来はとても優しい方なのです!。だからきっと・・・」
「そうかもしれないが心配は残る。マーリンはディーンに好意を持っている。婚約者であるアリアナに対し、良い思いを持っていないのは確実だ。そんな気持ちで上手く聖魔術を使えるだろうか?」
途端、リリーの顔がスッと青ざめ彼女は黙り込んでしまった。何故か酷く動揺している様だった。
「エメラインに関しても同じだ。精神魔術は解かれたが、アリアナを害する気持ちが無くなった保証は無い。今の状態のアリアナの所へ連れてくるのは危険だ」
(本当に仰る通りだわ)
どうやらこの中で、トラヴィス殿下が一番冷静そう。
さてどうしようか?と私は腕を組みなおす。この場を抜けるタイミングを見つけないと。それで、早くこの事を伝えに行くのだ。
まさか先生にあんな能力があるとは、きっとトラヴィス殿下でさえ想像できないなだろう。
(魔術の合わせ技なんてアイデアが出てくると思わなかったわ。おかげで上手くいきそうじゃない?)
私は口の端に笑みを浮かべた。
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