モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

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閑話6 トラヴィスねーさんと攻略者達 

トラヴィスねーさんと攻略者達:パーシヴァル2

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会う時間が増えてからは、私はパーシヴァルに対し、徹底的に優しくした。何においても彼を優先し、愛情を示した。
すると、素直な彼は純粋に私を慕う様になってくれた。薔薇色に染まる頬で上目遣いに「兄上」と呼ばれ、必死で鼻血をこらえた。
自分で仕掛けた事だが、私はこの愛らしい弟にすっかり骨抜きになってしまったのだ。もちろん兄としての威厳を損なわないよう注意はしたが。

少し成長してからは、何事も彼の意見を聞き、パーシヴァルの自尊心を育てる様に接した。すると、自然と周りもパーシヴァルを見る目が変わって行った。身分の低い母から産まれた不遇の皇子では無く、皇太子の兄に信頼される聡明な第二皇子と言う風に。

(もともとパーシヴァルの能力は高いのよ。比較の対象がトラヴィスっていうのが不幸だっただけで)

今ではすっかり私の自慢の弟として成長してくれた。
人好きのする顔、他人の懐にスッと入っていけるしなやかさ、人の心をとらえる話術、彼の長所はそのままに捻くれる事無く真っすぐ育ってくれたと思う。

ただ一つ誤算だったことが・・・

(まさか、恋愛相手が男になってしまうとは思わなかったのよね・・・)

前世で腐のつく属性だった私にとって、美形の多いこの世界は最高の場所だ!

もちろん、トラヴィスとして生をを受けた私の恋愛対象は異性にある。しかし前世の記憶のせいか、ついつい妄想の世界が止まらなくなるのだ。

(あくまで楽しみとしてだけなんだけどね。)

パーシヴァルにも偏見を持って欲しく無いと思い、幾度となく男×男の恋愛の素晴らしさについて語ってきた。たまに前世の記憶が溢れすぎて、語りが暴走しそうになって危なかったが・・・。

しかもこの世界にもそういうカップルはいるようで、貴族や騎士の中にみちゅけた時は、私はパーシヴァルと一緒に彼らを応援したりした。

その結果・・・信じて欲しいが本当に予想外だったのだ・・・パーシヴァルは彼の親友であるディーンに道ならぬ恋をしてしまう事に・・・。

ゲーム設定でも、彼らは特に仲の良い信頼し合う親友だ。プレイヤーの中には彼らをカップリングにして二次創作をする者も多かった。ゲーム制作側もそれを狙ったのか、彼らの会話やイベントに匂わせる様なものが多かった気がするのだけど、

(私も、少し・・・ほんの少しよ?。そうならないかなぁって期待した事は否定できないけどぉ・・・)

でも実際そうなってみると、色々問題はあるわけで、何よりパーシヴァルが苦しい恋愛をしている事が辛い。自分が少なからず導いてしまった事に罪悪感も感じているのだ。

アンファエルン学園に入学してから、パーシヴァルは私と居る以外はずっとディーンのそばにいるようだ。

そして、攻略者の一人であるディーンはもうヒロインのリリーと出会っている。ディーンがヒロインと恋愛関係になるかは分からないけど、ゲーム通りなら既に好意を抱いてる筈だ。もちろん学年末のダンスパーティでは、彼はヒロインの為に自分の婚約者アリアナを断罪するのだろう。その時、パーシヴァルはどんな気持ちになるのか・・・?

(パーシヴァルだって攻略者の一人。もしヒロインが彼を選んでくれるのなら、私はとことん応援するんだけどねぇ・・・)

もしかしたら、パーシヴァルもリリーに惹かれるかもしれない。それこそ、ゲームの設定どおりに。

ただ・・・、これまでの私の行動でパーシヴァルの性格はすっかり変わってしまった。彼とヒロインとの出会いイベントである『裏庭でチャラくナンパ』は発生しないだろう。

本来なら、兄に劣等感を持つパーシヴァルは常に沢山の女生徒達と浮名を流しているはずだった。そしてディーンは親友としてそれを窘める立場になっていただろう。

ゲームではヒロインに対しても『ねぇ君、僕に遊ばれてみない?』や『僕達は出会うためにこの学園に来たんだよ』など、ハズいセリフを連発していたけれど、今のパーシヴァルにそれはありえない。

ヒロインを虐めの現場で助けるのはディーンの役目。ヒロインにアリアナの虐めを謝罪に来るのがクラーク。二人とリリーとのイベントはここから始まる。

だとしたら、今のパーシヴァルに残される可能性は・・・

(アリアナやクラスの女生徒に虐められたリリーを慰めるパターン!)

よこしまな前世を持つ我が身とは言え、兄としては大事な弟には楽しい恋愛をして欲しい。

(今は見守る事しか出来ないけど、お前の幸せの為なら私はいつでも力になるからね!)

アンファエルン学園の入学式。壇上で皇太子として挨拶をしながら私はそう誓ったのだ。






しかしながら、実際のパーシヴァルの行動は私の予想の斜め上を走った。
彼は、自分の愛するディーンの幸せの為に、ヒロイン・リリーとの仲をもとうとしたのだ。

私の弟・・・切ない・・・いじらしい・・・素晴らし過ぎる、もう最高かよ!
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