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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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「待ちなさい、アリアナ!」
何故かクラークが、私とヘルダー伯爵の間に割って入った。
「ヘルダー伯爵、アリアナを研究材料の様に使われるのは了承しかねます。」
珍しく怒気を含んだ口調だった。
「いえ、私はそんな・・・。」
ヘルダー伯爵は困惑した様子でトラヴィスの方に視線を送る。私もクラークのいつもと違う様子に戸惑ってしまった。
「お、お兄様・・・?」
(どうしたの急に?)
クラークは基本優しくて温和だ。『アリアナ』溺愛で暴走する事はたまにあるが、ここまで人に対して不快感を表す事は見た事が無い。しかもトラヴィスの前で、目上の人に対してだ。
「アリアナに魔力がほとんど無い事は、何度も検査を受けて確認済みです。これ以上見て頂く必要は無いと思います。・・・イーサンの時は、・・・もしかしたら、たまたま魔力の相性が良かったのかもしれませんし・・・。」
最後の方は口調が淀みつつも拒絶の態度を崩さない。
トラヴィスはそんなクラークを一瞥すると、ふっと口に笑みを浮かべた。でも笑っていない目に威圧感を感じる。
その様子に思わず背筋が伸びた。そしてこういう時、やっぱり彼はちゃんと皇太子なのだと感じてしまう。
(・・・持って生まれた品とか威厳ってやつかな。)
立ち振る舞いだけで場を制してしまう。
「ほう・・・、強力な闇の魔術師の魔力と相性が良かったと?。それはますます興味が沸くでは無いか。」
「戯れはやめて頂きたい。」
額に汗をかきながらも、不敬ともとれる一言を口にし、クラークは皇太子であるトラヴィスを睨みつけた。トラヴィスの顔からも笑みが消える。
(ちょ、ちょっとどうしちゃったのよ?。)
突然の二人の険悪な様子におろおろしてしまった。そもそも、どうしてクラークは急に機嫌が悪くなったのだろう?。そんなに魔力測定が気に入らないのだろうか?。
それに今の話とは全く関係無い事ではあるが、二人とも整った顔してるから、怒るとやたら迫力があるのだ。
(イ、イケメン同士の喧嘩ってこんなに怖いんだ・・・。)
ヘルダー伯爵も対応に困っているようだ。相変わらず細い目で、二人を交互に見ている。
緊迫した空気の中、最初に口を開いたのはトラヴィスだった。
「クラーク、何を慌てているのだ?。」
その言葉にクラークの肩が微かに動く。
「・・・慌ててなどおりません。」
「アリアナに『目』を使うのがそんなに嫌か?」
「・・・必要無いと思っただけです。」
クラークはトラヴィスの視線から目を逸らす様に俯いた。本当にどうしたっていうのよ!?。
今までの彼の様子から見て分かる事。
まず、クラークはヘルダー伯爵に私の魔力や『脈』とやらを調べられたくない。調べられたら困るのだ。
そこから考えるに、彼はもしかして私がイーサンの魔力の影響を受けなかった理由について知っている?。知った上で隠そうとしているのだ。
そしてさらに分かるのは、それは多分・・・私の為だって事。
(でも、こんなの逆に気になっちゃうじゃない!。)
私は覚悟を決めた。
「あ、あの、お兄様。私は伯爵に見て頂きたいです。」
「アリアナ!」
クラークが振り返って私の両肩を掴んだ。その手に力が籠っていて、余計に不安になってくる。だけど引くつもりはなかった。
「お兄様、このままでは殿下もヘルダー伯爵も・・・私だってスッキリしません。漠然とした懸念だけが残ってモヤモヤします。お兄様が私の事を心配して下さってるのは分かりますが、私はちゃんと知りたいです。知って納得したいです。」
クラークの瞳が揺れた。眉根を寄せて心配そうに私を見たが、溜息をついてトラヴィスとヘルダー伯爵に向き直った。
「・・・では、お二人にお約束して頂きたい。どういう結果が出ようと、ここだけの話にすると。決して研究などにアリアナを利用しないと。」
トラヴィスは片眉を上げつつも頷いて、ヘルダー伯爵にも視線を送った。
「良いだろう。もとから広言するつもりは無い。ヘルダー卿もすまないがそうして貰いたい。」
「わ、分かりました。」
伯爵は額の汗をハンカチで拭きながら、戸惑いつつも了承してくれた。
「クラークこれで良いか?。では伯爵、よろしく頼む。」
トラヴィスの言葉に、クラークは私の肩に片手を置いたまま横に移動する。
ヘルダー伯爵はゆっくりと頷いて、私の方に近づいてきた。そして細い目で私の目を見つめた。だけど、それほど顔を近づけるわけでは無く30㎝くらい離れている。
(トラヴィスに覗かれた時はすっごい近かったよね。頭を押さえられて痛かったっけ。)
対してヘルダー伯爵は静かに見つめるだけである。だけど、不思議と落ち着かない気分になってくる。
(なんだか、色々を見透かされてるというか、全身をスキャンされてる様な・・・。CTって受けた事無いけどこんな感じかなぁ?)
伯爵の瞳の色が、美しいアクアマリン色であった事に初めて気づいた。
2、3分たって、伯爵はほうっと息を吐いた。
「・・・驚きました。こんな事例は初めてです。」
何故かクラークが、私とヘルダー伯爵の間に割って入った。
「ヘルダー伯爵、アリアナを研究材料の様に使われるのは了承しかねます。」
珍しく怒気を含んだ口調だった。
「いえ、私はそんな・・・。」
ヘルダー伯爵は困惑した様子でトラヴィスの方に視線を送る。私もクラークのいつもと違う様子に戸惑ってしまった。
「お、お兄様・・・?」
(どうしたの急に?)
クラークは基本優しくて温和だ。『アリアナ』溺愛で暴走する事はたまにあるが、ここまで人に対して不快感を表す事は見た事が無い。しかもトラヴィスの前で、目上の人に対してだ。
「アリアナに魔力がほとんど無い事は、何度も検査を受けて確認済みです。これ以上見て頂く必要は無いと思います。・・・イーサンの時は、・・・もしかしたら、たまたま魔力の相性が良かったのかもしれませんし・・・。」
最後の方は口調が淀みつつも拒絶の態度を崩さない。
トラヴィスはそんなクラークを一瞥すると、ふっと口に笑みを浮かべた。でも笑っていない目に威圧感を感じる。
その様子に思わず背筋が伸びた。そしてこういう時、やっぱり彼はちゃんと皇太子なのだと感じてしまう。
(・・・持って生まれた品とか威厳ってやつかな。)
立ち振る舞いだけで場を制してしまう。
「ほう・・・、強力な闇の魔術師の魔力と相性が良かったと?。それはますます興味が沸くでは無いか。」
「戯れはやめて頂きたい。」
額に汗をかきながらも、不敬ともとれる一言を口にし、クラークは皇太子であるトラヴィスを睨みつけた。トラヴィスの顔からも笑みが消える。
(ちょ、ちょっとどうしちゃったのよ?。)
突然の二人の険悪な様子におろおろしてしまった。そもそも、どうしてクラークは急に機嫌が悪くなったのだろう?。そんなに魔力測定が気に入らないのだろうか?。
それに今の話とは全く関係無い事ではあるが、二人とも整った顔してるから、怒るとやたら迫力があるのだ。
(イ、イケメン同士の喧嘩ってこんなに怖いんだ・・・。)
ヘルダー伯爵も対応に困っているようだ。相変わらず細い目で、二人を交互に見ている。
緊迫した空気の中、最初に口を開いたのはトラヴィスだった。
「クラーク、何を慌てているのだ?。」
その言葉にクラークの肩が微かに動く。
「・・・慌ててなどおりません。」
「アリアナに『目』を使うのがそんなに嫌か?」
「・・・必要無いと思っただけです。」
クラークはトラヴィスの視線から目を逸らす様に俯いた。本当にどうしたっていうのよ!?。
今までの彼の様子から見て分かる事。
まず、クラークはヘルダー伯爵に私の魔力や『脈』とやらを調べられたくない。調べられたら困るのだ。
そこから考えるに、彼はもしかして私がイーサンの魔力の影響を受けなかった理由について知っている?。知った上で隠そうとしているのだ。
そしてさらに分かるのは、それは多分・・・私の為だって事。
(でも、こんなの逆に気になっちゃうじゃない!。)
私は覚悟を決めた。
「あ、あの、お兄様。私は伯爵に見て頂きたいです。」
「アリアナ!」
クラークが振り返って私の両肩を掴んだ。その手に力が籠っていて、余計に不安になってくる。だけど引くつもりはなかった。
「お兄様、このままでは殿下もヘルダー伯爵も・・・私だってスッキリしません。漠然とした懸念だけが残ってモヤモヤします。お兄様が私の事を心配して下さってるのは分かりますが、私はちゃんと知りたいです。知って納得したいです。」
クラークの瞳が揺れた。眉根を寄せて心配そうに私を見たが、溜息をついてトラヴィスとヘルダー伯爵に向き直った。
「・・・では、お二人にお約束して頂きたい。どういう結果が出ようと、ここだけの話にすると。決して研究などにアリアナを利用しないと。」
トラヴィスは片眉を上げつつも頷いて、ヘルダー伯爵にも視線を送った。
「良いだろう。もとから広言するつもりは無い。ヘルダー卿もすまないがそうして貰いたい。」
「わ、分かりました。」
伯爵は額の汗をハンカチで拭きながら、戸惑いつつも了承してくれた。
「クラークこれで良いか?。では伯爵、よろしく頼む。」
トラヴィスの言葉に、クラークは私の肩に片手を置いたまま横に移動する。
ヘルダー伯爵はゆっくりと頷いて、私の方に近づいてきた。そして細い目で私の目を見つめた。だけど、それほど顔を近づけるわけでは無く30㎝くらい離れている。
(トラヴィスに覗かれた時はすっごい近かったよね。頭を押さえられて痛かったっけ。)
対してヘルダー伯爵は静かに見つめるだけである。だけど、不思議と落ち着かない気分になってくる。
(なんだか、色々を見透かされてるというか、全身をスキャンされてる様な・・・。CTって受けた事無いけどこんな感じかなぁ?)
伯爵の瞳の色が、美しいアクアマリン色であった事に初めて気づいた。
2、3分たって、伯爵はほうっと息を吐いた。
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