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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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「チビは余計!。王女を殺したら隣国と戦争になるよ。そうなるとトラヴィス殿下も戦いに身を置かなきゃいけなくなる。もっと危険だよ?。」
イーサンと私は数秒、無言でにらみ合った。無表情に私を見つめるイーサンからの威圧感、殺気のような凄みを感じ背中がゾクリと震える。
(なるほど、魔力の圧は感じないけど、これは神経削られる。)
冷や汗が止まらず、正直逃げたい気分だったが、
「そ、それに・・・。」
喉が干上がったようにカラカラになっていたが、気力を振り絞る。
「ちょ、ちょっとでも良い事して、ら、来世の為に徳をつんだら?」
内心びびってるせいで、舌が回らない。くそっ!。
だけど、そう言った私にイーサンは驚いたように目を丸めた。
「・・・なんで。」
ぼそりと一言そう呟き、そして意外にも先に目を逸らした。
(おっと・・・)
ヤバい、身体がふらつく。それだけ彼の視線の威力が強かったと言う事か。
イーサンはそんな私をチラリと見ながらエメラインに近寄ると、彼女の頭に手を近づけた。
しばらくすると、直接触ってはいないのにエメラインが顔を歪め、苦痛から逃れる様に頭を振り始めた。
構わずイーサンが手をかざし続けると、彼女の額にかかった彼の手の影が、突然意思を持った生き物のように蠢き始めた。その異様さに私達は息を飲む。
そしてエメラインの額でのたうつ様に動く影は、突然鎌首をもたげたかの如く浮き上がり、イーサンの手に噛みつく様に飛び掛かった。
だが、イーサンはそれをいとも簡単にそのまま素手でつかみ取った。
「ふん・・・」
つまらなそうに彼はその手の中のモノを見る。まるで真っ黒い蛇のような小動物が、イーサンの手から逃れようと暴れている様に見えた。
(う、うえ~、気持ち悪っ)
なんでだろう?見ているだけで気分が悪くなってくる。醜悪で猥雑な何か。
「それは・・・?」
流石のトラヴィスも嫌悪の表情を隠せないようだ。
「悪意の塊だな。これがこの女に巣くってた魔術だ。」
イーサンはそう言うと、何の感情も見せずその黒いモノを握りつぶした。それは、イーサンの手の中で溶ける様に地面に滴り落ち、そしてそのまま何も無かったように消えていった。
「ま、魔術は消えたの?」
「ああ」
「そっか。助かった。ありがと。」
ホッとして息を吐きながらそう言った私に、イーサンは振り帰り、真正面から私を見た。
「『神様にでもなったつもりか』と、以前にも言われた事がある。」
「ん、そうなの?」
(だったらその時にちゃんと直しなよ、その性格。)
「そいつはこうも言った。『来世の為に善い行いを』と・・・。」
(おっ、やっぱり同じ事思う人がいたんだ。イーサンの性格は色々問題多しだからねぇ。)
納得して頷いている私にイーサンはスタスタと近づいてきて、
「生まれ変わったらか・・・。」
「ん?何?」
呟いた声は小さすぎて聞こえなかった。でもなんだか辛そうな声だったから、怪訝に思って彼を見上げた。そんな私を見下ろすイーサンの目が、泣き出しそうな程切なげで・・・。そんな彼を見たことが無かったから、私は少し油断してしまったのだ。
イーサンは突然、両手を広げてガバッと私に抱きついてきた。
「ぐえっ!」
「おいっ!」
「きさま、何をする!」
「イ、イーサン様?!」
言ったのは順に私、ディーン、クラーク、トラヴィスである。
だけど、私以外の3人とも身体が動かない様だ。イーサンが何かしたのか?!
「ちょ、ちょっと離してよ!。あんた、何してんの!」
暴れて離れようとする私をものともせず、いつものニヤニヤ笑いを浮かべると、
「いいか、アリアナ。今回の事は『貸し』だ。」
「げっ・・・、そんなのコレでチャラだよ!」
「あっはは・・・」
ひとしきり、普通の少年の顔で笑ってから、
「じゃあ、足りない分を貰う。」
そっと私の頭の後ろに手を添えると、私のおでこに口づけをしたのだ。
(う、うぎゃ~~~~~~~!!!)
たっぷり3秒。
トラヴィスの、魚の様にまん丸く見開いた目が怖かった。
「こ、このエロガキが~!」
腕を振り上げて殴ろうとすると、イーサンは素早く身を離し、私の拳は空しく空を泳ぐ。
「またな、アリアナ。せいぜい皇太子を守ってやるんだな。」
そう言いながら、口の端で笑い、あっという間に消えてしまった。
唖然とはこの事だ。
後に残されたのは、
焼け焦げて半壊したカフェ、
未だイーサンの魔力圧とやらで死屍累々と倒れてる者達、
ぐったりと白目をむいて失神しているエメライン、
魔力切れで起き上がれないクリフ(やたらと艶めかしい)、
何故か青い顔をして魂が抜けた様なディーンとクラーク、
笑みを浮かべているのに殺意の籠った眼差し向けるトラヴィス。
(あ~、いっそ気絶したい)
雲一つない真っ青な空に、からかう様に小鳥が飛び立っていった。
イーサンと私は数秒、無言でにらみ合った。無表情に私を見つめるイーサンからの威圧感、殺気のような凄みを感じ背中がゾクリと震える。
(なるほど、魔力の圧は感じないけど、これは神経削られる。)
冷や汗が止まらず、正直逃げたい気分だったが、
「そ、それに・・・。」
喉が干上がったようにカラカラになっていたが、気力を振り絞る。
「ちょ、ちょっとでも良い事して、ら、来世の為に徳をつんだら?」
内心びびってるせいで、舌が回らない。くそっ!。
だけど、そう言った私にイーサンは驚いたように目を丸めた。
「・・・なんで。」
ぼそりと一言そう呟き、そして意外にも先に目を逸らした。
(おっと・・・)
ヤバい、身体がふらつく。それだけ彼の視線の威力が強かったと言う事か。
イーサンはそんな私をチラリと見ながらエメラインに近寄ると、彼女の頭に手を近づけた。
しばらくすると、直接触ってはいないのにエメラインが顔を歪め、苦痛から逃れる様に頭を振り始めた。
構わずイーサンが手をかざし続けると、彼女の額にかかった彼の手の影が、突然意思を持った生き物のように蠢き始めた。その異様さに私達は息を飲む。
そしてエメラインの額でのたうつ様に動く影は、突然鎌首をもたげたかの如く浮き上がり、イーサンの手に噛みつく様に飛び掛かった。
だが、イーサンはそれをいとも簡単にそのまま素手でつかみ取った。
「ふん・・・」
つまらなそうに彼はその手の中のモノを見る。まるで真っ黒い蛇のような小動物が、イーサンの手から逃れようと暴れている様に見えた。
(う、うえ~、気持ち悪っ)
なんでだろう?見ているだけで気分が悪くなってくる。醜悪で猥雑な何か。
「それは・・・?」
流石のトラヴィスも嫌悪の表情を隠せないようだ。
「悪意の塊だな。これがこの女に巣くってた魔術だ。」
イーサンはそう言うと、何の感情も見せずその黒いモノを握りつぶした。それは、イーサンの手の中で溶ける様に地面に滴り落ち、そしてそのまま何も無かったように消えていった。
「ま、魔術は消えたの?」
「ああ」
「そっか。助かった。ありがと。」
ホッとして息を吐きながらそう言った私に、イーサンは振り帰り、真正面から私を見た。
「『神様にでもなったつもりか』と、以前にも言われた事がある。」
「ん、そうなの?」
(だったらその時にちゃんと直しなよ、その性格。)
「そいつはこうも言った。『来世の為に善い行いを』と・・・。」
(おっ、やっぱり同じ事思う人がいたんだ。イーサンの性格は色々問題多しだからねぇ。)
納得して頷いている私にイーサンはスタスタと近づいてきて、
「生まれ変わったらか・・・。」
「ん?何?」
呟いた声は小さすぎて聞こえなかった。でもなんだか辛そうな声だったから、怪訝に思って彼を見上げた。そんな私を見下ろすイーサンの目が、泣き出しそうな程切なげで・・・。そんな彼を見たことが無かったから、私は少し油断してしまったのだ。
イーサンは突然、両手を広げてガバッと私に抱きついてきた。
「ぐえっ!」
「おいっ!」
「きさま、何をする!」
「イ、イーサン様?!」
言ったのは順に私、ディーン、クラーク、トラヴィスである。
だけど、私以外の3人とも身体が動かない様だ。イーサンが何かしたのか?!
「ちょ、ちょっと離してよ!。あんた、何してんの!」
暴れて離れようとする私をものともせず、いつものニヤニヤ笑いを浮かべると、
「いいか、アリアナ。今回の事は『貸し』だ。」
「げっ・・・、そんなのコレでチャラだよ!」
「あっはは・・・」
ひとしきり、普通の少年の顔で笑ってから、
「じゃあ、足りない分を貰う。」
そっと私の頭の後ろに手を添えると、私のおでこに口づけをしたのだ。
(う、うぎゃ~~~~~~~!!!)
たっぷり3秒。
トラヴィスの、魚の様にまん丸く見開いた目が怖かった。
「こ、このエロガキが~!」
腕を振り上げて殴ろうとすると、イーサンは素早く身を離し、私の拳は空しく空を泳ぐ。
「またな、アリアナ。せいぜい皇太子を守ってやるんだな。」
そう言いながら、口の端で笑い、あっという間に消えてしまった。
唖然とはこの事だ。
後に残されたのは、
焼け焦げて半壊したカフェ、
未だイーサンの魔力圧とやらで死屍累々と倒れてる者達、
ぐったりと白目をむいて失神しているエメライン、
魔力切れで起き上がれないクリフ(やたらと艶めかしい)、
何故か青い顔をして魂が抜けた様なディーンとクラーク、
笑みを浮かべているのに殺意の籠った眼差し向けるトラヴィス。
(あ~、いっそ気絶したい)
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