モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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「ええっ?!」

全員驚いたように私を見る。だけど、プンスカ怒っているミリアには悪いが、本当にそう思うのだ。

「マーリンさんはディーン様と幼馴染らしいし、本当なら二人が婚約していてもおかしく無いのよ。二人がそうしたいなら、それで良いと・・・。」

そこまで言って思い出した。

(いや・・・駄目だった!。とりあえず、ディーンとの婚約は継続しておかなくちゃいけないんだった。くっそー!。色々身動き取れない上に面倒くさい!。トラヴィスの事が無ければ、ディーンとマーリンを祝福しながら綺麗に婚約解消出来るって言うのに・・・。)


私が途中で黙り込んだのをどう解釈したのか、レティが心配そうな顔で私の手を握る。

「アリアナ様。ディーン様が本当にお好きなのは、もちろん婚約者であるアリアナ様ですわ。マーリンが勝手にディーン様の優しさにつけ込んでるだけですからね。」

「えっ?あ、うん。・・・あ、ありがと。」

どう返したらいいか分からず、とりあえずお礼を言った。それにしても、皆すっかりマーリンの事を呼び捨てにしてる。今までのマーリンの態度に腹が立ってるのだろう。

すると、食事中はほとんど黙っていたパーシヴァルが、

「・・・レティシア嬢の言う通りだ。」

再び彼にしては棘のある口調でそう言った。

「ほんとに鬱陶しい女だよ。ディーンはアイツが独りぼっちなのに同情しているだけなのに。何かって言うと『何々した事を覚えてる?』だの、『一緒に何々したわよね。』だの・・・。昔の話を持ち出しては、ディーンの気を引くんだ。ディーンと幼馴染なのは、奴だけじゃ無いって言うのにさっ。僕だって、昔からディーンと一緒にいたんだ!。おまけにディーンにベタベタと触りやがって、まるで痴女だよ!」

パーシヴァルの剣幕に、皆は呆気に取られている。よっぽど腹に据えかねていたのだろう、いつもの外面の良さが完全に消えてしまっている。マーリンの呼び方なんて、女→アイツ→奴→、最後には痴女ときたもんだ。

「お、落ち着いてください!。パーシヴァル殿下。」

慌てて彼をなだめてみる。これ以上興奮すると、ディーンへのBLがバレてしまいそうだ。

「マーリンさんのディーン様への態度は、もしかしたらモーガン先生の精神魔術の影響かもしれませんよ。リリーの話ではマーリンさんはまだ、モーガン先生と接触があるみたいですから。」

例のモーガン先生主催の『淑女クラブ』もまだ続いている。密かに調査員が入っている筈だけど、なかなか尻尾がつかめない様だ。モーガン先生が闇の組織と繋がっているというイーサンからの情報も伝えてはいるが、その先の進展が分からない。モブ令嬢などには、詳しい情報は伝わってこないのだ。

(トラヴィスに聞いておけば良かった。)

でも、あの狸ねーさんが教えてくれるかどうかは分からないけど。

「リリーの聖魔術で精神魔術を浄化できるのですよね?。」

「今は、モーガン先生を警戒させない為に、まだ聖魔術の浄化は行ってないそうよ。まずは証拠を掴まないといけないらしいけど、ああ、もう!何をぐずぐずしているのかしら?。このままじゃ、精神魔術の被害者が増えるだけじゃないの。」

レティシアの問いに、ミリアが親指の爪を噛みながら答えた。

(エメライン王女のゴタゴタで、隣国とも対応しなくちゃいけないから、省庁もてんやわんやなんだろうなぁ。トラヴィスも忙しそうだったし。)

モーガン先生が闇の組織と繋がっていると分かった以上、調査は慎重に行わないといけない。きとんと黒幕までたどり着かないと、トカゲの尻尾切りで終わってしまう。
それに、精神魔術の調査は難しい。調査員自体も、相手より魔力が低かったら、精神魔術の被害に遭いかねないのだから。

「ねぇ、マーリンがまだ精神魔術にかけられてるとしたら、リリーとディーン様に危険は無いの?。」

ジョーの言葉にドキッとする。

(・・・あ、気付かなかった・・・。)

なまじゲームの中でのマーリンと二人の関係を知っていたもんだから、その発想が浮かばなかったのだ。

(確かにマーリンは、不自然な程リリーとディーン以外の人間と関わらない様にしている・・・。ディーンはともかく、リリーとは2年になってから出会った筈。いくら同じ聖女候補で、ゲームではリリーとは親友だったとはいえ、極端すぎない?。)

それにゲームのマーリンは、明るくて誰とでも分け隔てなく友達になれる子だった。
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