モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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「いーい!?。ディーンとクリフはあんたにぞっこん。それに、あろう事かイーサン様まであんたを気に入ってるのよ!?。」

トラヴィスは悔しそうな顔で右手を握った。その拳がぷるぷると震えている。

(ちょっと!。どうしてそこで、王太子が悔しがるの!?。それに、そんな馬鹿なことあるわけないでしょうが!)

私は慌てて反論する。

「いえいえ、ディーンとクリフは友達ですし、・・・ディーンにはマーリンが・・・、それにイーサンなんて、単に私に嫌がらせしてるだけですよ!。いっつも、私の気に障る事ばっか言って・・・。」

「だまらっしゃい!。」

厳しい声でビシッと言われて、私は思わず背筋を伸ばした。トラヴィスは眉間を親指と人差し指で挟んで、首を振り、

「鈍いのもここまで来ると、さすがに病的よ。ディーン達が気の毒になってくるわ・・・。良く聞きなさい。ゲームでは、イーサン様のルートに入った場合、イーサン様は、ヒロイン以外の人の前にはめったに表れないわ。なのに、あんたの前には2回も、向こうから会いに来てるのよ!。完全にあんたはルートに入ってるのよ!。それに、クリフだって嫌がってた生徒会に入ったのは、何のためだと思ってんの?。あんたが私の秘書になったからでしょ?。一番可哀そうなのはディーンよ!。いい加減、ディーンに他の女を当てがおうとするのはやめなさい。」

「いや、別に当てがおうと思ったわけじゃ・・・。だって、ヒロインと結ばれない場合は、いつもマーリンと恋人になってたじゃないですか・・・。」

「この世界では、今でもあんたの婚約者よ。ゲームでは婚約破棄していたけど、ここでは違うの!。多分、ディーンは自分からは婚約破棄を言い出さないでしょうね。」

「えっ!。じゃあ、やっぱり私から、そろそろ言った方が良いですかね?。ロリコン避けに使うのも申し訳なくて。ディーンの青春を奪ってるんじゃないかと・・・。」

トラヴィスは今度は頭を抱えて、うずくまった。

「・・・いい加減、こっちが病気になりそうだわ。」

そして突然、ガバッと立ち上がると、私に向かってずんずん歩いてきた。

(いやいや、ちょっと何?。)

つられて私は、後ずさったが、気が付いたら壁際に追いつめられていた。

「な、何ですか!?殿下!。」

バンッ!

壁が音を立てるくらいの勢いで、トラヴィスは私の顔の横に手を付いた。そして、すくんだ私を上から真っすぐ見下ろした。

(こ、これは!。絵に描いたような壁ドン。)

見上げたトラヴィスの顔に、黄金の髪が揺れ、トパーズ色の瞳に射すくめられる・・・、

「『カッコいい~!』とか思ってんじゃ無いでしょうね?。」

ギクッ!

(し、思考を、読まれてる!?。)

「あんたの考えそうなことくらい、お見通しよ。そのくせ、恋愛感情には全く発展しないって、どういう精神構造してんのよ?。」

半目で睨まれて、視線を逸らす。

「べ、別に『カッコいい』と思う度に、恋愛感情を抱いてたら、キリが無いと思いますけど?。」

「うるさい!。いい加減にしなさい、この恋愛音痴の激ニブ女!。・・・言っておくが、ディーンと婚約解消なんて、考えない方が良い。」

(えっ?)

酷い言われようだが、後半は王太子の口調で言われ、反論を飲み込んだ。

「・・・どういう事でしょう?。で、殿下には関係ない事では?。」

トラヴィスは私を見下ろしたまま、薄く笑った。

「大いにある。今回の事件で、私はエメラインとの婚約を解消する事となった。だから、また新たに伴侶を見つけなくてはいけない。家柄、私の後ろ盾となりうる権力、そして皇帝妃の資質の三拍子揃った令嬢をだ。一番、可能性があるのは誰だ?。」

私の頭の横に肘をついて、耳元でささやくように言われ、さーっと血の気が引いた。

「そ、揃ってるのは、家柄と権力の二つだけです・・・。」

「私は、君には資質も備わっていると思っている。容姿は申し分ない。頭も良い。それに、君の前なら、私は取り繕わずに素のままの自分で居られる。こんな好条件の令嬢は他に居ないと思わないか?。」
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