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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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他の皆も、笑みを浮かべて、頷いている。
「ありがとう。ジョー、リリー・・・みんなも。」
クラークが笑いながら、少し引き寄せる様に。私の肩を抱いた。
こんなにも、みんなに大事にして貰って、私は幸せだ。
(でも、良いのだろうか。皆の優しさに甘えてしまって・・・。)
この世界がゲーム通りに進んでいないのは、私のせいかもしれないのに。私が悪役をしていないせいで、モブの筈のアリアナが、大きくストーリーに関わってきている気がする。
胸の奥で不安が、じくじくと澱のように残っていて、気持ちがすっきりしなかった。
そして、次の日。私の気分は、さらに追いつめられてしまう事となる。というか、自分をどう扱えばよいのは、分からなくなってしまったのだ。
それは、薬草学の授業中の時だった。
「アリアナさん、急な用があるので、少し来て頂けますか?。」
「は、はい。」
エライシャ先生に呼び出され、私は教室から廊下に出た。
「先生、急な用とはなんでしょう?。」
エライシャ先生は声をひそめながら、「付いて来なさい」とだけ言った。
そして、着いたのは生徒会室。エライシャ先生は扉の前で、私の方を向くと、
「トラヴィス殿下が、火急の用との事です。授業中ですので、私は反対したのですが・・・。アリアナさんと、今すぐ話さなくてはいけない、大事な事があるそうです。」
と真剣な口調でそう言った。エライシャ先生も、今の皇国がどういう状態であるか、分かっているのだ。
「分かりました。」
(やっぱり、エメラインや隣国との事を、トラヴィスも心配しているんだ。)
なんとしても、戦争だけは防がなくちゃ。
私はエライシャ先生に、連れて来て貰ったお礼を言って、生徒会室に入る。そして、トラヴィスの執務室のドアをノックした。
「失礼します。」
ドアを開けると、トラヴィスは机の椅子に座って、厳しい顔で、腕を組んで、何も置いていない机を、ただ睨んでいた。
「トラヴィス殿下。急用との事で参りました。」
私は殿下の机から、少し離れた場所で立ったままそう聞いた。
トラヴィスの顔からは、いつもの私をからかうような表情は見られない。そりゃそうだろう。皇国の未来に関わる問題なのだから。
(トラヴィスねーさんの、こんな真剣な顔、初めて見た。)
私も、つられるように背筋を伸ばした。
トラヴィスはなかなか口を開かない。目線を落としたまま、心なしか小刻みに震えている。もしかして、私に対して怒っているのだろうか?。
(エメラインとこじれるきっかけを作っちゃったしなぁ。でも、トラヴィスが私にあそこまで構わなければ、彼女はあんな過激な事、しなかったと思うんだけど・・・。)
でも、私が原因である事は間違いない。ここはまず、潔くしっかりと謝ろう。
「あの、トラヴィス殿下。この度のエメライン王女との騒動の件、申し訳ございませんでした。私が不注意だったせいで、ここまで大事になってしまって・・・。」
そこまで言った途中で、トラヴィスが俯いたまま、急に口を開いた。
「・・・どうしてよ・・・。」
「えっ?。」
「どうして、イーサン様は、あんたの所にばかり、現れるわけ!?。ズルい!。」
「は・・・、はぁ!?」
トラヴィスは目をうるうるさせながら、顔を上げた。
「クラークから、聞いたわよ!。イーサン様が、夜中にあんたの寝室に来たって!。よりによって、『夜中』に。でもって『寝室』に!?。・・・な、な、なんて、羨ましいのよ!。私なんて、転生してから一回も会って無いと言うのにぃ!。」
私は自分の中で、何かがバキッと音を立てて壊れた気がした。
(駄目だ・・・、今口を開いたら、とんでもない事を言いそうだ。)
「あんたってさ、恋愛なんて、まーったく興味無いって素振りでさ。そのくせ、良い男ばっか、周りにはべらせちゃってさ。その上イーサン様までなんて、流石にズルいわよ!。私にも分けてよ!。」
「あほうですか!?。貴方は!。いい加減にしちゃってください!。」
ああ、もう!。王太子に向かって、不敬な言葉を使ってしまった。ちくしょう!。でも、もう、かまうもんか!。
「男をはべらせてるって何ですか!?。全く意味がわかりません!。それに、イーサンに会いたくて会ったた訳じゃ無いですよ!。というか、私はあんな奴、ぜんっぜん、会いたくないんです、まったくもう!。皇国が隣国と戦争になるかもしれないって時に、いったい何を言ってるんですか、あんたは!。今問題にすべきは、そんな事じゃ無いでしょ!?。頭、大丈夫ですか!?。脳みそ生きてます!?。」
「生きてるに決まってるでしょ!。失礼な。あんたみたいに『推し』の尊さが分からない人に、言われたくないわよ!。」
「だから、そのトラヴィス王太子の姿と顔で、『推し」とか言うのは、勘弁してください!。」
緊張していた分、ドッと疲れが押し寄せてきた。
「ありがとう。ジョー、リリー・・・みんなも。」
クラークが笑いながら、少し引き寄せる様に。私の肩を抱いた。
こんなにも、みんなに大事にして貰って、私は幸せだ。
(でも、良いのだろうか。皆の優しさに甘えてしまって・・・。)
この世界がゲーム通りに進んでいないのは、私のせいかもしれないのに。私が悪役をしていないせいで、モブの筈のアリアナが、大きくストーリーに関わってきている気がする。
胸の奥で不安が、じくじくと澱のように残っていて、気持ちがすっきりしなかった。
そして、次の日。私の気分は、さらに追いつめられてしまう事となる。というか、自分をどう扱えばよいのは、分からなくなってしまったのだ。
それは、薬草学の授業中の時だった。
「アリアナさん、急な用があるので、少し来て頂けますか?。」
「は、はい。」
エライシャ先生に呼び出され、私は教室から廊下に出た。
「先生、急な用とはなんでしょう?。」
エライシャ先生は声をひそめながら、「付いて来なさい」とだけ言った。
そして、着いたのは生徒会室。エライシャ先生は扉の前で、私の方を向くと、
「トラヴィス殿下が、火急の用との事です。授業中ですので、私は反対したのですが・・・。アリアナさんと、今すぐ話さなくてはいけない、大事な事があるそうです。」
と真剣な口調でそう言った。エライシャ先生も、今の皇国がどういう状態であるか、分かっているのだ。
「分かりました。」
(やっぱり、エメラインや隣国との事を、トラヴィスも心配しているんだ。)
なんとしても、戦争だけは防がなくちゃ。
私はエライシャ先生に、連れて来て貰ったお礼を言って、生徒会室に入る。そして、トラヴィスの執務室のドアをノックした。
「失礼します。」
ドアを開けると、トラヴィスは机の椅子に座って、厳しい顔で、腕を組んで、何も置いていない机を、ただ睨んでいた。
「トラヴィス殿下。急用との事で参りました。」
私は殿下の机から、少し離れた場所で立ったままそう聞いた。
トラヴィスの顔からは、いつもの私をからかうような表情は見られない。そりゃそうだろう。皇国の未来に関わる問題なのだから。
(トラヴィスねーさんの、こんな真剣な顔、初めて見た。)
私も、つられるように背筋を伸ばした。
トラヴィスはなかなか口を開かない。目線を落としたまま、心なしか小刻みに震えている。もしかして、私に対して怒っているのだろうか?。
(エメラインとこじれるきっかけを作っちゃったしなぁ。でも、トラヴィスが私にあそこまで構わなければ、彼女はあんな過激な事、しなかったと思うんだけど・・・。)
でも、私が原因である事は間違いない。ここはまず、潔くしっかりと謝ろう。
「あの、トラヴィス殿下。この度のエメライン王女との騒動の件、申し訳ございませんでした。私が不注意だったせいで、ここまで大事になってしまって・・・。」
そこまで言った途中で、トラヴィスが俯いたまま、急に口を開いた。
「・・・どうしてよ・・・。」
「えっ?。」
「どうして、イーサン様は、あんたの所にばかり、現れるわけ!?。ズルい!。」
「は・・・、はぁ!?」
トラヴィスは目をうるうるさせながら、顔を上げた。
「クラークから、聞いたわよ!。イーサン様が、夜中にあんたの寝室に来たって!。よりによって、『夜中』に。でもって『寝室』に!?。・・・な、な、なんて、羨ましいのよ!。私なんて、転生してから一回も会って無いと言うのにぃ!。」
私は自分の中で、何かがバキッと音を立てて壊れた気がした。
(駄目だ・・・、今口を開いたら、とんでもない事を言いそうだ。)
「あんたってさ、恋愛なんて、まーったく興味無いって素振りでさ。そのくせ、良い男ばっか、周りにはべらせちゃってさ。その上イーサン様までなんて、流石にズルいわよ!。私にも分けてよ!。」
「あほうですか!?。貴方は!。いい加減にしちゃってください!。」
ああ、もう!。王太子に向かって、不敬な言葉を使ってしまった。ちくしょう!。でも、もう、かまうもんか!。
「男をはべらせてるって何ですか!?。全く意味がわかりません!。それに、イーサンに会いたくて会ったた訳じゃ無いですよ!。というか、私はあんな奴、ぜんっぜん、会いたくないんです、まったくもう!。皇国が隣国と戦争になるかもしれないって時に、いったい何を言ってるんですか、あんたは!。今問題にすべきは、そんな事じゃ無いでしょ!?。頭、大丈夫ですか!?。脳みそ生きてます!?。」
「生きてるに決まってるでしょ!。失礼な。あんたみたいに『推し』の尊さが分からない人に、言われたくないわよ!。」
「だから、そのトラヴィス王太子の姿と顔で、『推し」とか言うのは、勘弁してください!。」
緊張していた分、ドッと疲れが押し寄せてきた。
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