モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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(早くトラヴィスと話さないと。)

トラヴィスは私よりも、ゲームの内容を知っている。だからきっと、戦争を回避するルートにも詳しい筈だ。

(私がゲームでトラヴィスルートに進むと、毎回戦争になってたんだよなぁ・・・。でも、所詮ゲームだから、それほど気にしてなかった。もっと、ちゃんとやっておけば戦争を防ぐ選択肢があったかもしれないのに・・・。)

今になって、それが悔やまれる。あの時やった内容では確か、トラヴィスが戦争に行って、戻ってきたり、戻ってこなかったり・・・。

(いや、駄目じゃん!。戻ってこないのは!)

それに、ヒロインが戦争に行くパターンもあったぞ!。リリーがそんな目に遭うなんて・・・、

(そんなのもっと駄目だ!。耐えられない!。)

よく考えれば、二人だけじゃないぞ。クラークや・・・、もしかしたらディーンやクリフだって、戦争に行く事になるかも・・・?。


「ア、アリアナ様!。大丈夫ですか?」


「えっ?」

リリーの声に、ふと気が付くと、皆が私に注目していて、クリフはお腹を抱えて悶絶していた。

兄に聞くと、どうやら私は頭を抱えて、一人で百面相していたらしい。

(うわぁ・・・。)

顔面が赤くなり、耳まで熱くなってくる。

「す、すみません。色々、先走った事を考えてました・・・。」

兄はぽんぽんと私の頭を優しく叩くと、

「アリアナは事件の当事者だったし、トラヴィス殿下とも秘書になってからは、親しくさせて貰う様になったからね。余計に色々心配してしまうのは仕方無いよ。」

クラークは、本当に良い兄だ。彼の言葉にほっこりし、少し肩の力が抜けた気がする。

しかし、ミリアは真剣な顔を兄に向けて、

「だけど、クラーク様。これからアリアナ様の身辺には、さらに気を配った方が良いかもしれません。本当に、トラヴィス殿下とのエメライン王女の婚約破棄が現実となった場合、王女が逆恨みして、アリアナ様に危害を加えるかもしれません。」

(げっ)

それは、ありうる。

私も含めて、皆にも緊張が走った。

「今まで以上に、アリアナを一人にしないようにしよう。実技の授業中の・・・アリアナの授業が無くなったのなら、それも可能じゃないかな?。」

ディーンは、『魔力ゼロクラス』と言うのは、気を使ってやめてくれたようだ。

「でも、その間、アリアナ様はどうすれば良いのですか?。」

ミリアが聞くと、クラークが、

「アリアナは、実技の授業の見学をする事になった。多分、僕やディーン達の居るクラスになると思う。」

なるほど。実技の授業は縦割りで、上級生も一緒だ。クラークやディーンの居る魔力の強いクラスなら、クリフもリリーもミリアも、ついでにトラヴィスやパーシヴァルも居る。安心と言えばこれ以上安心な場所はない。魔力ゼロの私が、そこに居るのは、かなり肩身が狭いけれど、ハイレベルの魔術を見るのも、面白いかもしれない。

「授業の移動も、ディーン達と一緒にする様に。皆、アリアナが世話になるが、よろしく頼む。」

クラークがそう言って、頭を下げた。私も急いで一緒に頭を下げる。私が弱いせいで、みんなには、気を使わせてしまって申し訳ない。

「やめてよ、二人とも。そんな、かしこまらなくても、私達は好きでやってんだから。」

ジョーが、からから笑いながらそう言った。

「そうですよ。私達だって、アリアナ様には、いつもお世話になっているんですから。それに、アリアナ様は少しも悪く無いじゃないですか。」

リリーは椅子から立ち上がり、私のそばに来て、机の上の私の右手をそっと両手で包んだ。
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