モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

文字の大きさ
上 下
136 / 284
第6章 悪役令嬢は利用されたくない

13

しおりを挟む
私の言葉が終わる前に、イーサンの姿は消えていた。彼が座っていた所のベッドのへこみだけを残して。

私は床に座り込んで、がっくりと両手を付いた。

(疲れた・・・。)

そう言えば、私は病み上がりだった。それなのに、あのイーサンの馬鹿のせいで、余計に体力を消耗してしまった。

ベッドに戻ろうかと思ったが、イーサンが座ってた所に寝るのは、なんとも嫌な気分がした。私は溜息をついて、寝室のソファに横になった。

(ステラ達が起きたら、シーツを変えて貰おう。)

さっきは目が冴えていたけど、何度も怒ったその反動か、私は直ぐに眠ってしまった。




そしてその数日後、事態が色々と急展開している事を、私は知る事となった。

まず、実技の授業の間の、魔力ゼロクラスが無くなった。

もちろん、私がエメラインの策略で、廃寮に閉じ込められた事が、原因である。私が思っていたよりも、学園側はあの一件を重く見たようだ。そして、エメラインとその取り巻き達は、しっかりその処罰を受ける事となったのだ。

最初、エメライン達は、私を無理やり閉じ込めた事を、否定したらしい。そして、いけしゃあしゃあと、私が嘘を言っているのだ言ったそうだ。全く、とんでも無い奴らだと思う。多分、エメラインの魔術で姿を隠していたから、誰にも見られていないと思い、証拠が無いと思ったのだろう。

ところが、私を助けに来たのが、トラヴィスだったと言うのが、彼女達の誤算だった。トラヴィスは、私が閉じ込められていた部屋にかけられていたシールドが、間違いなくエメラインの魔術だったと証言したのだ。

兄から報告を受けた私の父・・・コールリッジ公爵は猛抗議をした。溺愛する娘が、あわや廃寮で骨になるかもしれなかったのだ。当然の事だろう。

結果、エメラインの取り巻き達は全員、無期限の停学処分を受ける事となった。

問題なのはエメラインである。この国の王太子の婚約者であり、隣国の王女である彼女の扱いは難しい。だから、今までどれほど横暴な振る舞いをしていたとしても、周囲は片目を閉じた状態で、見て見ぬ振りをしてきたのだ。

だが、今回の事は犯罪に近い。しかも、被害者は皇国一の公爵家の娘とあっては、いよいよ放っておく事は出来なくなったのだ。


「皇国は隣国セルナクに経緯を説明したうえで、抗議を行う事にしたそうだ。もしかしたら、トラヴィス殿下との婚約は破棄されるかもしれない。」

生徒会室に入ってきた兄が、開口一番そう言った。作業室に居た私達は、流石に『婚約破棄』と言うパワーワードには驚かされ、最初は言葉が出なかった。ちなみにトラヴィスは今は居ない。城に戻っているのだ。


「・・・アリアナ様にした事を考えると、当然の様な気がしますが、あのエメライン王女の性格を考えると、ちょっと心配ですわ。」

ミリアが思案気に、腕を組んだ。

「確かに・・・。私達はしばらくエメライン様のお世話係をしていましたから、あの方の事を知ってるのですわ。政略結婚の為の婚約とは言え、トラヴィス殿下は素晴らしい方でしょ?。エメライン様は殿下にかなり執着していましたわ。それに・・・、凄くプライドの高い方ですから、婚約破棄なんて事になったら、きっと怒り狂いますわ。」

レティシアが自分を抱く様に、両腕を抱えて震えた。

「それに、国同士の仲は確実に悪化するわね。今回、こちらに瑕疵は無いけど、エメライン様が隣国に戻ったら、どうなることやら。でも、よく考えたら、あの方が将来この国の皇妃にならなくて済んで、良かったんじゃない?。皇国を無茶苦茶にされたかもしれないわよ?。」

ジョーは、やっぱりポジティブだった。

だけど私は、自分が関わった事件が、皇国まで巻き込む様になった事に、背筋が冷えた。なぜなら、トラヴィスとエメラインの婚約破棄は、ゲーム上では、展開次第で、隣国との戦争と言うストーリーにも繋がっていたのだ。

(嘘・・・。待ってよ!。私のせいで、そんな事になったら・・・。)

ゲームで廃寮に閉じ込められたのはリリーだ。彼女は平民だったから、私の父の様に抗議するものは居なかった。しかも、彼女は自力で脱出したから、そんなに大事にはならなかったのだ。

それに、トラヴィス、エメラインの婚約破棄は、ゲームではもっと終盤だった筈。エメラインがリリーに聖女の座を奪われてからだったのに・・・。

(話の大筋が、変わってきている・・・。私が、ゲームの通りに動いて無いから?。)

アリアナは2部には関係ない筈なのに・・・。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

処理中です...