モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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言い淀んでいる私に、トラヴィスは、何かピンときたようで、「ああっ!」というと、

「やっぱり、気づいた!?。どう?。良いでしょう、今のパーシヴァル!。私好みの可愛い弟になってくれたわ!。」

と、目をキラキラさせた。

(はい!?)

ど、どういうこと?。・・・もしかして・・・。

「で、殿下!。殿下の仕業ですか!?。今のパーシヴァルって!。」

「あら、もちろんじゃない。だって、ゲームのままだと、パーシヴァルって、出来過ぎの兄に対するコンプレックスで、歪んじゃうじゃない?。可哀そうでしょ?。」

「そ、そうですけど・・・。」

「それに、私だって、折角可愛い弟が出来たのよ?。嫌われたら勿体ないじゃない。だから子供の頃から、とことん可愛がって、可愛がって、可愛がってやったわよ!。おかげで、兄好きの理想の弟になったわ。」

トラヴィスは自慢げに胸を張った。

(な・・・なるほど。だから、ゲームと全然違うパーシヴァルになったのか。軟派なチャラ男じゃ無くて、話術の上手な人好きのする男の子。確かに、本人にとっても良かったのかもしれない。・・・でも、だとしたら・・・ディーンの件はいったい・・・。)

トラヴィスに聞く訳にもいかず、もやもやしている私に、彼はさらに続けた。

「とっても楽しかったわよぉ。将来イケメンになるって分かってる男の子を、自分の思いのままに育てるのって。前世の時から一度やってみたかったのよ・・・。」

ぐふふと涎を垂らさんばかりに、ほくそ笑むトラヴィスに、心底引いてしまう。

(う、うわぁ・・・。育てるって何?。この世界じゃ、年齢だって2歳差でしょ?。何をやったんだ、この人・・・。)

まぁ、さっき言ってたように、充分に可愛がってやったんだろう。パーシヴァルが、皇太子の兄に劣等感を抱かない様に、常にケアしてあげたのかもしれない。だから、パーシヴァルは真っすぐ育った。だとしたら、彼にとっても良かったのかもしれない。

(恋愛相手以外はね・・・。)

私は溜息をついた。

(やっぱり、例え相手がトラヴィスだとしても、パーシヴァルの好きな人を言う訳にはいかないな。)

パーシヴァルだって、敬愛するお兄さんに、知られたくないだろう。

だが、そう思った私に、トラヴィスは超ド級の爆弾を落としてくれた。


「しかも、生でBLの世界まで見せてくれるなんて、本当に兄思いの弟だわぁ。」


(な・ん・で・す・と!?)


私は机を両手で叩きながら、立ち上がった。

「・・・殿下・・・、今、何と言いました・・・?」

「ちょっと!。急にどうしたのよ!?。びっくりするじゃない。」

「そうじゃなくて、生のBLって・・・」

トラヴィスはあっけらかんとした顔で、

「あら、あんた知らなかったの?。パーシヴァルったら、ディーンの事が好きなのよ。」

サラッと言いやがった、この人!。

私の頭の中で、何かがピシッと音を立てるのが聞こえた。

「・・・もしかして・・・、それって殿下の影響ですか・・・?。」

「えー!?、まさか!。私だって流石にそこまでコントロール出来ないわよぉ。多分・・・。」

「多分!?。絶対、なんかやりましたよね!?。」

「だってぇ、前世で結構、好きだったんだもん。ちょっとだけ、そうなってくれないかなぁ・・・なんて、思って。」

「思って、何したんですか!?。」

「やぁねぇ!。別に私が何かしたわけじゃないわよ!?。そういうのに抵抗無いように、小さい頃から話をしたっていうか、そう言う人達を実際見させて、慣れさせたって言うか・・・。」

えへっと言う風に舌を出して片目をつぶる彼に、私は絶句した。そして、

「な、な、何してくれちゃってんですか!?。一応、ディーンはアリアナの婚約者ですよ!。」

私はもう一度、机を叩いた。近くに居たら、トラヴィスの胸ぐらを掴んでいたかもしれない。

「それに、ディーンにはそんな気無いんですよ。あれじゃ、パーシヴァルが可哀そうです・・・。」

私は前に、パーシヴァルと話した時の事を思い出していた。

(あの時のパーシヴァルの声は、本当に辛そうだった・・・。パーシヴァルは、本当ならリリーとだって、恋ができる人なのに・・・。)

前世腐ってた兄のせいで、恋愛傾向が歪められたとしたら、酷過ぎる。

私が本気で怒ってる事を察したのか、トラヴィスはちょっと気まずそうにしている。

「・・・そんな、怒んないでよ。相手がディーンっていうのは、私だって誤算だったのよ?。まぁ、美形同士だから、美味しいなとは思ったけど・・・。」

両手の人差し指をつつき合いながら、上目遣いで見られて、私は力が抜けた。

「ディーンはパーシヴァルの親友ですよ?。しかも、顔良し、性格良しじゃ、惹かれる可能性大じゃないですか・・・。」

そうは言ったものの、なかなか人を想う様にコントロールするのは難しい。トラヴィスはよっぽど、人を操るのに長けてるのかな、とも思った。

珍しく俯いて黙ってしまった彼を見て、私は何度目かの溜息をついた。

「やっちゃったもんは、仕方ないです。その代わり、パーシヴァルの事はしっかりフォローしてあげてくださいね。」

「もちろんよ!。大事な弟だもん。」

良い兄なんだか、トンデモナイ兄なんだか・・・。
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